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amakute junsui sukoshi akutou
2017年刊。
レーターさん買いで購入したものの、雪代さんは過去に読んだ作品2冊が合わず、どうも相性がよろしくない予感の作家さんだったのでちょっと心配した。
その過去作品がどう合わなかったかと言うと、どうも攻めが貴族のような残酷さを持ち併せているのに、終盤では都合よく揉み消されてしまう感じにもやっとしたんだよね。
ちなみにこの話は紙本で読んで、あとがきにチラリと書かれている電子書籍限定おまけも気になったのでそちらも購入したが、二人が具体的にくっついたエピソードとしては少し押しが弱かった気がする。
ただ、親の愛情に恵まれなかった董莉(とうり)の心の癒しが垣間見えてホロリときた。
最初は、過去に何度も同性に襲われやすいせいでトラウマを拗らせているはずの大学院生・祐一が、何故奔放な年下モデルの董莉に惚れて身体の関係まで持てるんだ?という矛盾に引っ掛かった。
祐一は流されやすい性格だと思うものの、この二人がどうやって恋人同士として進展していったのかはやっぱり気になる。
董莉が欲しいものを超人気ブランド限定品の香水undoと勘違いしたのはまぁともかく、クリスマスシーズンに四日間も列に並んで手に入れたなんて有り得ない描写には驚いたけれどね。
しかし、その後に上手く意思疎通できて親密な雰囲気が漂っていたので、良しと言えるかな。
精神的な縛りを解きほぐす意味合いのエッチシーンは良かった。
後半では祐一のトラウマの掘り起こしとなる展開で、重い過去であるレイプの記憶の克服に切り込んだとはある意味大胆だな、感じた。
それにしても、かつての祐一の友人の空回りぶりが痛々しい。
祐一が元友人とどう関わっていくかの心境については、彼が専攻している心理学方面で理屈をこねるよりも、率直な気持ちで結論を出して大いに結構じゃぁないの?、ってのが素人(自分)なりの感想だったりする。
祐一が董莉を欲するならば、そっちへ導かれても全然構わないじゃないの。
今回は一部微妙じゃね?って部分もあったけれど、結構攻めが受けを溺愛している系の話だった。
まぁひと匙程度の苦味はあるかも、だが。
この作家さんは自分には合わないんじゃ…って先入観にとらわれずに読んでみて良かった。
昔から男性から性的な被害を受けてきた受の祐一と、モデルという華やかな世界に生きながらも過去は暗く愛情に飢えた攻の董莉のお話。既に付き合っている状態からの物語のスタートでしたが、甘いけど切なくて、私はとても好きなお話でした。
一冊の中に2話入っていて、両話ともSMプレイ…といっても痛いのではなく、縛って目隠ししたり放置だったりの精神的なものを含んでます。それも、トラウマ持ちの祐一の頑なに閉じた心を裸にするための行為なので、もう雰囲気が甘くて、優しくて、素敵なんです。祐一の身も蓋もなく求める場面が可愛い。
祐一視点なので祐一が薫莉に助けられている描写が多いのですが、薫莉も祐一にかなり救われてるんだろうな。お互いに、少しずつ危うい雰囲気が好きでした。
薫莉のスキャンダルを目にして不安になった祐一が、薫莉に離れて欲しくなくて色々頑張るundo。
トラウマの原因と戦う、甘くて純真、少し悪党。どちらも少しズレた健気な祐一と、無邪気でヤンデレな董莉の、少し切なくて甘い話が楽しめます。
本格的なSMが好きな人には物足りないかもしれませんが、好きな人は是非。
雪代作品に、高星さんの挿絵というのは、個人的にかなり好き。
ということで読んでみたんですが、正直中度半端な読後感だったと思います。
◇
人気モデル・薫莉×心理学専攻大学院生・真中。
話の最初から二人は同居しており、何故二人が惹かれ合ったのか?は
今ひとつよく分からないまま話が進む。
その生い立ちの特異さから、並外れて奔放な薫莉。
一方の真中は、小さな頃から同性に狙われ、性的なトラウマを持つ。
前編に当たる「undo」は、そのタイトルがキーワードとなる話。
これは、不思議な雰囲気のある甘い放置プレイ物で、
一緒に並んだ高校生の存在の中途半端さに肩すかしを喰らうが
全体としては悪くはなかった。
しかし、後半雰囲気が変わるところが、個人的には頂けなかった。
テーマ的にもカラーも、1冊の本としてのまとまりに欠けるのも残念だし
二人それぞれが暗い闇を抱えているのは前半から分かっていたことだが、
後半の真中のトラウマの原因の一つになったかつての親友を巡る下りは
読んでいて疲れたし、オチとも言える薫莉のダークさが
綺麗に浮かび上がってこないのは、なんとも残念だった。
