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たたる情慾を蒐集した英田サキ珠玉の短編集――。
aideki
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
英田先生の”短編集”ということで、”読まねば!”なスイッチが入りました。
いい作家さんって短編が上手いという印象なんですよね。
十八番の極道ものから、上司とリーマン、背徳の…まで、色々なタッチの作品を気軽に楽しめてよかったです。
とはいうものの、気軽に流せない掌編”潮騒の褥”にノックダウン喰らいました。
小さい頃に悪戯されたヤバい叔父さん、という始まりに不安をおぼえたのですが、いやいや、そうではないのか(そうだけど、魂レベルでは違ってたw)というところから、攻が徐々に事実(気持ちも含めて)に向き合っていく過程が面白かったです。名前のまま静かに壊れている受、ビッチというか真正の魔性です。エロくてきれいな叔父さんに若い欲望は抗えません。が、真面目な攻は、ただ欲望だけの関係じゃないと思いたいところに、受けの壮絶な過去を知らされて、もう十字架背負っちゃうんですよね。互いの負い目が引き合わせたようなCPですが、この話の最後にはきちんとそれが愛情に昇華していました。
失ってしまった子供時代と未知の大人の世界、互いの憧憬をそのまま存在にしたような相手に対して、実は会ったときからなにかが芽生えていたのだというのも理解できました。
後半、夜の海を泳ぐ場面以降、2人の営みが官能<尊みという印象に変わったような気がしました。救いがたい受の業が哀しいし、2人の関係性の近さが恋愛という雰囲気以上に深いものを感じてしまう、なんともいえない余韻の残る作品でした。
電子書籍で読了。挿絵有り。
単行本化されていなかったお話が3編+書き下ろしとのことですが、3編の雑誌掲載時が何時だったかを記載して欲しいです。紙の本には奥付に記載があるのでしょうか?ちょっと不親切だなぁと思いました。
短編集って尺が短いので『書き込んでいる』感は少ないのですが、その分、想像する楽しみがあって私は好きです。
ちょっと古い時期に書かれたものなのでしょうか?
奥ゆかしさの様なものを感じる文章と話の運び方が気持ち良かったです。
3編全て、積もり重なった想いが爆発するような形で事に及んでいるのがたまりません。
刹那的に爆発する恋。……こういうの好きです。
「兄貴とヤス」「ヤスと兄貴」
組のメンツのために鉄砲玉を引き受けた羽鳥は、男娼だった過去を持っています。
今生の別れになるやも知れない決行前日、自分に盲目的に男惚れしている舎弟のヤスに、その過去がばれる事件が起きてしまいます。
羽鳥はヤスに対して「自分はケツ掘られて喜ぶ男だ」と自虐的なことを言いますが、私の印象としては「え?違うでしょ。実は男とやるの、それほど好きじゃないんじゃない?」という感じ。むしろ、ヤクザとして自力でのし上がって来た自分を崇めているヤスが可愛くて堪らなくて、これから落ちる一方でしかない自分から引き離そうとしてるんだろうな、と思いました。
「幹部が鉄砲玉をするなんて、暴対法でこの業界も人手不足なんだろうか」とか、不発に終わっちゃった襲撃だとか、ツッコミどころはあるのですが、これらは『今夜だけ』と限定されるクソ切なさを演出するご愛敬。抑圧してきた想いがダーッと溢れて弾ける様がとても美しいです。
そう思った自分は、書き下ろしの甘々な二人にはちょっと興ざめいたしました。
趣味としては『あれ一回きりでした。その後は再び想いだけが積み重なっています』の方が好みです。
「1度だけでも」
広告業界を舞台にした、尊敬する雲の上のカリスマプランナー(しかも妻帯者!)との、一夜のあやまちから始まります。「ダメだダメだ」と思っていても惹かれてしまうことに酔いました(こういうの、経験無いからなー)。
「潮騒の褥」
