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元詐欺師×没落貴族の坊ちゃんという組みあわせです。
読みはじめからずっと雰囲気が童話っぽいなぁと思っていたのですが、その理由がなぜかと言うとセリフがちょっと台本のようというか、舞台のセリフのようなんですね。
でもそれが大げさに見えるかというとそうでなく、作品にぴったりはまっています。
舞台は1926年の英国。退廃する貴族の当主であるトマスはまだ22歳。
アメリカから来たという素性不明の男、アーヴインに乞われ彼を使用人として雇うことになります。
アーヴインは何でもそつなくこなす飄々とした男ですが、実は元詐欺師でジゴロで…という人には言えないような仕事で生計を立ててきた人間です。
アーヴインは何故か最初からトマスにベタボレでして…その理由はすぐに明かされるのですが、肝心のトマスのほうは過去の恋人の影を引きずっていて、ですがアーヴインの求愛にしだいに心を動かされていくお話です。
アーヴインの愛は一途で真っ直ぐで、護る愛という言葉がぴったりです。トマスの過去の恋人、ギルがトマスをモノにしようとあれこれ仕込んでくるのですが、ギルのほうはトマスを手に入れるためにトマスの全てを奪おうとする。
アーヴインがトマスが好きだからトマスの全てを護ろうとするのに対し、ギルは奪う愛という感じでした。
ギルは悪役でアーヴインにも散々なじられるのですが、私は何故かこの奪う愛というのも悪いものではないのではないかと、何故かギルにも共感してしまいました。(もちろんアーヴインの愛は素敵なのですが)
トマスが貴族の当主だから、トマスと対等な恋人になりたいから、トマスから屋敷を奪おうとする行為も(迷惑なのですが^^;)これはこれで愛そのものではないかと思うのです。
ストーリーは今ではホテルの跡取りとなったギルにトマスが騙され、屋敷を奪われそうになるのを、元詐欺師のアーヴィンが策を練って回避しようとする、というストーリーもどこか舞台ぽいというか、普通に一つの物語としても楽しめました。
もうセリフが素敵で文章が素敵で…いちいち噛み締めて進みました。
よかった台詞や文章にふせんをぺたぺた貼ったとしたら、ふせんだらけになりそう。
アーヴィンの性格もトマスの性格も素敵なんです。
真面目で嘘がつけず騙されやすいトマスと、人には言えないような仕事をして生きてきたけど自分が好きだと言えるというアーヴィン。
アーヴィンの過去は多くは語られていないのですが、何でも難なくこなせるアーヴィンは、愛を売って人を騙して生きてきて、愛なんて無くても困らないもの、お金で売り買いしてそれを双方が理解しているものだと思ってきたのに、トマスの前では学生のように真っ赤になってしまう。
傍にいるだけで腰がくだけるようだというのを文字通り「骨抜きにされる」と表現しています。
「恋で死んだ男はいないってシェイクスピアが言ってたけどでも俺は死ぬぞ」ってセリフが面白かった。
トマスは純粋培養のお坊ちゃんで、汚いことを知らないような存在でこの対角な性格がとても面白いです。
トマスは最初、22歳にしては思考が純粋すぎて、悪く言えば世間知らずというか、子供っぽいと思いました。でも育ちのよくないアーヴィンが今まで生きてきた中で出会わなかった人種なんだろうと思うとすごく愛しく思えます。
トマスに対して意地を張って一歩も引けなくなったときに、アーヴィンの今まで回りにいた人なら彼を殴ったけど、トマスは決して怒ったりしないでただ傍に居るだけ。傍に居てアーヴィンを見つめるだけです。それがまさしく天使のようというか…。
でも優しく甘いだけでなく、意地っ張りで芯が強いんです。屋敷の主人として、雇い主としてこんなに魅力的な人はいないんじゃないかなぁと思います。
信じて欲しい、愛してる、誰にも触らせない、護ってやる、いや護らせて…アーヴィンのセリフはホントに直球でこっちが赤くなるような純粋で飾り気のない言葉のオンパレードです。
おそらくジゴロであったときのお客にはもっと凝ったセリフを吐いていたのでしょうが、この真っ直ぐさが次第にトマスの心を動かしていくことになります。
お話はシリアスではなくほのぼのとしているので最後まで安心して読めました。最後にギルに制裁を加えるシーンが好きです。暴力はダメ!と言うトマスの手前、アーヴィンがとった行動が…予想外すぎてめちゃめちゃ笑えました。
あと、自分の飼い猫を護衛だといってトマスに貸してくれるシーンも好きです。トマスの飼い犬とアーヴィンのネコが2匹ともトマスを護っていて、それはいい味を出してるんですよね。
「愛してる」には価値がないと思って生きてきたアーヴィンが、最後に友人に自分の考えの改めを話す場面があります。
アーヴィンは物事をいちいち順序だてて話したりするのですが、「愛してる」の価値を考えたアーヴィンの理論は素敵で胸が熱くなりました。