評価は、前半の「undo」だけならば、萌〜萌×2だが、
後半で失速、全体としてのまとまりの悪さも勘案して「中立」です。
◇
余談ですが、岩井俊二監督の『アンドゥー』という映画がある。
縛ることがテーマになった不思議なラブストーリー。
小さな頃からなぜか男にいたずらされやすい大学院生の受けと、世界的なモデルである攻めのカップリングです。
もうすでに付き合っている関係で、しょっぱなからエロさではかなり飛ばしています。
ヤンデレ気味の攻めとツンデレな受けで、SM的なプレイも多々あり。
受けの視点のお話です。
受けは前述の通り同性からの性犯罪の対象になりやすかった過去があります。高校の時には親友に暴力的に犯され、そのPTSDと今でも戦っています。
トラウマで自棄的だったのが、攻めと出会い、優しくされるようになって落ち着いてきたという状態。
攻めは世界的なモデルなのですが、なぜかずっと受けに執着している人。どう見ても溺愛なのに、受けからはイマイチ愛情を信じられていない気の毒さもあります。
2つの話が入っていて、一つは攻めの浮気疑惑のお話から受けへのお仕置きSMルート、もう一つは受けのトラウマの元になった高校時代の親友が現れ、そこからの受けへのお仕置きSMルートです。どちらにしろお仕置きされるのですが、そのお仕置きによって受けが心を解き放たれるので、まあ言えば攻めによるご奉仕的な意味合いもあるのかな。
プレイの種類は目隠し、拘束、放置、言葉責めという痛みを伴わないものばかりです。あとSMは関係なくローター挿入もあり、エロのバリエーションは豊富でした。
内容はなかなか良かったのですが、受けのキャラクターがかなり独りよがりで、なんでこんな変な突っ走りかたするんだろうと思ってしまう場面が多々ありました。思い込みが激しいというか、優秀な大学院生で研究者なのにそれほどお利口さんに見えなかった。
攻めは基本穏やかで優しいのですが、受けのことが絡むとヤンデレでイッちゃった面が顔を出します。受けを気に入った理由が「モデルである自分を特別視しないこと」だったのがありがちに思えましたが、病んだ溺愛ぶりには萌えました。
それほど本格的な「プレイ」があるわけではないものの、SMが絡むお話は割と稀少なので、お好きな方には楽しめるのではないかと思います。
あらすじ:
平凡な大学院生・祐一(受け)の恋人は、人気モデルの董莉(攻め)。
クリスマス目前、董莉の女性との熱愛が報じられ…
最初に「undo」というクリスマスの話、その後に表題作という構成。
二人は既に恋人同士で、詳しい馴れ初めについては電子特典のSSで読めるようです。
祐一は同性に目をつけられやすく、子どもの頃から様々なセクハラに苦しんできた人物。
董莉とは、院で指導教員から犯されそうになっていたところを助けられたことで知り合ったようです。
大人しい性格ですが、董莉へのクリスマスプレゼントを買うため寒い中外に並んだり、Hで悶えまくったりと、ふと見える天然で大胆な一面に可愛さがあるキャラでした。
董莉は、祐一を「真中さん」と律儀に呼び続けるところが可愛い年下攻め。
しかし好青年キャラとは程遠く、SMプレイを好んだり、祐一の浮気を疑って激高したりと過激な一面も。
そんな董莉の押しの強さも、ネガティブな祐一にとっては救いになっていて、バランスのとれた良いカプだと思います。
前半の短編「undo」の見どころは、放置プレイ。
祐一が縛られ放置されるシーンにはなかなかのエロスを感じました。
暴力や肉体的接触を伴わないSMプレイというのも新鮮で、普段控えめな祐一が焦らされ自分から求めるというところに萌があります。
後半の表題作は、祐一が高校時代の元親友と再会するという内容。
トラウマの元凶を許すことができるか?というテーマで、綺麗事のないリアル寄りの展開に惹きつけられました。
高校時代、親友だと思っていた相手に襲われかけた上、お前が悪いと責任転嫁された祐一。
その相手の謝罪を受け入れますが、彼と何事もなかったかのように友達付き合いをすることにストレスを抱えてしまいます。
そんな祐一に対し、無理に許す必要はない、ときっぱり言ってのける董莉の潔さが印象的。
董莉の言葉を受け、元親友に正直な気持ちを伝えスパッと縁を切った祐一にも驚かされましたが、被害者としての心情を思えば至極尤もだなと納得できました。
全体として楽しく読めましたが、二人の馴れ初めがよく分からないという点でちょっと物足りなさも。
同性に辟易していた祐一が董莉と付き合うようになった経緯については、電子番外編ではなく本編でしっかり書いてほしかったかなと思います。
そこを除けば、甘くてエロくてシリアスなテーマも盛り込まれていて…となかなか読み応えある一冊でした。