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思いきり甘やかされるがよい
dekiai kyoujinsama dozou ni kankinsaruru
ここ最近、続けて鳥舟作品を読んだのですが、多分これだけ違う出版社から出てるのかな? と思い、読んでみました。(他の作品は、作家さんの暴走をそのまま本にしている感じがして、編集担当さんが変われば違うのかもしれないと思っていたので)
結果、こちらは文章的には比較的読みやすくまとまっているように思えました。
ただ、この作家さんらしい描写(グロとか)も控えめになっている気がして、薄まったかなぁ……という感も。とは言っても、十分個性的ではあるのですけどね。
私自身がグロとかゲロとかに「萌え」られるかと問われれば、難しいところはあるのですが、サラッと読んでしまって殆ど記憶に残らないような作品よりは、ずっと面白みがあるストーリーを書く作家さんだと思います。いつも色々ツッコミどころも多いですが。
毎回賛否さまざまな鳥舟作品が気になっている方が試しに読んでみるには良い一冊かもしれません。
あらすじ:
元地主の家系で、今は困窮の一途を辿る松末家の跡取り・桂衛(受け)。
大学進学の費用を何とかしたくて裏山の祠へ神頼みに出かけると、現れたのは獣のような風体の尽壽(攻め)という男。
彼を土蔵に住まわせ、願いを叶えてもらおうとするが……
タイトルに溺愛とありますが、作中で行われる行為はむしろ陵辱や洗脳に近いような?
ストックホルム症候群、刷り込み等の言葉の方がしっくりくる病み気味の関係性をラストで無理くりハッピーエンドにまとめたような、個人的には座りの悪さを感じる一冊でした。
桂衛は、息子の学費より自身の娯楽や親戚への見栄を優先するような毒親の下で育った高校生。
誰かに甘えることも出来ず、ずっと自分を圧し殺して生きてきた苦労人です。
そんな桂衛が、早く実家を出て東京に行きたいと言っただけで尽壽に身勝手さを咎められ、逆に監禁され犯され…という展開についていけず。
挿入こそされませんが、狭い金庫に閉じ込められ、手首が入るほど後ろを開発され、イかされることしか考えられない精神状態にされ……
それを「お勉強」と称する尽壽は人外であるとこを差し引いてもちょっと足りない人だと思いますが、こんな残念な攻めでも作中では桂衛にやたら有難がられており、その偏った思考にちょっと引いてしまいました。
その後、解放された桂衛は、相変わらず母親には辛く当たられ、親戚のおじさんには犯されかけ…とまさに踏んだり蹴ったり。
こんな境遇なら消去法で尽壽がマシに見えてしまうのも理解はできますが、あの監禁生活も尽壽もそんないいもんじゃないだろうと、桂衛が尽壽を恋しがる度に冷めた気持ちになってしまいました。
尽壽の正体、桂衛の進学問題などストーリー上のテーマはいくつかありますが、メインはほぼ全編にわたり描かれるねっとりエロシーンの数々。
嘔吐、失禁、フィストなどインパクトは十分ですが、文章の問題なのかあまりエロさが伝わってこないのが残念。
特に、幼児化した桂衛の大袈裟な喘ぎや呻きに気が散ってプレイに集中できませんでした。
また、地の文に攻め受けの短いモノローグが度々入り、視点が定まらない点も個人的に苦手でした。
定まらないと言えば、尽壽のキャラも。
「お前さま」等の古風な言葉を使うかと思えば、急に蓮っぱになったり敬語になったりと口調がブレ気味。
性格も、寂しさから桂衛を監禁するような幼稚な人なのかと思いきや、都合の良いときだけ神様ぶって桂衛の成長を見守る一面もあり、アホとも聡明とも言い切れない中途半端な印象のキャラクターでした。
不幸も特殊プレイも盛り沢山で、色んな意味で楽しい作品には違いないですが、ハッピーエンドにしては桂衛が救われている感じがしないので、読後感は今一。
いっそ闇落ちにしてくれた方が作品のテイストに合っていてスッキリできた気がします。
この作家さんの3冊目の本ですが1番良かった。今までの本では視点の変更が分かりにくかったり、文体が読みにくかったのがいい方向になってる。物語に萌える部分があるので諦めずに3冊目を買って良かった。ただしプレイがちょっと特殊なのは変わらず。私は気にならずに読める程度に抑えられてる。 当て馬として白蛇様が出てきて家を出ていくけど、救われそうなエピソードが入っているのもいい。スピンオフがでないかな。 タイトルどおりの監禁ものだけど、結果としてあまあまなので読後感は悪くない。4冊目もこんな感じの本だと期待したい。