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shouhu no yakata he youkoso ω kakeru a torance yuukaku omegavers
最初にこの本の紹介文を読んだ時、頭の中が『?』だらけになったんです。
くもはばきさんの新刊は遊郭もので……オメガバース⁇
だって『可哀想な不憫受け』とか『運命に翻弄されるω』なんていうイメージからほど遠い作家さんだと思っていたからなんですよ。くもさんのお話の登場人物はむしろ『自分の力不足を知りつつも、苦笑しながら、困難を乗り切ろうと努力する人たち』だと思っていたんで。
そもそも『娼父』って何?『娼夫』じゃなくか?
ちょっと怯えながら読み始めたんですが……
これは、なんと‼
なんて新しいオメガバース、かつ遊郭もの!
目から鱗が落ちる様な新鮮な驚きと、爽快感を味わわさせていただきました。
版元さんのあらすじ紹介が詳しいので、私はそこに書いていないことを。
『開国直後の日本にオメガバース設定がある』という世界観のお話です。
受けの鉄佐はαの下級武家出身で、両親ともに西欧列強との海戦で命を落としています。長子の姉がωの婿を取って家督を継いだのですが家計は苦しく、10歳の時、泣く泣く女衒に売られてしまいます。一時は『お職の花魁』まで行くのですが、16歳の時にいきなりデカく、声も低くなり、おまけに遊郭に置き去りにされた子どもが自分の子であると分かります。乳飲み子(付けた名前は『米太郎』)を抱えて困っていたところ、子連れの男やもめばかりを置いている『巣父館』(余計な話ですけれど、ここ、かなりの『色物』遊郭ですよね)に拾われた、というわけです。鉄佐の年季開けはもうすぐ。そうしたら、もう10歳にもなった米太郎のために遊郭を出て、どんな仕事をしてでも学問をつさせてやりたいと考えています。そんなところに豪商三男坊のω、光春が片仕舞い(一夜買いきること)の客として訪れるのですが……
鉄佐も光春も、自分の心と体の食い違いに悩んでいます。
誰よりも強く男らしく、そして「攻めでありたい」と考えている光春は、人形のように可憐で病弱でω。
赤い打掛や可愛らしいものが好きで母性に溢れた鉄佐は、屈強な力持ちで丈夫な体のα。
それが彼らにとってどんなに意にそぐわないことであっても「そのように生まれたのだから、その通りに生きていきなさい」と世間が彼らに要求します。
おまけに、オメガバースであれば、絶対避けて通れないことまで、彼らの身に起きてしまうんです!(ここは、これから読む方のお楽しみに伏せておきますね。いつものパターンを想像されている方、たぶんそれとは違います……うふふ)
恋って何なんでしょうね?
くもさんはこのお話を通して「恋とは、たとえそれが一般的な在り様でなかったとしても『惹かれあう魂』を感じた二人が、意志の力によって成就させるものだ」と言っているような気がします。
私もそう思うんですよ。
そう思うからこそ、BL読みになっているわけで。
かなり特殊な設定ですが、その世界観も説明的ではなく、ちょっと落語の長屋話めいた(この辺、米太郎の存在が大きい。ひょっとして、くもさんは落語好きなのかなぁ)やり取りで分からせるなど、くもさんの筆はとてもお上手。
難を言えば、解決に至る部分があっさりしすぎていて「ちょっぴり物足りないかな」とは思いました。
ただし、このお話のテーマやそれを書き表すための設定、鉄佐と光春、米太郎をはじめとする登場人物の造形が、私の想像を遥かに超えた素晴らしさだったため『神』作品の評価は揺らぎません。
「オメガバースって苦手かも」という『運命』嫌いで、アヴァンギャルドかつ知的な恋物語を読みたいと思っている姐さま方、このお話はそういうあなた様にピッタリですよ。