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久々にいいBLを読んだ、と思いました。
というようりも、「いい小説を読んだ」という感想に近いような気がします。
回りから見たら、不幸な生い立ちである直行が、悠人に出会って、少しずつ変わって行くお話。
不幸って自分がそう思ってなくても、そういうレッテルを貼られることがあって。
大人になったら、あんまり突っ込んだ話をしなくなるから、スルーされることも多いと思うんですけど。
でもやっぱり、回りから言われたこととか、そういうのってどうしても自分の中に残っちゃうので、まったく何にも感じてないってことはないんですよね。
自分自身を不幸だと思ってなくても、常に周囲からのプレッシャー的なものにはさらされるからね、まったく何にも変化を及ぼさないってことはない。
そういうところを上手に書けてた作品だったと思います。
こっからネタバレかもしれません。
作中で、悠人が、もうずっと会ってなかった父親に会うように、直行に悠人が言うシーンがあるんですけど。
そこで、直行がすっごく怒るんですよね。
それって、ある意味、とってもエゴなんですけど、いざ自分が直行の立場に立たされた時に、一番素直な反応なんじゃないかな……って、思いました。
なんていうか……
確かに、自分は不幸だと思っていない、というのは真実で。
それでも、周囲には「不幸な子」という目で見られたりしてて当然で、でも、それを言われるのって、本当、腹が立つ。
こうしたらいいよ、ああしたらいいよって、本当、事情もよく知らない他人のお節介でしかないんですよね。
それを正直に書いてあったのがとってもリアリティがあって、一気にこの小説を好きになりました。
本当、「自分は不幸じゃない」し、「同情してほしいわけじゃない」って言っても、わかってもらえないことって多いですもんね。
要は、自分の矜持の問題なんですけど。
あたたかくて素敵な作品でした。ガッツリラブストーリーでなく、同居や家族というヒューマンドラマ系だと思います。
小学校のときから祖母と2人暮らしの直行の夢は、お嫁さんを貰って素敵な家庭を作ること。けどそこには祖母への恩返しという意味があり、祖母を大事にしてくれるお嫁さんを探しているのですが、これがなかなか上手くいかない。
直行という人間は恋愛に努力をしない、「理想の人」が勝手に現れてくれると思い込んでいるようなタイプです。
几帳面でプライドの高いクールな印象でした。
そこに遠縁の大学生・悠人が居候することになり、2人暮らしだった家ががっらと変わっていくというお話です。
悠人はだらしなく、愛嬌があってちゃっかり者。直行とは正反対のタイプです。でもきっと、祖母からしたらこういう子供のほうがかわいいんだろうなぁ~という感じです。
直行は手のかからない子供だったからか、祖母の悠人に対する態度が自分と違うともやもやしたり・・・おばあちゃん子って可愛いですね。
「はじめて寝た人をずっと大事にしたい」という健気なタイプの悠人と、「祖母を大事にしてくれるお嫁さん」を探してはこれもちがうあれもちがうという直行は自分の都合を考えてばかりで、2人の恋愛感は大きく違う気がします。
直行が悠人に触れて、考え方、自分が今まで親に捨てられたという負い目を持っていたこと、自分の家庭像が自分やお嫁さんに基づいていないことなど改めて考えさせられます。
「家族」というものをテーマにした作品が好きなので、これは丁寧に書かれた良作だと思いました。
ただ、BLとして読むと私はどうも「やんちゃでだらしない居候」の悠人に対して、急に「抱きたい」という感情が直行に芽生えたのが唐突な気がしました。
これが絶対「恋愛もの」でないと成立しないストーリーなのかといわれたら違う気もします。
このまま3人で家族として暮らしてもお話自体は破綻しないものなので「ここで恋愛ものになる」このお話に「家族愛」ではなく、「欲情」や「情愛」が絶対必要という説得力が薄い気がしました。
せめて最初からちょっとずつでも、互いにどきっとするようなエピソードなんかを練りこんであったら…と思います。
読んでいて暖かく幸せな気持ちになるお話でした。
ストーリーは4、BLとしての萌えは3くらい、という評価です。