人魚島

ningyotou

人魚島
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神2
  • 萌×24
  • 萌3
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

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レビュー数
1
得点
36
評価数
12
平均
3.3 / 5
神率
16.7%
著者
桑原水菜 

作家さんの新作発表
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イラスト
石田惠美 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
発売日
価格
¥1,400(税抜)  
ISBN
9784799728697

あらすじ

仕事も家庭も失ったアレックスは火山の島で出会ったガイドの青年・スライに恋をした。
しかしアレックスを失脚に追い込んだ傲慢な成り上がり・バイスが目の前に現れ、強引にスライを連れ去る…!
バイスに対し過剰な反応をするスライ。
海水を嫌がり、触れれば大やけどをしてしまうスライ。
ここは海に囲まれた火山の島なのに。

スライのミステリアスな過去に触れたアレックスは、知れば知るほど彼にのめりこんでゆく。

島の女神と人魚の伝説、男たちだけの聖なる儀式、スライとバイスの因縁。
アレックスは二人の謎を解き明かそうとするが…
過去編と未来編の大量書き下ろし2編を加えて、貴方を極上の映画的読書体験へ…!

表題作人魚島

資源会社勤務の観光客
ラハナ島のレンジャーガイド

同時収録作品人魚島

アレックスの同僚で元競合相手
ラハナ島のレンジャーガイド

その他の収録作品

  • 人魚島 ―海を忘れた人魚―
  • 人魚島 ―君のすむ海―
  • あとがき

レビュー投稿数1

お伽話と男の世界

人魚姫の童話に着想を得て描かれたという本作。
童話をモチーフとしつつ、民俗学的要素や男の美学のような概念も盛り込まれた、美しいだけでないえぐみあるファンタジー作品となっています。

舞台はハワイ島をモデルとした南の島。
観光に来たビジネスマン・アレックス(攻め1) は、レンジャーガイドの青年・スライ(受け)と一夜を共にする。
翌日、アレックスの企業を吸収合併した因縁の相手・バイス(攻め2)と島で出会う。
バイスとスライは旧くからの知り合いらしく…という三角関係の物語。

表題作・過去編・後日談の三部構成です。

主人公は一応アレックスですが、物語の主軸となるのは元人魚のスライとバイスの悲恋。
海を捨て人間界でのし上がろうとするバイスと、彼を連れ戻すため人間となったスライの切ないすれ違いの物語です。

バイスとスライは人魚時代、導兄・授弟として契りを結んだ関係。
人魚の世界では、少年の人魚は体内に年長の人魚の精液を受け入れることで男になるという風習があり(元ネタはメラネシアの島々に実存した通過儀礼と思われます)、スライにとってはバイスがその手解きの相手でした。

婚約者がいながら、再会後もスライを抱き手元に置こうとするバイス。
その真意が作中で詳しく語られることはありませんが、高い自己実現欲求を抱きつつ、最後は授弟のため志半ばで散るという生き様の哀しさは、童話の人魚姫に通じるものがあります。
それでいて、目的のためなら手段を選ばない野心の高さや、年長者としてスライを導く頼もしさも感じさせる点が、このキャラクターの多層的な魅力かと思います。

そんなバイスを愛するスライが、身を呈して彼を守る表題作クライマックスは切なくも感動的。
スライの行動を目の当たりにしたバイスが下した決断も、続く過去編を読むと心打たれるものがありました。

ただ、バイスが自身の導兄(スライの父)を刺した経緯はもう少し掘り下げてほしかったかも。
導兄の立場を慮ったとのことですが、授弟のスライが普通に生かされているため、説得力が今ひとつ。何も刺すことはなかったのではないかという思いが残りました。

結末は一応ハッピーエンドですが、その幸せの形はBLとしてはやや異色かも。
結婚や安泰という概念に価値を見出さないアレックスと、海に戻り年少の人魚の導兄となったスライは、今後も年に一回程度の逢瀬を続けていくのでしょう。
お伽話に対するアンチテーゼのようなこの結末は、互いに闘う場所がある男同士の物語としてはとても面白いと思います。

惜しむらくは、人魚に戻ったスライとアレックスの濡れ場がカットされている点。
人間×人間、人魚×人魚の絡みはどちらも良かっただけに、人間×人魚も見てみたかったです。

挿絵は石田要さん。
あとがきでも触れられていますが、口絵カラーの美しさとスケール感は必見。
中の挿絵も美しく、人魚の物語をよりドラマティックに演出して下さっています。

17

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