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niwakaame no koe
デビュー作だそうですが、いまいち乗り切れずに読み終わってしまいました。
「言葉」をテーマにしているのですが、全体を通してその部分にばかり焦点が当てられているため、あまり恋愛ものを読んでいるという気持ちになれませんでした。
受と攻は幼馴染みで両片想い。受は生れつき特異な容姿と人の言葉を操り記憶を改竄する能力を持っていて、それがきっかけで周囲に色々な影響を及ぼしてしまってましたが、攻だけは自分を奇異な目で見たりせず友達でいてくれたことで次第に受にとって大切な存在となります。
攻も口べたな自分をいつもフォローしてくれる受に惹かれてましたが、あることがきっかけで受によって受に関する自分の記憶を全て奪われてしまいます。
何度再会しても、どれだけ記憶を奪われてしまっても、それでも受に何度でも恋をするというのがロマンチックなんですが、個人的にはこの受の傲慢さに不快感でいっぱいでした。
自分の思い込みで他者の気持ちをなかったことにしたり、勝手に記憶をいじる権利なんてないと思うのです。
よかれと思ってだとかどれだけ綺麗な言葉を並べても、攻の一途な想いを踏みにじるようなやり方に腹が立って、始終気分が悪かった。
最終的にはどんだけ言葉を操られても受のことを愛するよ~というお決まり展開でめでたしめでたしでしたが、何かもやもや感だけ残って楽しめませんでした。
文体も妙にオシャレな比喩表現を多様、装飾盛り盛り感がありテンポが悪く中々文章が頭に入ってこず読んでて疲れます。
あと「~すれば、~。」という特徴的な表現が頻発して、その度に引っかかって躓いてしまいました。そんな格好付けなくても「~すると、~。」でいいじゃん……と思う。
今回は合わなかったですが、発想は面白いと思ったので次回作に期待したいです。
『花宿人』の不思議な世界観と、文章の間から漂う濃密な香りが良かったので手に取りました。
こちらも不思議な世界観。
ある特殊な設定があり、それを説明してしまうとお話を読む楽しみが激減してしまうと思うのですよ。なので、感想のみを。
前半は太陽主軸に描かれていて、とてもサスペンスフル。
話として辻褄が合っていない状態が続くんです。
「あれ?あれ?」と思いつつ、謎がどんどん深まっていく力で読ませる。
私、ここで『ミステリ謎解き頭』になっちゃったんです。
途中から時雨がお話の中心となって、何故そんなことが起きたのかについて書かれていくんですが、この設定をすんなり受け入れられるかどうかによって、お話の評価が著しく変わると思うのですね。
この設定、謎解き頭で読むと「それはミステリとして違反!」という感じになってしまうタイプのものでした(ガーン!)。
時雨の孤独感や太陽の真っ直ぐさは、大変グッと来ました。
泣ける感じの設定なんですよ、実に。
不思議な設定も俯瞰して見ると面白いんです。そういうテーマの昔話もありますしね。ある意味、人類普遍の願望であり、禁忌でもあるようなところに触れているんで。
だからこそ、前半で『ミステリ攻略頭』になっちゃった自分を責めたいのね。
あー、もったいない。
『理詰め』を廃してお読みになることをお薦めします。
帯に「実力は新人、堂々のデビュー作!」とあったので購入しました。
全部読むととてもおもしろかったんですが、半分くらいまで読むのに苦痛を感じました。買ったことを後悔したほどです。
思ってたのとは違ってファンタジー系というか少し不思議な設定でした。でも後半からぐんとおもしろくなります。
不器用で口下手ではあるけれど、誠実で優しい攻めの太陽と、一途で美しい受けの時雨という設定がよかった。
特に時雨は、幼い頃から能力への戸惑いと、知らないうちに大切な人を傷つけた罪悪感があり、読んでいて切なかった。
そして何度言葉を奪われても、揺るぎない時雨への想いが良かったです。
次回作もぜひ読んでみたい作家さんです。
新人作家さん。
抑制のきいた文章とミステリアスな展開になかなか惹きつけられるデビュー作です。
あらすじ:
寡黙なサラリーマン・太陽(攻め)は、ロードワークの途中何気なく立ち寄ったカフェで、美貌の店長・時雨(受け)と出会う。
以来、度々キスを交わす関係となるが、太陽の記憶には重大な何かが欠落していて…
淡々と綴られる太陽の日常。
心情描写を排した筆致に何とも言えない不気味さが漂う、ある種ホラー的なストーリー展開です。
非常に寡黙で感情の起伏が小さい太陽。
会社で同僚に面倒な仕事を押しつけられても、時雨にキスされても、全てをあるがまま受け入れ、流れに身を任せ生きているように見えます。
太陽には何らかの記憶障害があるのか、あるいは特異体質なのか?
そんな当たりをつけて読み進めるうち、物語は意外な展開に。
ネタバレは避けますが、特異体質なのは太陽ではなく別人物だったというミスリードを誘った展開です。
ジャンルとしてはミステリではなくファンタジー。
ある種の特殊能力モノで、いわゆる「共感覚」に着想を得た能力描写はなかなかユニークだと思います。
ただ、ラブストーリーとしてはすれ違いの展開がかなりありきたりで、先が読めてしまうのはややマイナスかも。
また、太陽の記憶が欠けていることを地の文で説明してしまっているのも惜しい感じ。
神の視点で指摘するのではなく、太陽自身の感覚で徐々に、何となく違和感に気づいていくような展開の方が自然で良かったと思います。
とは言え、物語前半のエキセントリックな雰囲気にはなかなか惹きつけられました。
独特な世界観を描かれる作家さんという印象なので、次回作も楽しみです。