過去にいたずらされた(と、思っている)叔父と関係するお話なのですが「ショタにいたずらするのは絶対だめーっ」な私なんですけれど、これが一番、グッと来るものがあった。
ここからガッツリネタバレしちゃいます。
叔父は『誰とでも寝る、淫乱』とされていますが、性的虐待の被害者なんです。で、もって、周りはみんなそのことを知っていたけれど、加害者が義父で高名な日本画家だったが故に、見て見ぬふりをしてきた。その結果、自己肯定感が低くて、体を差し出すことでしか自分の価値を確認できない人になっちゃったんですね。
自分の父もそれを止めなかったという点で、事実を知った時、甥はかなり衝撃を受けます。
それだけではなく、多分この先も、たとえ叔父が自分以外と関係を持たなくなったとしても、自分が叔父に向ける恋と、叔父が自分に向ける恋慕は明らかに性質が異なることを察しちゃったんだろうと思うんです。でもあえて、一緒にいることを選択する。
これはかなり辛いと思いますよ。
でも、その優しさと、寂しさがじんわりと染みました。
大きく3つの作品に分かれています。
メインは893の羽鳥(兄貴)と舎弟のヤスのお話し。
この二人のお話は書き下ろしもついていました。
羽鳥が純粋で真面目な自分一筋のヤスを可愛いと思ってしまい、ほだされてしまった感じです。
タイトル通り、お互いが相手への愛に溺れてしまった二人でした。
羽鳥がヤスを誘うシーンはエロエロです。
その他の2作品も相手への執着愛がすごいお話しでした。
それぞれ短編作品で、内容は薄く物足りないですが、いろんな愛の溺れ方を堪能できるのでさらっと読むには面白いと思います。
この本のように、雑誌に掲載されたものの、そのまま埋もれている小説の短編・中編は、たくさんあるのでしょう。
ぜひ、今後も短編小説集としてもっと世に出て欲しいと思います。
というわけで、「愛溺」は4話からなる短編集です。前の3編が雑誌・アンソロジーに掲載された短編、残り1編は書き下ろしの後日談になります。
大好きな水名瀬雅良さんの挿絵だし、わくどきと期待をして読んだのですが…、今回は図らずも私の好みじゃない作品が集まってしまったようでした。出来が悪いわけではありません。あくまで私の好みの問題です。
「兄貴とヤス」
ヤクザの幹部・羽鳥は、抗争の中、密かに鉄砲玉を命じられる。特に忠実な舎弟・ヤスには秘密にしなければいけない。知られれば絶対に付いていくと言うだろう。コトの前夜、羽鳥は高級クラブで偶然、昔のウリの上客・不破に出会ってしまう。……
年下ワンコ攻めは嫌いじゃないのですが、盲目的に忠犬なのはちょっと苦手です。
羽鳥の背中の鳳凰の刺青は、Hの最中のビジュアル的に萌えました。
尺の問題だと思いますが、問題解決があっさり過ぎる感を覚えます。
「一度だけでも」
朝、起きるとベッドに二人だった。広告代理店勤務の唯川は、ある晩酔った勢いで、密かに想いを寄せる上司・真瀬と、関係を持ってしまい……
「一度だけでもいいから」という想いは、その一度が叶ったら「もっと欲しい」と思ってしまう。揺れる心の唯川は、健気受けですね。
さて、唯川は、作中2つのプロジェクトに取り組んでいます。が、広告業界の用語などが出てきていて現場の臨場感がほの見えるだけに、そのプロジェクトがどうなっていくのかの行方が見えなかったのが残念です。私はお仕事BLが好きなので、お仕事のその後が気になってしまうのであります。
「潮騒の褥」
姉の結婚式の日。啓弘は久しぶりに、義理の叔父・静生に会った。静生に会うと不快感を覚える。それは12年前、静生から受けた性的な悪戯の記憶からで……
隠された秘密。高名な画家だった亡き祖父と、幼い義理の息子(叔父)との、忌まわしい関係。
それが故か、性的に奔放で、どこか感覚が狂って育ってしまった、淫乱な年上の叔父・静生。
身体だけが翻弄されているかのような、年下攻めの甥・啓弘。
4編中お話は私の一番好みなのに、なのに…、私は知らなかった自分の地雷に直面してしまいました。
――――――ごめんなさい!
私が許せるショタは13歳まででしたー! 中学に入学していても、12歳はダメでした!!
