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このツメの甘さが、鹿住さんの小説の特徴だなァと思いながら本を閉じました。
前にレビューしてる方の言う通りで、いろんな部分でツメが甘いです。
ただ、楽しめなかったかというと、私は楽しく読みました。
するする読みやすい文章に、まっすぐ王道で展開していくストーリー。
同じプロットでもねちこく書けば、もっと読ませることができるんじゃないかなとかも思うんですが、反面、鹿住さんにはそれを期待してなかったりもする。
いいのか悪いのかは別にして、鹿住さんの小説はこういうもんだと思って読んでて、がっくり感がないんですよね。
姉の婚約者に恋しちゃった高校生のお話です。
攻めよりも存在感のあったヘンタイ兄貴がけっこう好きでしたw
これが発売された当初、私はまだ若かったと言うことがよく分かる。
自分の将来のその先を当時ちゃんと考えていたつもりだったけど、現実問題として「こうなるかもしれないから、こうしよう」というリスクケアも考え付かない子供だったということがよく分かる。
当時、私はこの作品に結構ハマッた。
姉の婚約者を好きになる主人公・一馬。
一馬の家は大手製菓会社の麻城製菓。
妾の子だからと家で冷遇されているが、姉の婚約者の椎名が優しくしてくれて気持ちがどんどん傾いていく。
しかし椎名は結婚式の当日にドタキャンされてしまい、その原因も椎名にあるとされ左遷されて会社を辞めざるを得なくされてしまう。
椎名は、一馬の兄の俊一に再就職も邪魔されうまくいかない。
そんな折、麻城製菓のライバル会社の岩本が椎名のことをすごく評価していることを伝えられ、連絡が取れなくなっている椎名にライバル会社の岩本が会いたがっていることを伝える。
そして椎名はライバル会社で精力的に仕事をして、評価を上げる。
椎名が仕事を忙しくしているころ、一馬は兄の毎夜仕掛けてくる性的虐待に悩んでいた。
最初は寝顔を見られるだけだったのが徐々にキスをされたり陰部をいじられたりとエスカレートしていき、辛くなり椎名に会いに行く。
ライバル会社に行くと受付嬢の早とちりで、岩本が出てくる。
岩本は椎名の事情を知った上で、椎名は天才だ、こんな天才を冷遇して手放した麻城製菓は馬鹿だと腹を立てて、もうライバルの麻城製菓の御曹司の一馬に椎名には関わらないで欲しいと言う。
もっともの事を突きつけられ了承する一馬。
私、こういう大変な状況にある受けが攻めのために身を引く展開が大好きで、ここまで読んで「ああ、だから今までずっと手放さずにいたんだな」と改めて実感したのです。
終盤は一気に話が展開していきます。
俊一にとうとう自分の将来も乗っ取られ、身体もすべて奪われそうになる一馬。
渾身の力を振り絞り、俊一と戦います。
そして裸足だということも寝巻きだということも気づかぬくらいに、着の身着のままで大通りまで走り、タクシーを捉まえて椎名の家に駆け込みます。
そして椎名に今までのことを話します。
俊一も一馬のことを追いかけ、椎名の家にいることを掴み、三人は椎名の家で対峙します。
そして一馬は「もう家には帰らない」と言い、椎名は一馬の身に起こったことを知って「こんな家には帰せない」と言い、俊一は色々言われ「勝手にしろ」と怒り、最後は「椎名さんがいればいい」と一馬が言って、椎名と一緒に生きていくとまだ高校生の一馬が心に誓って話は収束でした。
続編はありません。
この置いてきぼり感、どうしましょうか。
いやいや、高校生がが自分の気持ちのままに家を出て行って恋人と一緒に住むとか、社会はそれを許しませんよ。学費は椎名が出すとか言ってるし。岩本さんの言葉、忘れましたか?状態だし。
当時の私は、素敵なロミジュリ展開だわ!なんて目をキラキラさせてましたが、今読むとこの後の二人には波乱しか待ってないと、気になってしかたないところに時代を感じます。
続編でも出していただいて、もうちょっと道筋を見たい気分ですね。
姉の婚約者を好きになってしまう、という歳の差ものではたま~に見かける設定の作品です。
