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hito no katachi
作家さんの新作発表
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人形を作る側と人形になった側の2カップルの話です。この作者様の作品は、全体的に自分好みで読み応えのある作品が多いのですが、こちらもその一つでした。
丸ごと1冊表題作ですが、4部に分けられています。
「一」
三次(受け・16歳)が主人公です。でも三次の目線だけではありません。
舞台は明治4年の東京。三次は喧嘩っ早くて仕事が続きません。何故か三次に親切な才蔵が、次に紹介してくれたのは、人形師・頼家立松(20代)の使用人。立松は、吉原で起きた殺人事件の被害者・菊也の人形を作るために、三次に菊也の襦袢を着せて…。
「二」
「一」で殺害された菊也(受け・15歳)が主人公です。時間は「一」の少し前に遡ります。浪人の父親に売られた菊也は遊郭で売れっ子になり、エドガー領事(攻め)に買われます。エドガーを好きになるけれど、彼は帰国することになり、再会は早くても2年後と知った菊也は…。
「三」
立松×三次に戻ります。「一」の後、完成させた人形を見世物にしていました。ある夜、立松の家に押し入ったエドガーは、菊也の人形を盗み、船に乗せて帰ります。
「四」
2004年の東京。
子爵の末裔が、ご先祖の愛した人形を売ろうとするのですが…。
表紙のイラストは、立松×三次です。
立松は人形つくりのために三次を抱くのですが、それだけでは終わりません。エロに夢中になったのではなく、情の深いところが男前だと思いました。
襦袢(=三次)に取り憑いた菊也が、人形ができてそちらに移る。そしてそれをエドガーが盗んで愛するというのが、オカルトチックではありますが自然に受け入れられました。
それぞれの2カップルのセックスだけでなく、エドガーが人形相手にエッチをしたりとエロも多いです。私はエロ場面はあまり長いのは好きじゃないので、ちょうど良い長さでしたが、1シーン10ページ以上の重厚なエロを望む人には物足りないかもしれません。
脇キャラとして登場する才蔵が、物語に厚みを加えています。元武士ですが、菊也を売った男であり、三次の父親を切った男でもあります。
胸を病んでいるとはいえ姉をまきこんだ菊也はちょっとどうかもとは思いますが、15歳の精一杯と思えば健気です。また、単に「好きだ」「愛している」というのではない立松がとてもいい男だと思いました。
”ひとのかたち”とかいて人形、その人形を作った人間サイドと、その人形のモデルになった人間サイド、その双方の物語が絡み合っていくこの小説は実に興味深く、面白く、のめり込ませました。
限りなく神に近い萌えです!
気が強く、奉公しても三日ともたない三次が口利きの才蔵から紹介された先は、人形師の立松の家での奉公でした。
皆に蔑まれ優しさというものを母親以外に与えてもらったことのない三次は、人として同等に扱う立松が気に入っていました。
そんな時、廓でイギリス人に遊女と陰間が殺されたというニュースに駆けつけ、その人形を作ることになった立松ですが、魂の入った陰間の人形を作る人形師として熱中するあまりに三次を抱くことになります。
その殺された陰間の菊也は父親から才蔵に姉と共に売られた子供でした。
陰間として売られてもあくまでも仕事だからと割り切った対応しかしていなかった菊也に、一目ぼれしたイギリス人のトンプソンは初めて人を愛し愛される体の悦びを教えるのです。
イギリスに帰ることになったトンプソンは、いつか迎えに来るからと菊也に約束するのですが、そこでとった菊也の行動は・・・
立松の作る人形への執念はすさまじいもので、三次は人形に嫉妬さえ覚えるのですが、初めて関係する時、それは菊也が乗り移ったようになるのです。
立松は、男が好きというわけではないのですが、仕事に熱中する為に三次は居心地のよい相手ではあったのだと思います。
それにしても当初から無頓着で、寒いからと布団は一つで関係する前から裸の三次をゆたんぽ代わりにしているって、すごく無自覚な罪な男です。
立松は局部も再現しようと三次をいじり倒したりとか、その職人ぶりは徹底していますが、そのおかげで魂が宿るほどの人形ができたのでしょうね。
話は更に現代まで進んで、トンプソンの子孫や、立松と三次の起こした会社のその後まで話は飛び、そこで菊也の人形が出てきます。
魂を込めた人形は永遠だと言う話・・・一つ間違えたら呪いの人形になりそうですが、そこは因果ということで。
立松の作る人形は球体関節を持つ人形だそうで、SD(スーパードルフィー)を連想して自分は妄想が膨らんでいきましたよ♪
視点を作る側、作られる側、過去、未来と飛ばしてとても熱中できるお話でした。