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haitoku no chigiri
久我有加先生の幕末・明治初期の時代物。場所は京都で受けの睦月も関西弁の受けです。スケールが大きいというか、BL以外の部分の話もすごいです。大河ドラマとか映画で見てみたいくらい。最後に書いてあった大量の参考文献。先生のきっちりとしたこういう姿勢大好きです。BLだからと言って決して軽んじていない。だから物語にもリアリティが出る。最後の方には実在した歴史的人物がセリフありで登場しています。
新政府の政府要人の暗殺を企てる攻めの顕世と睦月達一味。そんな大それた事をしでかして、ちゃんとBLハッピーエンドを迎えられるの?とそっちの面でもハラハラとしながら読み進めました。起承転結がしっかりしていてエロもきっちり楽しめて素晴らしいストーリー。
睦月の人生の節目には必ず雪が降るという設定もきっちりと活かされていてその演出がドラマティックなラストシーンは感動しました。もう本当に映画みたい。
途中で睦月の支えになってくれる麻吉が良いキャラクターです。不幸な目に遭っていてもいつも明るさを失わない素敵な人です。亡くなる人も出てくるしシリアスな展開ですがストーリーに読み応えがあって最後まで楽しめました。
年貢の厳しさから困窮した村を救いたくて、命をかけて政府に直訴すべく京都に旅立った睦月(受け)。たどり着いた京都で早々に諍いに巻き込まれた睦月は、腕っぷしを見込まれて反政府組織にスカウトされ、幾名かの志士と行動を共にすることになる。事を起こすまで、その組織の一員である美貌の青年・顕世(攻め)の家で同居することになったが、一緒に暮らす日々で睦月はどんどん顕世に惹かれていき…。
時代は幕末の、時代ものBLです。
受けは、とっさに素性を伏せようと偽名を名乗ってしまい、仲間や攻めからは睦月という偽名で呼ばれています。そのため、素直で心根の優しい受けは、仲間を騙しているという負い目を持っています。
攻めは、どことなく飄々とした、剣術の腕が凄まじい人です。政府の要人を暗殺しようとしているとは思えない、穏やかで公正な人です。
この2人の生活が、すごく穏やかでほのぼのしていて、読んでいてほっこりするような感じです。暗殺決行の日までのわずかな日々を過ごすあいだ、京都の地理を覚えるという名目で散歩したり、いろんなことを話したり、受けが剣術の稽古をつけてもらったりします。基本受けの視点の話なので、受けが攻めに惹かれていき、意識するようになるのは描写されていますが、詳しく書かれていないはずの、攻めが受けに惹かれた要素もとてもよくわかる。攻めに食事をおごってもらって、村の人にも食べさせてあげたいなーと大事に大事にご飯を食べる姿とか、反政府組織に与しているのに心優しく、ほわほわした雰囲気とか。
どう考えてもうまくいきっこない要人暗殺決行までの、刹那的な平和だとわかっているのに、穏やかな攻めと穏やかな受けとのほんわかライフがとても微笑ましかった。
決行の日の前日、2人は想いをかわします。幼くして両親を失い、色恋沙汰などには無縁で村のために生きてきた受けが、もうこのまま死んでもいいくらい幸せだ、と思うところではじーんとしました。
その後の怒涛の展開、起伏の激しい愛憎や悲劇など、なかなかの読み応えでした。優れた時代小説ほどではないのですが、まあそれはBLだし、そっちにあまり重きを置かれるのもどうかと思うので問題なし。
ただ、受け攻めのキャラや関係性が穏やかすぎて、後編のあまりにドラマティックな展開がちょっぴり浮いていたような気はしました。
明治初頭の京都を舞台にしたお話。
村の窮状を何とか直訴できないかといろいろ考えた末に京都に出てきた主人公が、偶然の出会いから新政府に不満を持つ者達の集まりに加わる。
この登場キャラ達、それぞれが使う言葉がちゃんと各々の背景を表していているのがとてもいい。
特に主人公の関西系の田舎っぽい訛りがええねん。
普段の丁寧な言葉遣いもきれいやし、色事になると、これが、またさらに、いろっぽい。
睦月の主張の筋の通っているところも、久我作品らしくて好き。
セルフツッコミ
お話の内容的には、ほぼ神でもいいのだけど、タイトルとカバーイラストが内容にいまいち合ってない気がしてちょっと残念。
あまり歴史には詳しくないので大層なことは言えないのですが『明治初頭の動乱期に様々な階層の人達がどう思って生きていたか』がとてもしっかりしている様に思えたんです。それも政府の中央にいる人達ではなくて『民百姓』の。
また、反政府の人達にも様々な理由があり、士族、町民、百姓のそれぞれがどういう風に新政府を感じていたかが丁寧に描写されていて、骨太の物語だと思いました。
『時代物』って、こういう所がきちんとしているとお話の世界に入り込みやすいですよね。
下士の睦月の故郷では、地租改正で百姓の暮らしは立ち行かなくなり「一揆を起こす」という話も出る始末。しかし、あちこちで起きる一揆が失敗に終わることから、睦月は故郷を救うためには「要人の暗殺しかない」と決意し、京都で木戸孝允の暗殺計画に関わります。
この睦月の佇まいが良いのですよ。
決意しているんですね。
基本的に『清い人』である睦月は本当は暗殺なんてやりたくないのです。
でも、世話になった村の人達を救うため何とかしなければならないと考えて考えた後「これしかない」と。
実に静かな文章だからこそ、ここがグッと来るんです。
睦月の仲間の一人である顕世も「真っ直ぐな人なんだなぁ」と解る描き方をしているものですから、睦月が彼に惹かれていく理由がすんなり解ります。
明日をも知れない身ですから、余計に想いが強くなる。
暗殺決行の前日、2人は情を交わすのですけれども、ここの描写がねー、たまらんのですわ。
しんしんと降る雪に例えられる様な、音もなく染み入る感じ。
これにはまいりました。
昭和の任侠映画なら、この『出入』で悲劇として話は終わってしまうんですが(笑)久我さんがこのお話を書いた理由が『間諜萌え』だったとのことですので(巻末の参考文献の量が半端ない)こちらの話はここでは終わりません。
なので「死にネタ、だめー」の姐さま方も大丈夫です。
評価が思ったより低いので、ちょっと吃驚です。もうちょっとたくさんの方に読んでいただきたいなぁ。
特にジャパネスク好きの方にはたまらんと思うんですが……
好きな作家さんだけどあらすじを読んでも何となく惹かれない・・・。そう感じながらも読んでみれば違うかもと購入。
読んでみると途中で何度か読むのを止めたくなるくらい作品世界に嵌れなかった。明治維新直後の混沌とした世に、暗殺の為に京都にやって来た主人公があまりにも素直過ぎてしっくりこなかった。何となく作者の書きたい時代と、BLを無理矢理合体させたような気に感じてしまった。
この時代を書きたいをいう作者の熱意は感じるので、BLとせずに時代小説として書かれていた方が面白かったような気がする。