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kokuhaku scent of declaration
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
「神様、どうかこの人を俺に下さい」
14歳の少年が28歳のオトナに対して抱いた必死な祈りが、胸を刺した。
ヒリヒリするような痛みを胸に引き起こすストーリーでした。
ああ、高遠琉加さんの世界だ…と思った。切なくて悲しくて大好きな空気感。
母をなくした少年が、父親を訪ねてくるところから物語は始まります。
彼は父親が13歳のときにできた子供で、その父親は少年を認知もしてないし、存在すらも知らなかった。冷たく突き放す父親のかわりに彼を部屋に招いたのは、隣に住む父親の幼馴染みだった。
優しくて儚い雰囲気を持つ父親の幼馴染みに、少年は惹かれていく。同時に、父親が、女遊びばかりしているどうしようもないろくでなしであることも分かる。
そんなある日、父親とその幼馴染みがセックスしてるところを、少年は目撃してしまう。
混乱しつつも、少年は思う。あんなろくでなしより、俺のほうがシアワセにしてあげられるはずだ、と。自分がまだ子供であることが悔しくてたまらない。ろくでなしに、彼が本気で惚れているらしいことも。
色んな真相は後輩で明らかになります。
最後はずっと泣きながら読んだ。
『高遠春加』という名前で出した本ですが、この本はもう完全に、『高遠琉加』の文体であり物語でした。
「久しぶりに来ちゃった。ロクデナシの話」と思いながら読み進めました。攻めの男がもう胸くそ悪くなるほど嫌な奴で、世の女の敵・受け様の敵って感じでした。当て馬の中学生の方が何百倍もイイ子で、序盤でその14歳の子に自分のセックスシーンを見られて泣いちゃう28歳受けがすごく可哀想で可愛くて萌えました。
でも読んでいくうちに攻めの境遇に同情すべき点もあり彼は完全に人間性が壊れていて、受けの方も長年攻めに傷つけられすぎて壊れかけていて、二人とも一般人との感情とはかけ離れすぎている病みカップル、ある種狂気の人達だったことがわかりました。
それに比べて当て馬の中学生、開くんは本当にいい子で泣けました。彼は大失恋してしまうわけですが、それを経験してますますいい男になりそうです。彼の健全で見返りを求めない無償の愛に打たれて、ダメ大人二人も少しは成長できたような気がします。開くんには将来もっと素敵な恋人ができると思います。男の(笑)
高遠さんのペンネームが春加だった頃の作品ですが、胸にズーンとくる作品でした。そして当社比ですが・・とあとがきにあった通り、なかなかにエロが多くねちっこかった所も良かったです。
作品中に漂う閉塞感に息苦しくなりました。
弓弦と計司の愛は閉鎖的で二人だけの世界で完結しています。
そんな二人の姿は健やかな世界の象徴である開には、
歪で不健康で見える反面……どこか少し憧れる部分もあるんでしょうね。
読者は開の気持ちにシンクロしやすいのではないかと思いました。
私はかなり開目線で読んだので、メインカップルの行く末が心配です。
十人十色とはよく言ったもので、人の数だけ幸せや愛のかたちがあると思った作品でした。
計司[攻]と弓弦[受]の2人の前に、突然現れた中学生の少年開。
行きがかり上、弓弦は開を夏休み中のみ預かる事となり、時折その開の視点も交えて話が展開していきます。
開は母子家庭で育ってはいるも、愛情を与えられ真っ直ぐな性格の至極真っ当な少年なんですね。
その開から見ると、弓弦は優しくまともなちゃんとした大人だけれど、計司はだらしなく最低で冷たい男。
ある時、開は計司と弓弦とのセックスシーンを目撃してしまい、それを切っ掛けに年上の社会人である弓弦を本気で好きになる。
そのてらいのない真っ直ぐな恋愛がいいです、叶わない恋と分かっているけれどそれでも読み手の心をうつ何かがある。
弓弦は開の愛情は受け入れられないけれど、それでも優しい。
この話は最初はただ計司が嫌なヤツで、それに尽くす弓弦っていう図から始まるんだけど、読進めていく内にそれが片方ではなくお互いに依存しあっているだけなんだってのが分かってくる。
彼等が行き着くのは、居るのは2人しかいない世界。
恋はしていない、けれど愛している。
そして言葉の無い告白。
歪んだ、けれど幸せな愛情の姿と、真っ当な実に真っ当な開の愛情が対極的。
余談ですが作中で登場した香水を嗅いでみましたー。
かなりビターなオレンジの香り。
透明で綺麗だけど、分厚いレンズで覗いたように歪んで見えた二人の世界でした。
特筆すべきは計司の最低男ぶりでしょうか。
社長の肩書きながらろくに仕事をしてる様子もない、家事も弓弦に丸なげ、弓弦と関係を結びながら平行して常に複数の女性とも適当に付き合う。モラルもなく、優しさもなく、身勝手で酷薄、いいのは顔だけというどうしようもなさ。
中学時代から続いているという弓弦に対しても酷い扱い。所有物と言い切りまさにセックスフレンド以下なんです。それでもずっと傍にいて計司を愛してきた弓弦。
この二人の元に、計司の息子だと名乗る少年開が訪れた所から物語が動きだします。
どうしてあんな最低な男を愛しているのか?と、開は弓弦に問います。
読者の代弁者のような開を通して少しずつ弓弦から語られる現在過去、計司という人間、弓弦の思い。
セックスフレンド以下に見えた二人の関係が、違う形をもって浮かび上がってくるのです。
この作品のポイントは、弓弦と計司の関係に萌えられるかどうかという点でしょうか。
残念ながら私はどうも萌えきれませんでしたが、この窒息しそうなほどの閉じた関係性はとても好きです。
あともう少し、闇をもつ計司とどこか壊れたように見える弓弦をもっと掘り下げて書いてあると、二人の絆にもっと説得力があったように感じたのです。