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続編もありますが、1話完結話が2編収録なので単品で読んでも全く問題ないです。
現代舞台で、どちらの話にも祁内という謎の人物(本当は祁はネじゃなく示なんだけど変換出来ないので出版データにあったこちらの漢字で)が登場します。
祁内は一見温和青年風ですが、天使的というか一種不思議な能力で人を導きに現れます。
正体は謎でちょいファンタジーちっくですが、話自体はもう素晴らしいとしか!!
BL以外の文学賞を取っても驚きません、それ位素晴らしい作品。
収録作品は「子守歌は着メロ」「バスレフの白い電話 」の2編。
1作目は1年かけて撮った動物映像に駄目出しをされ悩む若いカメラマンの前に祁内が現れ、無くした携帯電話のある場所へと導きそれを取りに行かせます。
そこに写っていた映像と冒頭での母鳥とのシーンがリンクする部分は読む快感に背筋がゾクゾクっと来ます。
こちらは映像制作会社とカメラマンとの恋未満。
そして2作目が最高過ぎるーー!
天才的な科学者でありながら生活能力ゼロな久信と、その仕事の管理と私生活の世話まで引き受けている上司であり恋人の修司。
梅が咲く雪の上で怪我をして倒れている久信が数時間前を振り返る所から話は始まります。
今市子さんが描く雪が血に染まり、咲く梅林の梅の挿絵が美しい。
その時に修司は5年間の久信に捧げた人生と別れ、未発表の彼の特許を持ってアメリカへと旅立とうとしており、宿泊するホテルのコンシェルジェとして祁内が出てきます。
彼の導きにより修司は久信の生まれた村の咲き誇る大きな梅の木の下で、10歳の頃の久信と出会い電気に夢中な少年に糸電話を使って音を見る方法を教えます、それがタイトルにもなっている「バスレスの原理」なのですね。
少年の彼も成長した彼と同じく一つの事にしか目が行かず、興味が他に移れば出しっぱなしな所も己の思考に没頭してしまう所もそっくりで少年を通して、修司は久信を改めて思い返し忘れていた愛情に気付きます。
祁内が修司に告げる一言で自分が大きな分岐点に立たされていた事を知るシーンは鳥肌モノ。
目覚めた久信が「パスポートを取る」「洗濯する」「料理もする」ときっと彼には上手く出来ないであろう事を一つ一つ上げていくのがもっそい可愛いです。
生活能力ゼロの科学者好きの方にはたまらんと思います。
少年の久信も可愛かったですが、成長した久信もおそろしく可愛いーーー!!
いい話に萌えが加わって最強。
あとがきでたけうちさんが祁内を「秘蔵っ子」と書いていますがおそらくずっと温めてきたキャラなんだろうなというのが分かります。
2作で読みやすいし、内容も素敵に面白く科学者萌もあってもう神だとしか!
これで祁内が気になったら、続編もオススメです、そっちも面白いんですよー。
こちらのシリーズ、続編のほうを先に読んでいたのですが、どちらから読んでも前後はないと思われます。
というか、お話自体は第三者から見たオムニバス形式で、続けようと思えばいくらでも続くテイストです。
設定自体はフィーリングに依るところが大きく、ふわふわ曖昧な部分があるので作品的にどうなんだといったところですがお話自体は素晴らしく面白いです。
ただ難をあげれば、スキンシップや恋愛進行を追った普通のBLとは違いますのでそういうのを読みたい方向きではないかもしれません。
たけうちさんの作品はたまに「萌え」というものを追求して書いているようには思えないのでそういうのを求めると肩透かしをくらうのですが、でもカップル2人のつながりはきちんとあり、映画や文学のような人の心の深くにじーんとくる、「恋愛とは?」と訴えかけてくる作品が好きなら間違いなくお勧めできます。
この本は短編集で、2組のカップルが出てきます。
お話としては後半の「バスレフの白い電話 」のほうがメインかと思いますが、前半の「子守歌は着メロ」のカップルが(カップル未満ですが)すごく好みでした。
でもやはりお話としては「とある不思議な一日」という感じであくまでBLよりは読み物かなぁという感じです。
ティーン向け小説より大人向けTVドラマに向いてそうな…。
たけうちさんのお話って、このカップルが好みだから!といって期待できない作風だと思うんです。そこが少し残念。
前半は短いお話なので感想を書きづらいですが、読んで損はないですという事は書いておきたいです。
後半「バスレフの白い電話 」
こちらは完成度が高く、単品でも神評価をつけたいです。
天才科学者・久信と、久信の私生活の面倒をずっと見てきた修司。
天才ゆえに一つのこと意外何も出来ない、というのは稀にあることだそうですが、久信の生活を朝から晩まで面倒をみて何一つ自分のことが出来ない修司は、久信の研究を盗み渡米しようとします。
修司は久信に愛情は感じているのに、科学者としての嫉妬もあり、いくら尽くしても相手は研究のことばかりで空しさもある。
修司に捨てられ、久信は初めて自分の存在に嫌気が差し、家を飛び出した先で車に跳ねられ重傷を負います。
そんなギクシャクした2人の未来は一歩間違えば闇の中で、それを細い光の道にすがってたどり着いた結末は必然なのか…とにかく久信が「事故にあったこと」で救われた修司の未来になんだかぞっとするものがありました。
私は修司の報われなさに同情心がわきましたが、それも久信の「これからは研究以外のこともする」という前向きな姿勢で帳消しかなぁと思いました。
1つのことが飛びぬけている所為で100のことが出来ない人に、そのスタイルを変えさせるのは至難のわざです。1しか見えていなくて周りの100のことが見えていないわけですね。
その100のことに気づかせるというのはすごいことではないかと思います。理不尽でも報われなくても愛するかどうかは自分で決められない、という深いお話でした。
それと素直になった久信がめちゃくちゃ可愛く…大人とは思えない。無垢なまま育って子供の頃のあれが不思議これが不思議と思った好奇心を持ったまま大人になってきっとこんな性格なんだと思いますが、恋人としてみたら凄く可愛い。
普通のBLのようにカップル主体のお話ではないのですが、だからこそ余計いいのかもしれません。