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kemono rengoku
容赦なく本気の極道愛、第三弾です。
関西岩城組の三代目組長、廉は17歳。若頭の九堂は「34か5くらい」などと自分の歳さえ定かでない御様子ですが、そうなると17は離れている立派な歳の差カップルなんですよね。読んでいると諸々の迫力に押されて、そこのところが霞んでしまうのですが。
歳の差ものと聞いて普通に期待してしまうものは最初からなかったかなぁ・・・。まず、九堂のイチモツ描写に度肝を抜かれました。とにかく巨大で血管がすごいらしいです。「ゴーヤーって知ってるかワレ」とか言ってた一矢のセリフが忘れられない。
九堂は紛れもなく獣、それも熊かゴリラみたいな感じがします。受けの廉は「しなやかな」とか「ネコ科の獣」という言葉が合いそうなシュッとした獣。
リアルに二人がいたなら、廉の方が絶対話しやすいと思うし、モテモテじゃないかな。九堂は「アニキー!」と絶叫されてそうな、ゴッツイ感じ。
そんな歳の差あり、タイプ違いの二人ですが結びつきは本物なんだな・・・しみじみそう思ったのが表題作の「煉獄」です。
前作の後、廉は記憶を無くしてしまった上に、九堂に対して全然違うことを吹き込まれてしまい、恐怖の対象になってしまいますが、ちゃんとなるんだもんなぁ。
その過程が見どころです。
続いての「修羅」は廉が組長になったばかりのエピソード。
白装束と智司のお骨のインパクトはなかなかです。
ラスト「刻印」は廉が背に曼珠沙華の刺青を入れるきっかけが書かれたショートストーリー。エロ度高し。
綺月陣先生、デビュー20周年で再出版されたこのシリーズ。
エロ場面をザッと並べてみると、九堂のゴーヤー並みの巨大tnkから吐瀉物舐め、眼球舐め、獣姦、と凄まじいものがあり、絶対に万人受けはしないと思いますが、エログロが売りの作品ではないと思います。
過激であっても露悪的ではなく、ストーリーの迫力に引き込まれ、廉と九堂の壮絶な関係はどうなるのだろうと目が離せなくなる作品でした。
ピアスノベルズの新装版で、シリーズ第三作目。
前作の衝撃のラストからの続編です。
エログロトンデモ展開の目白押しだった既刊に比べるとかなり大人しめの内容ですが、ハッピーエンドを望む読者のリクエストに答えた作品としては、こうなるのもやむなしかと思います。
前作で、攻めの九堂と交わりながら崖から飛び降りた廉(受け)。
胸をナイフで貫かれ、内臓が飛び出た状態で崖から落下したにも関わらず、奇跡的に(!)一命を取りとめます。
しかし自分自身に関する記憶は全て失っており、九堂のことも勿論忘れた状態。
九堂の側近・磯谷が彼を発見し、病院で彼の世話を焼いています。
本書のメインは、廉が記憶を取り戻し九堂と再び結ばれるまでの展開そのものより、それを阻止しようと足掻く当て馬・磯谷の執念と狂気にあると思います。
九堂に恋い焦がれ、廉に嫉妬する磯谷。
廉が生きていることは九堂に伏せ、二人を会わせまいと画策します。
最終的には廉にそっくりの外見に整形し、彼に成り済まして九堂に愛されようとします。
目鼻立ちのみならず体中の傷も全て再現し、声は喉を潰してごまかそうとする念の入り様。
彼がここまで九堂に執着していたのはちょっと意外というか唐突に感じますが、その執念にはただただ圧倒されました。
廉は、磯谷の差し金で元組員の徳馬と関係を持ち、彼と恋人のような間柄に。
しかし心の底では優しく抱かれることに物足りなさを感じ…?
記憶を失っていても行動力は健在の廉。
ついに自ら組の総会に乗り込み、九堂らの前で記憶を取り戻します。
このあたりの展開は正直かなりあっけなく、磯谷や徳馬があっさり負けてしまうのも物足りなく思えます。
その後の、九堂の敬語が崩れる瞬間や、激しい絡みのシーン等には萌がありましたが、あとがきでも書かれていたように九堂がかなり丸くなっており、既刊ほどの面白さはないかも。
ファン向けのアフターエピソードとして楽しむべき内容かと思います。
しかし番外編「獣・修羅」は、実にこのシリーズらしさ全開の内容。
弟の命日に遺骨を喰らい、その粉を廉のあんなところにまぶすなんて常人には思いもよらない発想です。
一歩間違えればギャグにしかなりえない展開ですが、九堂の苛烈なキャラクターやバックグラウンドの描写が上手いためか、突飛なシーンにもなぜか切なさや情緒を感じてしまう不思議。
これは綺月さんの文章力や展開力のなせる技かと思います。
商業未発表作で、本書初収録の「獣・刻印」は、情事の最中に、九堂が廉に自分と同じ紋様の刺青を彫って欲しいとお願いする話。
それを笑って快諾する廉に、まだ17歳とは思えない懐の深さを感じました。
7/28発売の新作「東の双龍、西の唐獅子」をもって締め括られる獣シリーズ。
岩城組や「龍と竜」の二人も登場するとのことで、オールキャラ集合でVシネばりのハードな内容となるのか?
集大成となるであろう新刊が楽しみです。