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haduki monogatari
いやぁ、この話非常に泣けました。
瑠璃の境遇が非常に悲しくて切なくて寂しくて……。
泣けると書きましたが本来シリアスものではないような気がしています。全般を通して物語りは割と軽快に進んでいて、瑠璃のことを女と間違って惚れてしまう田舎侍の女池龍之進(めいけたつのしん)の朴訥とした感じが作中で良い感じに笑いを誘うので、決してしんみりと悲しい雰囲気は無く、むしろどちらかと言えば笑える話であるようにも思えるのですが、私には、ただただ泣けて泣けて仕方がありませんでした。
瑠璃は育ての親の元から一度お城に小姓として召抱えられていたのですが、その類まれなる美貌ゆえに上様の寵愛を受け過ぎて大奥に住む女達の嫉妬の矢面に立たされ陥れられて、男子禁制の大奥に足を踏み入れてしまい、一度は死罪を申し立てられて追放されるという辛い過去を背負い素性を隠して生活せねばならない身の上でした。
なのに、そんな自分の身の上を嘆いたり悲観したりすることなく健気に生きる瑠璃がいじらしくて泣けて来るのです。
そんな瑠璃の元に現れた一人の田舎侍、龍之進。最初瑠璃は自分が龍之進に、女に間違われていた事などもあって、彼の事を軽く袖にして取り合わなかったりするのですが、少しずつその人となりに触れるうちに心が動いていきます。
なのに自分の身の上のこともあって龍之進やその家族達にも迷惑かけることになるからと押し留めようとするのですよ、それがまたなんともいじらしくて…。
このお話には沢山の愛が溢れていると思います。作者様のキャラたちへの愛、進之助の瑠璃への愛、そして親子の愛、瑠璃をめぐる人々の愛。その愛情が優しくて暖かくて胸に沁みます。
学や武芸には秀でていなくても、鷹揚で懐が深くて心根がとびっきり優しい龍之進。
彼の優しさや暖かさ飾りっけの無さが瑠璃の凝っていた心の氷を溶かしたのでしょうね。
作中に出てくる上様も、タダの自分勝手なわがまま君主なのかと思っていたらどうも違うようで、なんだよ上様も結構いい人なんじゃないの…なんてところも出てきてホッとさせられたり。
その後、あとがきでたけうちさんがご自信の身の上を語られていて、もしかすると龍之進は作者様にとって幼い頃亡くなったと言う血の繋がらぬ自分を引き取って育ててくれた父親のイメージなのかも…なんて事も思えて来て、そんな風にして改めて読み返すとまた色々なことを考えて、また泣けてきて(笑)
本当の親の温もりも知らず、今までずっと誰かに甘えると言う事をしてこなかったであろう瑠璃がやっと見つけた幸せ。この先の二人の人生は常に平坦だとは言えないのかもしれないけれど、瑠璃はこれからは存分に龍之進に甘えればいいと思う。龍之進はきっとどんな瑠璃でも受け止めてくれる人だから。