イラスト入り
da vinci to sarai
『小説オメガバースアンソロジー』(2017年10月発行)の一遍。
タイトルを読んで「え?レオナルドが主人公なの?」という驚きで購入してしまいました。天才のくせに(私は「天才って何でも出来るので、出来ないことのある一般人の気持ちが解らない人」と思っている節あり。偏見でしょうか?)ジャコモの気持ちが汲めるという、なかなか『良いレオナルド』でした。
Ωのジャコモは、やはりΩだった父(この場合母なのかしら?)が自死し、孤児院を出てからは掏摸をして生活をしている浮浪児。父の情交を盗み見てしまってからは「いつかあのようになる」のが恐ろしくてたまりません。彼はダ・ヴィンチを探し当て、自分の体の秘蜜を解き明かす様、ナイフで脅しますが、軽くいなされてしまいます。しかし、ダ・ヴィンチはジャコモを自分の工房に連れ帰り、弟子として迎え入れてくれます。月日は流れてジャコモは16歳になりますが、ヒートはまだ現れていません。ダ・ヴィンチの元で手伝いをしていますが、絵を描かない彼は他の弟子達に「師匠の稚児」と嘲られています。人と違う体の自分に分け隔て無く向き合ってくれるダ・ヴィンチに思慕の念を抱くジャコモは、自分がいることで再びダ・ヴィンチが男色の罪に問われる事を恐れ、彼の元を去ろうとするのですが……
オメガバースって『可哀想な境遇に生まれついてしまった主人公』という、少女小説の流れを汲んでいる様な気がします。それほど読んでいないのですが、このお話はその王道じゃないかと。
劇的な事件が起きる訳ではありませんが、父との関係や社会の偏見によって傷ついている主人公が、大きな愛情に包まれて癒されていく様子がとても気持ち良かったです。
あとね、冒頭にも書きましたけれどやっぱり「あのダ・ヴィンチが!」っていう所ですよね。
ヒート前に『番』の話を聞いたダ・ヴィンチがジャコモのうなじに噛みつくシーンがあるのですが(全然色っぽくないシーンですよ)「え?番っていうのがあるの?ふーん……ガブッ(好奇心)」という感じで「ああ、これダ・ヴィンチだぁ……」と思ったのが、私のこのお話の一番の萌えツボでした。
『受胎告知』とか、今までとは見る目が変わってしまいそうだなぁ。