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高校生と高校生の『イノセンス~幼馴染み~』と、その八年後の続編『イノセンス~再会~』が入ってます。
とくに前半の『幼馴染み』が素晴らしくて、泣かされました。
主人公は少し知的障害のある睦。勉強はできないけど、心はピュアです。
相手役は小さいころからの幼馴染みの来栖。文武両道でイケメンの完璧すぎる幼馴染みです。
仲良しだった二人が、離ればなれになることが決まってる高校卒業を目の前にして、互いの恋愛感情に折り合いと決着をつけようと頑張ってる姿が切なかったです。
砂原糖子節が炸裂してました。優しい世界だ。
ラストでめっちゃ泣きました。
『再会』はその八年後。
睦はともかく、来栖には八年の月日が必要だったんだと思う。うん。
この作品を読んで思わず人情喜劇舞台を思い出しました。
もう亡くなられてしまったけれど藤山寛美さんの人情劇物によく「アホがええこと言うて泣かす」というパターンがあったんですが、ある意味そこがよく似てる。
アホな登場人物が無垢な心に響く事を言って観客を泣かすという手法自体は嫌いではないですが、アホ=ピュアという図式は鼻持ちならなくなる題材でもあるのでその匙加減が非常に難しい手法だとも思います。
初っぱなからアホアホ書いてますが陸[受]は、所謂アホの子ではなくて知能的、性格的に障害を持つ設定になってます。
しかし幾らレベル低い高校とはいえ陸が卒業したのがちょっと解せなかったかなあ。
絵が得意という才能があるならあるで最初から押し出しておいてくれた方が読み手側としては多少安心出来た気がします。
陸があまりに何も出来ない上に、彼を知らない人にとっては困惑するしかない行動を取りすぎるので、ご都合主義であっても絵は上手いとか、お金の計算は普通に出来る位の下地を持たせておいてもらえると安心して物語に乗れるというのもあります。
そういう所がちょいちょい気になっちゃうんですよね。
障害者ならいっそ普通高校には行けない位のレベルか、ほどほどに社会で生きられるのならそれなりの実力を持っているかのどっちかにして欲しいんですけど陸はそのどちらでもないのでそこが何だか落ち着かない。
それをイノセンスと言われても、まあそうなんだけどうむむーって感じ。
貯金箱を持ってキスをしてもらいに来る陸、卵焼きは必ず半分にして食べる陸、等々グッと来そうなシーンは幾つか出て来ます。
この2人を幼い頃から27歳位まで丹念に書いて行くので読みがいはあります。
ただ陸の設定はデリケートなものであるだけに、すっと抵抗無く読める人と少し引っかかる人がいる様な気はします。
来栖[攻]が陸にずっと想いを寄せながらも、長い長い時間かけて想いが通じ合うシーンは結構好き。
陸の設定にすっと入り込める人ならこの作品を堪能できるかと思います。
自分はちょこちょこと微妙に引っかかりつつ楽しんだという所です。
挿絵の樹要さんは、瞳に表情が無いのがいつもちょっと気になります。