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yasaibatake de aunaraba
作家さんの新作発表
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私がこういった作品を読み始めたときは、既に「ボーイズラブ」という言葉が成立していたので、その前身として「JUNE」という雑誌が築いたジャンルがあったことは知識として以上はわかりません。
だいたいこんなかんじだろう、というイメージをぶち壊したのがこの作品です。こんなすごい作品も載せてたの?じゃあ「JUNE」って一体なんなの?という疑問符で頭がいっぱいです。
主人公の立野宇宙は、小学2年生の時の学芸会の劇をきっかけに、周囲の人の顔が野菜に見えるようになってしまいます。野菜には顔がなく、表情がないため、主人公は誰の顔色をうかがうこともなく、自由に過ごすことができます。
その一方で、野菜の顔を「怖い」「気持ち悪い」と思い、誰とも心を通わせることができず、非常に孤独な生活を強いられています。心配してくれるクラスメイトの千葉くんにすら、冷たい態度を取り続けます。
そんなある日、クラスに転校生がやってきます。それは小学校のとき同じクラスだった阿坂くん。学芸会の劇にともに出演していた彼だけは、野菜ではなく人間の顔に見えます。それをきっかけに、あきらめ半分で安定していた彼の自意識はぐらぐらと揺らいでいきます。周囲の人にも自分が野菜に見えているのかもしれない・・・そう考えはじめた結果、主人公は自分自身の顔すらなくしてしまいます。
そして、千葉くんと心を通わせることで自分の顔を取り戻すも、それが最終的な救いになることなく、出口のない哀しい結末を迎えます。
このラストが果たして本当に哀しいものなのかすら、私には判断がつきません。ただ、対人関係に自信が持てない不安定な自意識を、かなりシビアな目線で抉っているように思いました。
主人公の阿坂くんへの憧れのような気持ちや、千葉くんとほんの一時、心を通わせる以外は、ポジティブな他者との関係性はほとんどなく、良くも悪くもちるちるに掲載されている他作品とは全く色の異なるお話となっています。ボーイかもしれないけどラブは皆無だよ!みたいな。あーもう本当に「JUNE」ってなんだったんですか?!わかりません!
今はそつのないBLを書かれている佐々木禎子さんが、こんな感性剥き出しの尖った作品を書いていた時代があるなんて、ちょっと信じられません。是非読んでください!と勧めたい本ではありませんが、このもやもやした気持ちをどなたかと分かち合いたい、と思ってしまいます。