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sonotoki boku ha toumei ni naru
う~ん、なんというか松前さんと非現実は合わないんじゃないかなあ、と思ってしまいました。
もともとふわふわ優しい雰囲気で、淡々とした日常を綴るのが持ち味の作家さん(だと思ってる、私は)ですし、わざわざこういう形にしなくても・・・というか、正直噛み合ってないと感じました。
ちなみに私はファンタジーBLは大好きです。本格的なのも、なんちゃって風味もどちらも好きで読みます。でもこれは、なんとも中途半端としか言いようがありません。
まず『向こう』と『こちら』の映一(攻)は、作品の中でどうであろうとも読み手はやっぱり別人と捉えてしまいます。
『同一人物』ですべて片付けてしまうのは、ちょっと苦しいと思うんですよ。少なくとも私は強引だと感じました。
心情描写は相変わらず丁寧で、特異な設定にも入りやすいんですが、だからこそ『向こう』と『こちら』のキャラクターが気になってしまいました。
キャラクターもまったく違うし、ストーリーに占める『向こう』の比重が高過ぎて、結局どうしたかったのかもわかりにくくて、余計にスッキリしません
読後、なんとも違和感が残るストーリーでした。
最初の最初から(私にとっての)地雷臭がしました。
受けが「俺と仕事とどっちが大事なの?」系の不満を持ってるという部分で。
こういうこと思うタイプって、女でもヤダ。まして男なら、なおさらヤダ。
そういう不満が爆発して、喧嘩して家を飛び出し、パラレルワールドにトリップ。
その世界では自分はいないことになっていて、またその世界の攻めに拾われる、という。で、受けは、その世界の攻めにまた恋をするわけです。
パラレルワールドで同じ男に恋をしたことを自覚してからの受けのスネ方が、また私の好みとは180度違ってて、かわいくない…。
「拾って貰ってありがと」とか「置いてくれるからには少しは俺に好感持ってくれてるんだよな」とか考える受けなら好きなんだけどなァ。
主人公の苦境を知りいろいろ尽力してくれる攻めに対して、「俺が早くいなくなればいいと思ってる」とか考えるのは、相手の人格を悪く見てるようなもんで、とても失礼な気がするんだよね。
あと、マスターが話してる途中で逃げ出したのも。
まわりが自分のために頑張って奔走してくれた結果、ああいう場が持てたのに、なんでそれをぶち壊しにするような逃げ方をするのかな…と思いました。
「そのときは気丈に振る舞って、あとでこっそり泣く」みたいな健気受けなら、ジーンとするのになァ…と。
良いところは、ストーリーの輪郭がしっかりしてるところ。
文体とプロットは、本当にいいと思います。
気がついたら自分が存在しないパラレルワールドに来てしまった。
恋人と外見が同じ男に助けてもらい、どうしたらいいか悩む主人公。
恋人と同じ人としか思えない男に惹かれるも、この世界ではない本当の現実にいる恋人に申し訳ない気持ちになる主人公。
まるで浮気のような内容ですが、とてもピュアで切ない内容でした。
同じ人を別の世界で好きになったら、片方はどうなるのか。読んでいる間、「帰れなかったら本当の恋人はどうするんだ?」「帰れたとしても、いまここにいる男のことはどうするんだろう?」とドキドキしっぱなしでした。
最後どても切ない展開になっていますが、純愛にあふれた作品でとても満足です。