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gokujou no koibito
1冊丸ごと表題作です。内容はパトロン×芸術家という感じです。
香也(キョウヤ・受け)は急死した母の代わりにブランド「華楽」を継ぎますが、パリコレで酷評されます。旅先で出会った、紳士然としたリチャード(攻め)を一晩の相手にと決めて誘惑します。しかし、リチャードは香也の素性と失敗を知って黙っており、プライドの高い香也はそのことに腹を立てて去ります。その後、売り上げが下がった事から銀行からの融資を断られ、絶体絶命の「華楽」をフォーカーク社が買収したいと申し出ますが、その条件として香也をデザイナーから外せといいます。そのフォーカーク社との話し合いの場にリチャードが現れて…。
冒頭から102ページまでは旅先でのリチャードとの出会いから情事で、二人の再会は154ページになります。その間は香也の交友関係や会社の危機、デザイナーとしての話になります。
リチャードは、「華楽」は「華楽」としてそのままの路線をキープして稼ぎ、香也は別にブランドを立ち上げて…と提案しますが、プライドの高い香也には受け入れられません。
香也はデザイナーを止め、リチャードの愛人として過ごします。結局は香也は自力で立ち直るのですが、その間のリチャードの対応が見事ですし、健気でもありました。無精ひげを生やしたリチャードが、香也にひざまずく場面のイラストは大のお気に入りです。
なお、旅先でも再会してからも、リチャードがヨーロッパと日本のデザインや歴史などを語りますが、鬱陶しい程ではありません。ただ、恋愛模様を楽しみたい方にはちょっと邪魔に感じるかもしれません。
恋愛重視の方には物足りないかもしれませんが、仕事ものが好きな自分にとっては、仕事と恋愛のバランスが取れた良い作品だと思いました。
御木さんの小説は、過去に『こいきな男ら』(*my神作品)、『WORKDAY WARRIORS』(*実はこちらは途中までしか読めていない)以来だ。
久々に読んだ薀蓄を目一杯詰め込んだ文章、仕事描写ガッツリな作風には抵抗はなかった。
しかし、話の中身はまさかのしくじり案件とは…。
受け・香也(きょうや)は急逝した母親のブランド『華楽』を引き継ぐが、自分色に梶を切ろうにも従来のファンに受け入れられず酷評を受ける。
たちまちに経営に行き詰った所を、偶然出会ったセレブ攻め・リチャードの手腕でイメージ回復、再建に成功するって所で話は終わっている。
本来ならば、母親とは感性の違う香也が独自のブランドを立ち上げるまで、悪戦苦闘しながら成長するって内容のほうが御木さんの真骨頂だろうにと感じた。
先に挙げた御木さんの過去作では、真剣な仕事ぶりを通してカップルの恋愛過程や成長を実感していく内容だった故に、ラブ主体のBLであっても仕事描写は重要だ。
主人公の真摯な姿勢を読みたかった。
特に今回の香也に関しては、好感を持てる一つも無かった。
母親の真価を認めようとせずに始終反抗心を抱えているのに、残っている利権(華楽ブランド)はちゃっかり引き継ぐって辺りがもやっとする。
周りのスタッフや取引先に対しても威張った態度だし、代わりに頭を下げ続ける部下も見下しているし、頭にくるとすぐに逃げるといった経営者失格ぶりを見せつけられた。
そんな香也に一目惚れしたリチャードに対しても、この男には人を見る目がないんじゃないか?と疑いたくなってくる。
彼には香也の天邪鬼ぶりが小悪魔のように映っているのだろうか?
恋愛に夢中になっていく様子の空回り具合が何だか虚しかった。