イラスト入り
sono bikyaku ga itoshisugiru
『小説b-Boy 2012年9月号』掲載作品。挿絵あります。
フェティシズムのお話って、背徳的な香りがするものも多いのですが、このお話は明るいコメディ。短くてライトなお話なので、気軽に楽しめました。
子ども向け学習教材を中心とした会社に勤めて2年目の秀人は『幼児向け友達ロボット』の製作プロジェクトに参加をしてもらう為、人工知能の研究をしている神野を尋ねます。人嫌いで、プロジェクトに全く興味を示さない神野を説得しようと必死の秀人に対して神野が放った一言は「脚を見せろ」。『人類の進化は二足歩行から始まった』ことに執着する神野は、研究室に無数の脚型を置いている脚フェチでした。陸上で鍛えた秀人の脚は神野の理想のカタチをしていたのです。1回10分を1日3回、好きな時に脚を触らせればプロジェクトに加わるという神野の要求に、秀人はやむなく応じることにします。しかし、神野はプロジェクトを進める気配を全く見せず、秀人の脚に執着する以外は人工知能と会話ばかりしています。聞けば子どもの頃から誰かと遊んだことがなく、子どもの友達とはどういうものか解らない模様。秀人は1週間ほど神野と一緒に、自分の実家の幼稚園の見学を行うことにしました(神野を説得する為にズボンを脱いで脚を触らせるという交換条件付きでしたが)。初めはただ、遠巻きに子どもたちを見ているだけだった神野ですが、秀人の脚がらみで子どもたちと喧嘩をしたことをきっかけにうち解け始めます。そして何故秀人がこのプロジェクトに力を注いでいるか聞いて来ました。脚以外に始めて興味を示されて感動する秀人でしたが、それ以降、神野に触られると単なるくすぐったさ以外を感じる様になって……
テンポ良くポンポンお話が進むので、大層楽しく読めました。
でも、楽しいだけのお話ではなくて、秀人が『幼児向け友達ロボット』を作りたいと思う理由も、神野が人工知能の研究を始めた動機も、ちょっと悲しくて、でも「子どもの頃の彼らが活きていく為に必要なものだったんだろうな」と感じることなんです。
これがね、いいエピソードだと思うんですよ。ただ、あまりにテンポが良すぎて、本来ならもっとジーンとしても良い場面なのに、ちょっと空気が軽くなってしまった様な気がしました。それがすごくもったいなかったです。
最後にちょっとエロについて書かせてください。
……笑ったよ。
まず、大変人の神野ですから、33歳でも始めてな訳です。
でも、研究者ですから……まずそこで笑った。
あとね、やっぱ脚フェチですから。
「あー、初めてでそれを要求する!?」というプレイを、いたいけな秀人くんにお願いしまして。
そこでまた笑い、健気にもそれに応える秀人くんに笑ってしまいました。
カラッとしてて、笑えて、ちょっと良い気分になる、可愛いお話です。