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作家さんの新作発表
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ー神様、無垢な禁忌を裁くのですかー
圭介×彰、結城×和巳、各カプの完結話2編が収録されている。
背徳の生誕に取り憑かれた男たちの悲哀を描いた傑作。
読後感が色んな意味で凄い!
上巻よりずっとダークでヘヴィーで痛いので元気な時に読むことをオススメします。
「背徳のマリア-後編」イマージュクラブ1996年11月号初出
研究の末、実弟・和巳との間に胎児を誕生させた結城は
本人に知らせないまま和巳の体内にちいさな命を埋め込む。
けれど、和巳は体内で蠢く存在の正体を安藤から知らされたことにより
自分は生体実験の器としてしか結城に愛されていないと思い込んで絶望し
自身の命もろとも胎児を絶命させるべく
果物ナイフで自身の腹を割いて胎児を取り出しす。
瀕死の重体となる和巳。
凄惨な現実を見て精神が崩壊してしまう結城。
和巳の命を救ったのは安藤だった。
手術さえままならないほどの血の海の中で
安藤は自身の勘と触覚だけを頼りに視覚を封じた神がかり的な処置で
死の淵から和巳を取り戻したのだ。
一命を取り留めた和巳は安藤が人体実験には無関与だったと証言。
安藤は大学病院を解雇処分となるが医師免許剥奪は免れて
一年間にわたる和巳の療養生活の担当医をさせてもらった後は
彰達の経営する富良野の診療所に居候として転がり込む。
それから丸2年が経過して、突然安藤を訪ねてくる和巳。
去り際には、安藤に好きだと告げてキスをする。
そして、和巳が残していった手土産は、大学病院から盗み出した兄の受精卵とデータと手紙だった。
その手紙に綴られれていたのは和巳の想いと願いで……
自分が死にかけたこと、結城が狂ってしまったことによって
結城の自分に対する想いが初めて理解できたこと。
結城の想いに応えたい。
二人の絆を永遠のものにしたい。
自分と結城の精子による受精卵を命としてこの世に誕生させたい。
だから、安藤には自分たち兄弟を見捨てないで欲しい。
「背徳のマリア~Mary Magdalene~」書き下ろし
ほぼ完全な女性体を手に入れたことで新たな苦悩に苛まれる彰。
圭介の愛情を信じ切れず、圭介の心変わりに怯える日々。
圭介が東京に出張中、安藤不在の夜
彰がシンナー中毒の旅行客に輪姦されるシーンは
血まみれ精液まみれで無惨で残酷。
圭介には決して言うなと安藤に命令する彰。
事件後に帰宅した圭介は佐伯家との養子縁組み書類と婚姻届を差し出すが
彰はすぐに婚姻届けに署名できない。
突然圭介を訪ねてくる圭介の母。
診療所で安藤を前に、息子への思いを涙ながらに愚痴る母。
戸惑って言葉が出ない圭介。
隠れた寝室で話をすべて聞いていた彰。
圭介の幸せだけを考える彰は
妊娠出産できない女性体であることの苦しみから
ついに結城がした移植手術を自分に施すことを決意する。
圭介と安藤を睡眠薬で眠らせた後に局所麻酔のみで自身の腹を切り開き
圭介の精子と玲奈の死んだ胎児から採取した卵子との受精卵を腎臓に移植しようとするが
出血・血圧低下・酸欠などで手術途中で瀕死の状態となる。
安藤によって一命を取り留めるものの、意識を取り戻した彰の精神は崩壊していた。
おまけに、脳酸欠状態による後遺症のせいで下半身麻痺と言語障害が残り
医師としては引退して車いす生活となる。
言葉もままならず
彰の時間は受精卵を自身の身体に移植した時点から先には進まない。
けれど、圭介と安藤に見守られながら療養生活を送る彰は
何かから解き放たれたかのように笑顔をよく見せるようなっていた。
そんな彰の身体は男性に戻っている。
圭介の手によって乳房が切除され、安藤が男性器を創りあげたから。
二人の男たちに深く愛されている彰は、夢の中の住人で
純粋無垢で一切の苦悩から解放されたかのように幸せそうだった―。
上巻だけでも、衝撃的な展開を見せてくれたのに、それでもまだ足りないというのか、これでもか、これでもか、と追い打ちを掛けてくる下巻。
読むたびに違う感想が頭に生まれ、時に怒り、時に泣き、時に絶望し、どうしてそこまで、それにこだわらなくてはならないのか!?
狂ってしまった者達は、そこに幸せな自分の世界があるのだ。
現実に取り残された者達の苦悩は、それでも狂った彼等によって浄化されてしまったのだと、そんな結末が悲しいのか幸せなのか・・・
『背徳のマリア』で、弟・和己の身体に兄である自分との受精卵を埋め込んだ結城。
そうした事で初めて結城は勃起し、和己と本当のセックスをすることができる。
もう、和己の身体に子を宿そうとする時点で、結城の愛は狂ってしまっていたのだ。
愛し合う兄弟ではあるが、その愛情の対象に嫉妬してしまう和己が、自らの腹を切り開くすさまじいシーンは、後の彰の姿と(彼は和己とは逆であるが)重なってくるのである。
この兄弟にも安藤が深くかかわってくる。
どんな傷も見事に修復してしまう天才的な手を持つ為に、こうした二組の禁忌に立ち会う立場になってしまった安藤は、この話の重要な役割を担っているのだ。
大学病院から逃げてきた圭介・彰、そして黒崎兄弟の件で追放された安藤、の3人が北海道の富良野に診療所を開き、働いている。
彰は外見は女なので、夫婦として世間に認められているのだ。
そこへ起きる、不良による彰の強姦事件。
しかし、彰の真は男であるから、ヴァギナが犯されても何とも思わず、むしろ肛腔の貞操を守れたことを喜ぶ。
上巻で、子宮外妊娠で流産した女子の胎児の組織。
安藤に託された黒崎の受精卵。
それが、彰の手元に渡った時に何が起きるのか!?
どうしてそこまで形にこだわった、存在する、目に見える形の絆が欲しいのだろうか?
でも、ひょっとしたらそれは愛する者をもつものの、奥底の本当の欲望かもしれない・・・
圭介の存在があまりに薄く、彰が執着する部分というのがはっきり見えてこず、むしろ彰と一緒になってからは達観した何もかも受け入れる神様のような人で存在してるが、
その分、狂った黒崎や彰の汚いところ全てを見て助けてきた安藤が、脇役ながら、その存在はとても重要な役割を担っている。
彼は決してBL向きの美丈夫な外見ではなく、背は低く、無骨で性格も粗野である。
密かに彰に惹かれ、見守り助けた彼が一番、まともな人間な存在であり、この話の救いであったと思う。
性器を切り取り、ヴィギナを造り、骨も削り、胸を造り、全身を女に作り替えた彰が最後、不完全ながら男に戻る・・・女でいた彼は幸せではなかった、ただ、”愛”を形で欲しかったのだ。
たとえ歪んだ選択だったとしても、それは黒崎も同じだったのだろう。
何度目かの結末を読んだ時、流れた涙は一体自分にはどんな涙だったんだろう?