アーヴィンは、貧乏な青年貴族・トマスの下へ、従僕として押しかけていった。
実は、アーヴィンは過去にトマスにあったことがあり、トマスに恋心を抱き続けていたのだった。
そんなトマスがピンチに陥っていると知って、無理やり押しかけるようにして、トマスのところにやってきたのだった。
アーヴィンはついついトマスに告白してしまうものの、トマスは当惑するばかり。
そんなトマスが陥った危機とは、ホテル王の娘と結婚した元恋人ギルフォードの策略により、代々受け継いできた屋敷を手放さなければならなくなったことだった。
アーヴィンはそのギルフォードに対抗すべく、ある一計を案じるのだが――
実はアーヴィンは、トマスの家に来る前に、詐欺師をしていて、トマスのピンチを救うべくその手腕を発揮しようと考えたのだった。
トマスはアーヴィンの正体を知って、戸惑うけれど――
という話でした。
アーヴィンは明るくて、ちょっとおちゃらけたと表現するのがぴったりくるような性格をしていて。
一方のトマスは、真面目で純朴な青年。
だからこそ、アーヴィンの計画を知って、罪悪感を抱いたりもするのだけれど、結局はその素直さでアーヴィンのことも受け入れてハッピーエンド。
アーヴィンの普段の何にも考えてなさそうな言動と、詐欺を仕掛けるときに人を食ったような台詞とは裏腹にトマスに対してはこれでもか! これでもか! と丁寧に対応しているし、恋を大切にしているのがわかる描写がとてもいいです。
こういうメリハリって実は相当難しいですよね。
そこそこに頭を使うだましだまされのコン・ゲームと、ピュアな恋愛の話のギャップが大きいのがとても面白かったです。
ギャップのある物語を読みたい方にはオススメします。
12年前、たった1週間、それも少しの時間だけを一緒に過ごした、天使のような子供
その幸せだった時間の記憶だけを頼りに、詐欺師をしながらも、ぎりぎり人間として恥ずかしくないように成長してきたアーヴィン。
アメリカで、それなりの財産を稼いだアーヴィンは、その時の子供トマスの、傾いてしまったグレンフォード伯爵家の窮状を救うべく、イギリスへ戻ってきたのですが、、、
イギリス郊外の貴族の館(森付き)、
天使のようにピュアで美しい美青年、
明るく快活で献身的に一途な愛を捧げてくれる男、
頭脳明晰でハンサムなちょっと愛し方が屈折してしまった年上の元使用人で元恋人、
屈託のない犬と、知性溢れる老猫
ここにあるのはBLの理想郷です。
ハーレクイン的展開と言われようと、夢の王子様が次々と愛してくれるお話は大好き。
でも、せっかく、求愛してくれる殿方が、どんなにみんな素敵でも、求愛される主人公が、嫌いなタイプの女だったら一気に興ざめ。
たとえそれが、嫌いな女じゃなくって、どんなにいい女の子でも、やっぱりそれはそれでむかつく。
そうだ!求愛される主人公もいい男だったらきっと、もっと楽しいはず!
読みたいのは、紆余曲折して後の、恋愛の成就や、成就した後も続く迷い
セックスだって、成就した恋愛の象徴としての「夢のように幸せな時間」とだけ表現されていれば良くて、別に、リアルなゲイの交接を詳細に知りたい訳じゃない。
そんな、原初BLの理想郷がここにあります。
今は亡き、あとり硅子さんの挿絵共に、このかわいい恋の物語をお楽しみ下さい。
アメリカから生まれ故郷イギリスへ舞い戻った、赤毛の青年・アーヴィン。
彼の帰郷の理由は「天使」の窮状を救うため。
その天使の名はグレンフォード伯爵トマス・ラッセル。
アーヴィンは汚い手で奪い取られたトマスの屋敷を取り戻すために、
ある計画を立てます。そして繰り広げられたコン・ゲーム。
そこにアーヴィンとトマス、そしてトマスの元恋人ギルフォートの
三角関係が絡んでくるのです。
献身的な愛を捧げるアーヴィンに、相手を支配しようとするギルフォード。
二人の間で揺れるトマスの葛藤が丁寧に描かれていて、読み応えがありました。
「天使」と称されるトマスは容姿も心も繊細で美しい、世間知らずのお坊ちゃま。
少しいい子過ぎるんじゃないか!?と仰る方もいるかもしれませんが、
私は彼のほわほわ~っとした優しいキャラに癒されました。
そんなトマスにベタ惚れなアーヴィンは、
昔はジゴロをやっていたという設定です。
しかし!ジゴロとして刹那の恋を楽しんできた経験豊富な彼ですが、
いざトマスとの本気の恋となると、超ヘタレになるのがツボでした。
相手の真意が知りたくて焦れて拗ねて凹んで、
おろおろしている様子がとても可愛いのです。
一応、悪役ポジションのギルフォードも大変、いい味を出していて。
最終的にはトマスの愛し方を間違った可哀想な人と、
同情すらしてしまいました……。
全体的に人の温かさや、善意が溢れる優しい物語でした。
ほのぼのとしたBLが読みたい方にオススメ。