イラスト入り
suiyoubi ha midara
秀香穂里先生の電子限定版短編です。
仕事でアイデアを後輩に盗まれたリーマンが、バーのマスターに慰められてそのまま…
…という設定。
しかし、そのマスター・一式は初めは優しくあやしてくれるのですが、だんだん際どく性的な戯れになってきて、普通のリーマン・三嶋はもはや蛇に睨まれたカエル、罠にかかった仔ウサギ…
初めて乳首をいじられて、戸惑いながらも忘れられず、一式の指定する水曜日、引き寄せられるように逢いに行ってしまう。
どうにも抗うことのできない一式への感情と、与えられる初めての強すぎる快感…!
そして一式の隠された苦悩と、歪んだ愛情の表現、そして執着心。
それらがエロの匠・秀香穂里先生によって危うい2人の関係性として描かれます。
大きな枠としては、心に傷を持つS属性の男性にノンケが調教されていく話、として読めると思います。
終盤、三嶋の名誉は回復し、寂しい心を持つ一式に告白して一式を愛で包みます。
しかしそこはS(?)の一式。三嶋の全てを支配するように熱く淫らに抱くのでした…
さすがのエロの匠・秀先生。終盤はこれでもか!という感じです。
私が電子での小説に慣れてないからなんですが、本作は約80ページほどなのですがすごく長く感じました。紙なら300ページくらい普通なのにね。
個人的見解ですが『ノンケの男性がいきなり男性と性的な関係を持つ』というのは、やはり無理があると思うのです。でも、BLにはよくあるシチュエーションな訳で。
だから『何でそうなった?』についてリアルに描いていただかないとその後のお話が響かない場合もあるのですが、今作はその辺が「上手いなー」と思いましたよ。秀さん、手練れですねぇ。
広告会社に勤める三嶋巧は初めて入った品の良いバーで酔い潰れていました。自分がリーダーとなって取り組むはずだった大手保険会社の広告の企画案を信頼していた後輩に盗まれ、彼の仕事にされてしまったのです。地味だけれど頑張っていると評価され上司から指名された仕事でした。失意のどん底にいた三嶋はそのバーで客に絡んだ後、化粧室に閉じこもります。心配した店のマスター、一式誠司に優しい声をかけられ、三嶋はその優しさに、自分の身に起きたことを話し始めたのですが堪えきれず泣いてしまいます。そんな三嶋を一式は抱き留めてくれ、思う存分泣かせてくれます。そして「気分転換に気持ちいいことを」と。気がつくと一式の手によって淫らな愛撫を受け、感じてしまっていました。達する前に愛撫の手を止めた一式は「今日のことが気に入ったら、来週の水曜日に一緒に泳ぎに行きましょう」と会員制スイミングクラブの住所と電話番号を書いた店の名刺を三嶋に差し出すのですが……
三嶋のどん底ぶりが徹底しているものだから「あー、これ、あるかも」と思わせるんですよ。
最初の愛撫に入る前までの、一式の包容力もそう。
ただ、一式は優しいだけの男じゃないんですね。
この『包容力がある素敵な年上の男性』から『エロい大人』に切り替わる部分も、とってもすんなり読めちゃうの!これはなかなかスゴイですよ。
こんな風だから、起きたことに大変戸惑っていた三嶋も次の水曜日に『炎に引き寄せられる虫のように』スイミングクラブにのこのこ行ってしまう訳で。
一式がやっていることを見ると「結構ヤバイ奴だ」と思うのですが、彼に愛されているうちに、ゆっくりではありますが、変わっていく三嶋くんは可愛らしかったです。
『執着攻め』がお好きな方は、ツボにはまるかもしれません。
でも、なんと言っても読みどころは「この説得力」だと思います。