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baka to uso to koi
2016年刊。
主人公・彰が交通事故により一時的に記憶喪失になる物語。
事故当時に傍に居た啓太に「お前の恋人だった」と告げられ、記憶の無い彰の大学生活をサポートしてくれるものの…
啓太に対しては”性格の違い”では片付かない合わなさってのは読みだすと直ぐに分かる。
自分が普段読む作品の受けって、攻め以外にも周囲から親しまれているってタイプが圧倒的に多いのだが、啓太のように評判の悪い受けってのには初めて遭遇した。
現に彰の友人・満瑠(みちる)や啓太の元カノ・ひかりは彼の事を嫌っているし。
啓太の言動はどうも底が浅くてすぐに見透かされるものだが、彼の彰が好きって気持ちは確かなものだ。
いざ彰の記憶が戻って真相が明らかになると、読み始めに感じた違和感の正体が分かってすっきりする。
いや、話の展開は意外なもので”すっきり”では片付かないのだけどね。
啓太の本性については、女子から反感を買うタイプだなってのがはっきりと分かる性格だった。
これは偶然にも彰が記憶喪失になった事で成就出来た恋だと言っても過言ではない。
何て皮肉なターニングポイントだろうね。
しかし、啓太が抱えていた罪悪感の正体は正直みっともなく醜いものだが、それを知ったうえで彰が決めた事だからね…
先に挙がっているレビューにもある通り、これは確かに評価に困ってしまう話だな…
普段は甘党な自分からしたらこの話は苦いものだ。
だが、受けの感情の黒さ、先入観抜きで彼をどう思うかって攻めの思考を表現した作品に巡り会えたのは幸運だったと思う。
第8回小説ショコラ新人賞で奨励賞を受賞した作品。
記憶喪失を題材とした大学生モノです。
※ややネタバレあるので、未読の方は閲覧にご注意下さい。
交通事故で記憶喪失になってしまった大学生・彰(攻め)。
同じ2年生で、彼の恋人を名乗る啓太(受け)という男に日々のサポートをしてもらうことに。
明るく懐っこい啓太だが、彰の記憶が戻ることを恐れている様子で……
と、いうような話。
記憶がないまま啓太に惹かれていく彰。
事故に遭うまでの彰と啓太の関係は?
というのが本書の大きな謎。
別の学部の満瑠という友人や、後輩の女生徒など絡んできますが、彰は記憶がないことを啓太以外に打ち明けていないため、なかなか真実が分かりません。
彰と啓太の本当の関係、啓太の気持ちなど、かなり予想のつく、記憶喪失モノとしてはオーソドックスな展開。
しかし、啓太の健気さは丁寧に描写されており、しおりのエピソードなど伏線の張り方も上手いと思います。
記憶を失った彰が、先入観のない状態で啓太と付き合ううち、彼の素直さや可愛さに惹かれていくという流れも納得できるものでした。
ただ、客観的に見ると啓太のやったことはなかなか酷く、ハッピーエンドを手放しで喜べない難点も。
嘘をついて彰を恋人から遠ざけ、その恋人から彰を略奪する形になったわけで、恋人からしたら理不尽すぎる話かと思います。
彰の気持ちが恋人から啓太に移ってしまった以上仕方ないことですが、人生やったもん勝ちみたいな結論に落ち着いてしまったのは残念。
その恋人も恋人で、彰に啓太が接触するのを黙ってみているだけで、自分はほとんど彰に近づかないのはちょっとおかしい気が。
啓太と彰を接近させるため意図的に出番を少なくされているようで、強引さを感じるストーリー展開でした。
腑に落ちないところは色々とありますが、啓太の気持ちを思うと彼の行動に共感できる点もあり、なかなか考えさせられる一冊でした。