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うえださんの初期の作品です。うえださんの初期作は『出すたびにカラーが違う』と言ってもいいくらい、かなり作風の幅が広いのですが、どっちに振れても好きな作品が多いです(もちろん『これはダメ!』もあります)。
これは、一種の王道には違いないし、もうこの上なく地味なんですが、それでもすごく好きなんです。しみじみいいな~と思います。
亡くなった姉の夫(義兄)・敦広と同居している拓己(受)。もともと、敦広と姉との仲を取り持つ形になったのも拓己なんですが、最初に敦広を好きになったのは自分だったのに、敦広が選んだのは姉・美法だったんですね。もちろん、敦広は郁己の気持ちなんて気づいてもいなかったんですが。
その美法が、敦広と結婚し子供を身籠ったものの、事故で亡くなってしまい、2人はそのまま同居を続けます。4年経って、高校生だった郁巳が大学生になり・・・
郁己の気持ちを知った敦広の葛藤は、ホントに無理ないと思うし理解もできます。今までずっと家族だったんですから。どうしても郁己には妻であり姉である美法の影が付き纏うというのも当然でしょう。
2人の気持ちに温度差(というか『名称』の違い)が歴然とあるんですが、郁己の想いが家族に対するものではなく『恋愛感情』だと知ってからも、敦広は自分の中の固定観念とでも言うべきものを、なかなか乗り越えられないんです。
読んでて焦れったいのは確かですが、でも簡単に答えが出る問題じゃないのはよくわかるので、不思議なくらい苛立ちはないですね。
イヤもう、これ以上ないくらいの気持ちのすれ違いで、焦れ焦れのストーリーなんですが、まったくうっとうしくないんです(私は)。ああ、こういうのを『切ない』っていうんだな・・・と読み返すたびに思ってしまう。
かなり重いものも含んだ、真摯なラブストーリーでした。うえださんは、こういうしっとりした繊細なものを書かせたらホントに上手いと思うんですよ。
丸ごと1冊表題作です。あとがきの後に8ページのSSがあります。
拓己と敦広、両方の目線で進んでいくので心情が分かりやすいです。
敦広(攻め)は、妻の事故死後も、妻の弟・拓己(受け)と同居を続けて4年。拓己は独り立ちできる21歳となり、いつまでもこのままではいられないと感じていた頃、近所の家から敦広に見合いの話が来ます。それに焦れた拓己は好きだと告白します。敦広は拒絶はしないものの、応えることもできません。ギクシャクした一ヶ月を過ごした後、拓己からセックスをしようと敦広は押し倒されて…。
この作者様の作品は、エロ充実という印象があったのですが、この作品はエッチは1回しかありませんし、お互い男同士は初めてということで無茶もありません。はっきり思いを通じさせていないので、エロより切なさが勝る印象でした。
このセックスを最後に思いを吹っ切ろうとした拓己。一方、拓己への思いを自覚した敦広。拓己を探しながら7年もの思いをひしひしと感じる敦広が切なかったです。
「約束」は最後に出てきます。拓己から敦広へ。「絶対俺より先に死なないで」愛する人を持つ誰もが願う、不変の願い事。じんとしました。