「ヤスと兄貴」書き下ろし
ヤス視点の、1作目「兄貴とヤス」の後日談。もうすっかり甘々イチャコラ。
兄貴・羽鳥はヤスとともに組を出てヤクザから足を洗おうと決意します。
―――あっさり、組長に許されます。なんだか釈然としません。
最初に書いたように、埋もれた小説の短編・中編で、今後も小説の短編集が出て欲しいです。
雑誌に掲載されていた短編集ということで購入。
雑誌はあまり買わないんで・・・
短編だからかもしれないですが、いつもの英田先生のパワーをあまり感じなかったような気が・・・
薄味というか長編で感じるあの濃厚さがないように思いました。
入っていたのは以下三作。
「兄貴とヤス」
これが一番気になっていて、わくわくしながら読んだんですが、あれ?ちょっと違う?
羽鳥がもっとエロくて病んだ男なのかなと思っていました。
淫乱ヤクザ設定の割にあまりギャップ萌えはしなかったです。
英田先生だからダークなヤクザものを期待していたけれど、これはどちらかというと甘エロでした。
羽鳥とヤスのエロは濃いです。淫乱の名に恥じぬエロさはあると思います。
でも、書き下ろしがより甘エロに拍車をかけていて、ヤクザものとしてはちょっと物足りない感じが。
せっかくのヤクザ設定だから、ヤクザとして立っているかっこいい羽鳥の姿が見たかったです。
羽鳥のヤクザとしての負の部分や闇の部分をもっともっと見たかったし、それが見えると羽鳥の淫乱さもより際立ったんじゃないかなぁと思いました。
でも短編だと無理なのかも・・・
やっぱり英田先生のお話は長編でじっくり読みたいと思いました。
それにしても、ヤスがかわいい(*´▽`*)
こういう兄貴一筋のワンコな攻め大好きです。
「一度だけでも」
古い作品みたいです。
妻がいる上司と寝ちゃうという話。
これはあまり萌えなかったです;残念。
「潮騒の褥」
すみません。これは完全に私はダメでした。
雑誌掲載の三作をまとめた短編集。
1. ヤクザ(年下攻め)
2. リーマン(年上攻め)
3. 甥×叔父(年下攻め)
という内容で、ページ数は3>2>1の順に多いです。
■「兄貴とヤス」+書き下ろし
『エロとじv』掲載作。
ヤクザ幹部の羽鳥(受け)と、彼を慕う舎弟・ヤス(攻め)。
ヤスの想いに気付かぬフリをしてきた羽鳥だが、組のため死ぬ覚悟を決めた夜、ヤスを誘い…。
過去に男に身体を売っていた羽鳥は、実はヤスに雌のように抱かれたい願望がある淫乱…という設定なのですが、普段の羽鳥のヤクザとしてのカッコいいエピソードがあまり描かれていないため、いまいちギャップ萌えし辛いかも。
組のため鉄砲玉になる計画も中止となり、書き下ろしではヤスと共にヤクザをやめラブラブ同棲生活を送っているので、ヤクザ物としての面白さはあまり感じられませんでした。
書き下ろしは、兄貴がヤスのため料理に挑戦したり、イマラチオさせたり〜とかなりエロ甘な内容。
健気ワンコなヤスが可愛かったです。
■「一度だけでも」
10年前の雑誌掲載作。
憧れの上司(攻め)と酔った勢いで一夜を共にした受けですが、実は上司には妻がいて…という話。
攻めが受けの仕事にアドバイスする等、師弟っぽいシーンには萌えましたが、王道のすれ違い展開がメインで甘さに欠けるのがちょっと物足りなかったです。
■「潮騒の褥」
5年前の雑誌掲載作。
血の繋がらない叔父(受け)と12年ぶりに再会した甥(攻め)。
攻めは中学時代、受けが男に抱かれる姿を目撃。その後、彼の手で何度かイかされた過去があり…。
複雑な過去持ちの淫乱年上受けを、まっすぐに愛する年下攻めの一途さが光る話。
受けが、当時中学生だった甥を好きに…という設定にはちょっと無理がある気がしますが、生い立ちのせいで色々とモラルに欠ける受けなので、あまり深くツッコんではいけないのかも。
ただやはり、女に刺されるほどの魔性の男が、まだ年若い攻めにだけ一途になるという展開は説得力に欠ける気がしました。
全体として、英田さんの作風の幅広さは感じられましたが、短編集ということもありやや物足りない印象。
特に、同時収録作二つには英田さん独自の良さというものがあまり感じられず。
やはり英田さんの作品は長編で読みたいなと思いました。