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初恋の相手は、やっぱり特別で……。
shinyu ni dekiaisareteimasu
イベント会社に勤める里谷啓(受け)は南の島のチャペルの結婚式で幸せの絶頂にいました。が、式の最中、同僚の横山が攫いにやってきて花嫁は手に手を取って逃げてしまいました。
婚約者の美沙も略奪者も同僚で(席も隣と斜め)、啓は会社で好奇の目で見られ、親戚連中には謝罪してまわり憔悴しきってしまいます。上司や先輩はそんな啓を心配し、しばらく休暇を取るように取り計らってくれます。
啓はその休暇を利用して金沢の実家に帰ることにしました。実家では親戚や近所の人の心無い声も聞こえますが家族はみな啓を心配してくれます。そんな中、初恋の相手で高校卒業と同時に絶交した東江(攻め)に再会します。東江は啓が婚約者に逃げられたことを知らないようで、絶交したことも忘れたように昔のままに接してくれます。好奇な視線や同情や気を使われることに疲れ切っていた啓にはそれが心地よく、東江が面倒見ている双子の甥っ子の無邪気な様子も加わって啓は癒されていきます。
東江は老舗和菓子屋の若社長です。推薦で美術大学に入り二人で上京する約束をしていましたが、直前に両親が事故死したことで跡継ぎになる時期が早まってしまい、啓との約束を破ってしまいます。怒った啓は絶交を宣言し一人で上京してしまいます。祖父と父親が健在だったので後を継ぐのに余裕があったはずが、すぐに後を継がなければならなくなったことを本人もとても悩んだことだろうし、とても悔しかったことだろうと思われます。家を継がなければという東江の気持ちを慮ることができない啓も悪かった思いますが、上京当日まで言わなかった東江にも非はあると思いました。上京したかったからぎりぎりまで言いたくなかったんじゃないかと推察しますが、上京するその日に言われる啓の気持ちを考えたことがあったのかしらと思います。お互い子どもだったから、相手のことを思いやれなかった結果だったのでしょう。
傷心の啓が東江に再会し明るさを取り戻してきたころ、東江が実は啓のことを知ってて心配していたということを知り、啓は逆キレしてしまいます。啓が東江から大変な時にそばにいられなくて悪かったと謝罪されてしまい頑張ったとを労わられて、今回のことで凍ってしまった心が溶けた時、初めて泣くことができました。
のっけから啓は花嫁に逃げられてしまいます。政略結婚でもないのに・・・
この二人はあとがきで作者の方も書いておられますが、人としてどうかという人たちでした。映画ではないのですから手と手を取り合って逃げてそれで終わりではないのです。啓はなぜ逃げられたか訳もわからず、あちこちに頭を下げてまわるんですよ。二人は関係者を傷つけた上、後処理も全て押し付けて反省すらしない。それなのに、親や友人にそっぽを向かれ自分たちは幸せじゃないのに被害者である啓が自分たちより先に立ち直って笑ってるなんておかしいという彼らは最低最悪です。その上、啓を裏切った理由は私には信じられない理由でした。啓はこんな人と一緒にならなくて良かったよと思います。この二人の言い分には読んでるこっちが怒りに震えて、地獄に堕ちろと思いました。最後には反省していたようですが、こんな自分勝手な二人が一緒になって幸せになれる未来はあるのかしら。
それに引き換え、東江の甥っ子の双子ちゃんは天使でした。東江に本心を吐露し悲しみを洗い流しているときに、自分たちの大好きなたくさんのおもちゃやお菓子をそっと用意して啓を心配する双子ちゃんのやさしさに何回読んでも泣いてしまいます。
その後、仕事に復帰した啓は新しい企画が地元での街コンだった為、東江に協力を仰ぎ再び交流を始めます。
元婚約者との再会で、東江の気持ちを知り有頂天になるのですが、啓が東江の店に対する想いを考えすぎてすれ違ってしまいます。この時も、双子ちゃんは東江と啓のためにすごい行動力で頑張ってくれました。
この3人がいたから、啓は立ち直ることができ2人の恋を実らせることができたんだと思いました。
東京と金沢という長距離恋愛だけど、この二人なら心配しなくても大丈夫なんじゃないかなと思います。雨降って字固まるで、跡継ぎ絡みで一度ならず二度までも揉めた結果一緒にいるって決めたんですから。ただ、東江はいい男なので、しょっちゅう嫉妬することになるんじゃないかしら。
いずれは一緒に住めるようになるといいですね。
そして、コウキ。さんのイラストは可愛らしくて、主役の二人もさることながら、双子ちゃんが本当にふわふわとかわいくて癒されました。
絡みは一回だけで少ないですし、啓が辛い描写も多くて、甘々というわけではないです。ただ、2人でいるときの東江は啓に対して溺愛している感満載でした。2人だけの描写がもっとたくさんあったらタイトル通りの「溺愛されています」だったと思います。
結婚式の途中で花嫁を略奪され、精神状態がどん底の受け。休暇を取って地元へ帰ってきたものの、周りは腫れ物に触る扱いで心が休まらない。そんなとき、元親友である攻めに再会する。自分の事情を知らないらしい攻めや、その甥っ子の双子たちと過ごすうちに心の傷も癒えていくが…。
石川県金沢市が舞台のご当地BLです。
受けにとって攻めは、かつて一緒に上京しようと約束したものの攻めの家庭の事情で叶わず、絶交したきり会っていなかった相手です。ほのかな初恋の相手でもあります。
攻めは伝統ある老舗和菓子屋の職人であり若社長。イケメン長身ときどき和服のスパダリで、妹の双子の息子たちの面倒をよく見ています。高校卒業前に事故で両親を亡くし、大黒柱を失った和菓子屋を立て直した苦労人。
そんな2人が、受けのどん底状態の時に再会し、絶交した過去やその時の気持ちを口に出せないまま穏やかに再び交流を持ち…という話なのですが、とにかく受けが気の毒すぎて気分が落ちます。逃げた新婦も、新婦を攫って逃げた同僚も最低すぎる。逃げた時点で十分ひとでなしなのに、あとで出てきたときのひどさにめまいがしました。受け攻めのキャラに最初はあまり萌えられなかった(ともに上京する約束を反故にした攻めにも、のっぴきならない事情なのに約束を反故にしたことを許さなかった受けにも)けれど、この元新婦&元同僚からかばってくれたというだけで攻めに対する評価が上がったくらいです。
全体的には胸くそ悪い部分を受け攻めの緊張感漂うほのぼの、攻めの甥っ子たちに緩和してもらうようなイメージでした。ちみっこたちはコウキ。さんのイラストもあって可愛かったです。でも幼稚園児のセリフとしては違和感があったかな。
あとちみっこたちの母である攻め妹の存在感がなさすぎて、こんなに幼な子を放置する母っている? と思っちゃいました。