製菓会社の社長の息子で高校生の一馬は愛人の子供で、家族からはあまりよく思われておらず、肩身の狭い思いをしています。
そんなときに優しくしてくれた姉の婚約者・椎名に恋をして、姉と結婚なんてしないでほしいと願うように。
短編が2作入っていて、前半は結ばれるまでのお話。後半はその後のお話ですが、後編がいきなり怒涛の展開です。
結局、姉と椎名の婚約は破談になり、椎名は会社もやめて引っ越して行方知れず。一馬は荷物をまとめてずっと居場所のなかった家を出て椎名を探してまわるという、何だかぐっときてしまう展開でした。
でも1話が短かったからか、非常にくっつくがあっさりで、当然予想できたものの、こんなにいっぺんに上手く行くの?という感じでした。
攻めの椎名というキャラクターが私には最後までちょっとピンとこないキャラでした。
最初は優しいお兄さん、かと思えば、姉と別れたあとからは本性を出すのですが、椎名の友人に言わせれば「意外と強かで汚いところもある」という。けれどその本性というのも一体どれほどかと気になるものの特に何もなく、後半は一馬にあれこれ気を使う「お手本のような好青年」というキャラクターでした。
個性というか、この人特有の魅力というものがあまり感じられませんでした。
後半は一馬が兄から性的虐待を受け、椎名に相談しようか迷うというもの。仲があまりよくなさそうではあったけど、前半何もなかったのに後半でいきなり兄が手を出してくるという展開に驚きでした。
そもそもこの家族、一馬は居心地が悪そうですが、いじめられているわけではないし、無視されているわけでもないし、父と兄はそれなりに一馬を大事にしているように思います。
一馬もちょっと卑屈になりすぎている気がして、もっと堂々と、胸をはればいいんじゃと思うシーンもたくさん。
一度きちんと話し合ったらどうかと思うのですが、最後は結局一馬は家を飛び出してしまいます。
最後がえ、ここで終わるの?という終わり方で少しもやっとしたものが残りました。
ネタバレになりますが、「家にもう戻らない」という一馬と「勝手にしろ」という兄。
お父さんに何も言わずに、それで終わっていいの?と思ったし、お兄さんの思いもこんなバッサリ、和解せずに終わっていいのかもやもやしました。
それと、一馬の通う学校は学費・寄付金が高く、一馬を養うと言ってくれてる椎名でも払えるかどうか。
学校を辞めて働くという一馬と高校は出ておけという椎名のやりとりも結局「これからはずっと一緒だね」という何だかうやむやなまま終わってしまっていて、最後がかなり駆け足になってしまっていました。
前半が好みだっただけに、後半の怒涛の展開と、それを上手く収束させていない事が残念でした。
でも一馬というキャラクターが典型的な「不憫だけど健気に頑張る少年」という体で好みだったのと、歳の差ものが好きなのでそれなりに楽しめたと思います。
男を作って出て行った後妻(しかも、父親の元愛人)の子ということで
家族から冷遇されている大手製菓会社社長令息の一真が、
姉の婚約者になったエリート社員・椎名に優しくされ、
どんどん惹かれていくという話。
どうにも読後感がスッキリせず微妙な感じでした。
物語の後半で明かされる椎名が姉との結婚を決めた理由というのが、
『一真を手に入れたかったから』というものだったのですが
お姉ちゃんが他の男と駆け落ちしなかったら、結婚してたんだよね?
家庭内不倫でもする気だったの?
…という部分がどうしてもひっかかってしまい、ひいてしまいました。
結婚やめたのが、椎名の意思なら良かったんですけどねぇ…。
同時収録作品の『しあわせキャンディ』では、
兄から性的虐待を受けそうになった一真が、
椎名の元へ転がりこむまでが描かれています。
こちらも、逃げ出した勢いのままに、未成年の高校生が親の承諾も無く
身の振り方を決めちゃったあたりに、現実味を感じられなかった。
単純に、『ハッピーエンドで良かったねー。』という気分には
とてもじゃないけど、なれなかったです。
それにしても、兄と姉の強烈にイヤなキャラが印象に残る作品でした。