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この男に、責められたい──。
goshujinsama to masochist
うーむ……考え込んでしまったんですよ。
人を好きになるのってなんなんだろう?って。
睦月は自分のことをMだと自覚しています。
以前の恋人達にもそのことを話し、合意してもらえればそういうプレイも『してもらって』来ました。
睦月の支店に人事異動で来た史郎は、そのイケメンぶりで最初こそは女性社員に騒がれるものの、付き合いは悪いし、素っ気ないしで、輪の中からは外れ気味。でも睦月としては、その素っ気なさやクールな感じが好みなんです。
仕事先でいきなりの大雨に濡れて更衣室で着替えた睦月は、前の恋人に鞭打たれて出来た痣を史郎に見られてしまいます。その後「マゾなんですか?」と聞かれ、自分はサディストだと告げられます。
史郎に責められたい気持ちを持っていた睦月はSMのパートナーになってもらうよう史郎に頼み、2人の(ノンケ同士の)SM関係が始まるのですが……
人を好きになる前に、その性癖を聞いたりしませんよね?
でも、それって結構大切なことだと思うのです。
「多数に属さない(と思われる)性癖を持つ人って、実際は我慢しているんだろうか?」なんてことを考えちゃったんです。言い出せなかったらそうするしかないですよね?
じゃあ、一旦好きになってしまった人がマイナーな性癖だったからって嫌いになるかと言えば、必ずしもそうでないような気がします。
また、所謂『体の相性』が良い人が最良の相手かと言えば、やっぱりそうも言い切れない様な気が……
じゃあ、好きになるっていう理由はなんなんだろう?と。
このお話の中でも、睦月がそのことを色々と挙げるシーンがあるのですが、そこを読んでも「でも、それが全てではないよね?」と言いたくなる。
SMのお話なんですけれど、淫靡な感じがしません。むしろ甘い。
変な言い方ですけれど『健全なSM』だと思いました。行為にキュンキュンする睦月は可愛らしくもある。
そのくせ『恋について考え込む』という、不思議なテイストが魅力的な1冊でした。