ピピン
和泉桂さんと木原音瀬さんの、商業作品の続編や番外の同人誌の存在は、以前より知っていました。が、まさかこのお二人が、合同で「ユーリ!!! on ICE」の二次創作同人誌を出そうとは! 想像のまったく外です。しかもオンリーイベント合わせで!? 熱意のほどが知れるというものです。
早速購入し、拝読いたしました。
この同人誌のカップリングは2編両方とも、勇利×ヴィクトルです。
これは、私の想定とは逆カップリングになりますが、私は好きな作家さんならかまわず読むので、ま、いいことにしましょう。
作品の共通テーマは、たぶん「神様」。言わずと知れたフィギュアスケート界のリビングレジェンド・ヴィクトルのことです。
<以下、ネタバレがあります。ご注意ください>
○木原音瀬さん「神さまとエロス」
読了後の第一の感想は、「続きはっ!?」でした。
また、読み進むうち「これはこれは…!」と思いました。フィギュアスケート界の背景、技の種類・描写の書き込みがすごいのです。私は、フィギュアスケートは全然詳しくないので、出てくる用語のほとんどがわからず、ニュアンスで読みました。
木原さんは、相当フィギュアスケートに詳しい? いや大好きなんじゃ…?
あとがきを読むと、果たしてそうであるらしいです。
物語は、アニメ第1話に出てくる世界選手権から、勇利のフリープログラムを作っている最中のおそらく長谷津での夏まで。ヴィクトル視点です。
世界選手権を5連覇したものの、選手としての行き詰まりを感じて、突破口が見いだせない、ヴィクトル。彼は、グランプリファイナルのバンケットで、日本人選手・勝生勇利が酒に酔っていきなり「俺のコーチになって!」と懇願してきたとき、ワッと胸が沸き立つ思いがした。以来、ずっと勇利からの正式オファーを待っている。しかし、その連絡は一向に来ない。春になり、ヴィクトルは、リンクメイトから、勇利が自分の先シーズンのフリープログラムを滑って動画サイトにアップしていると知らされて……
勇利からの正式オファーを待ち続け、焦れるヴィクトル。
勇利の動画の存在を知ったものの、見るに見られず、1昼夜悶々としたあげく、ようやく見るヴィクトル。
可愛い…! そして、かわいそうです。
勇利よ、君はいかにヴィクトルを振り回したことか!
ヴィクトルが、勇利をジュニア時代から着目していたというのは、なかなか興味深い説ですね。
物語は、ヴィクトルのいたずらめいたキスに、勇利が思わぬ反撃で攻勢に転じて~…… と終わる。えっ? 終わる。終わる。まさかここで終わり!?
「続きは!? この後、2人の関係はどうなるの? どう深まっていくの? 続編カモン!!!」な気持ち。
木原さん、お待ちしています。
○和泉桂さん「神様のいない森」
勝生勇利の心の中には、思索の森がある。彼はときどきその森にひょいと迷い込む。思索の森の奥深くに棲んでいる神様、それはヴィクトル・ニキフォルフだ。彼が勇利のコーチをするようになって、シュールな日常が始まった……
冒頭で、「たぶん、勇利の思索の森の神様・ヴィクトルが、森から出てくるのだろうな」と想像したのですが、お楽しみは過程と着地点です。
こちらの物語は、ヴィクトルが勇利のコーチをやるようになった春の終わりから、グランプリファイナルのバンケットの後まで。お話は、原作アニメのシーンの行間を縫うように進みます。
勇利とヴィクトルの両視点です。
アニメを全話見た視聴者からすると、実はこの二人のすれ違いっぷりは、最初のボタンの掛け違いからずっと始まっていると知れているのですが。このお話でも、本人たちはすれ違いに気づいていません。
勇利はヴィクトルを「常に自分をびっくりさせてくれる人」だと思っているし、ヴィクトルは勇利を「サプライズの塊」と心の内で評します。小説だと、同じ頁内に文字で対で記されて、笑いを誘えるのがいいなと思います。
勇利が、気をとられていた自分の中の思索の森についてかたくなに語ろうとせず、ヴィクトルと
「言って」
「嫌です」
「言いなさい」
「嫌だ」…~
と、言い争いをするところが好きです。とてもらしい感じ。そして、仲直りが、目玉焼きの食べ方で!
こちらのお話も…、次を期待せずにはいられない含みを持たせた終わり方。ぜひ続きをお願いいたします!
二次創作の、2人の作者の合同誌とは、おもしろいものだなと思いました。
同じ勇利×ヴィクトルの物語2編なのですが、まるで4人の話を読んでいるようでした。
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