迷宮のリコリス
doukyusei
こちらのブックレットは全88ページ。前半は制作スタッフ、メインキャスト(声優)、そして音楽担当の押尾コータローさんへのインタビュー。作品へのこだわりが沢山語られているので、そこに注目して本編を見返すのも楽しかったです。
そしてこれが目当てで購入した描き下ろしの『数センチ』。26ページの短編です。合唱祭を抜け出してキスをした二人のその後のお話…。
以下、ちょこっとネタばれあります。
そのまま帰るという言う草壁の後ろを、戸惑いがちについて行く佐条。二人の距離が足元、視線、手の位置で表現された、少ない台詞と絵だけで魅せる独特の明日美子メソッドで描かれています。チラリチラリと交互にお互いをうかがう目と無口な二人がもどかしくて可愛くて、初恋を追体験しているような気持ちになりました。モノローグがなくても二人の気持ちは手に取るように伝わって、ひとコマひとコマにドキドキします。
遠い数センチがどんどん近づいて最後の数センチが無くなる瞬間の、台詞もモノローグもない見開きのキスシーンにうわぁぁっとなって、手を振りあう二人に心がぽかぽかして、そして最後の佐条のモノローグに思わず「やられた」とつぶやいてしまった。あぁ、素敵だ。この空白にひれ伏したい気分です。
佐条のモノローグは『卒業アルバム』に収録の『もうひとつの』の冒頭ともリンクしているので、こちらと交互に読み返すと、ひときわ楽しむ事ができる甘酸っぱさいっぱいのお話でした。