ラー
soukyu no Lorelei
男同士の「契り」に必要なものについて誰かに訊ねたいけれど...
話が話だけに、相手は慎重に選ばなくてはいけません。それでなくとも三上には 浅群の寵愛を得ている~ だの、城戸の寵愛も得ている~ だのいう噂が立っていましたし。
考えに考えた末、三上は思い切って秋山さんに相談することにしますが....。
三上、ぐるぐる悩みます。そのぐるぐるアワアワしている様や ニブチンとんちんかんな秋山さんの返答、思わぬ方向からのタイムリーな話題提供に膝を打つところなど ちょっとコミカルでクスッとさせられるお話です。
本編で目が融けるかと思うほど泣かされた後でしたので、私はこの ほのぼのした短編にかなり救われ、癒されました。
1945年シリーズの、生きて終戦を迎えたカップルたちの後日談や 戦時中の甘いエピソードなどは楽しいですが、浅群塁に関することだけは、どんなお話を読んでも かなしくて寂しい気持ちになります。
それでいて(だからこそ?)、もっとたくさん塁の話を読みたいなぁと思います。
まるで、生前の彼を知っている人から思い出話を聴き、塁を偲ぶかのような気持ち.... なのでしょうか。
シリーズの中で、やはり塁のことだけは どうしても特別に思えます。
くまざわ書店限定ペーパー。
ネタバレであらすじを記します。
:
「俺だけのものになるか」と塁に言われ、
塁とならばそうなりたいと願い、夢のように嬉しいと思う三上。
心の中でひとしきり嬉しがったあと、具体的なことに思いを馳せる。
まずは身を清めよう。そして……
契ると言ったって塁は何をするのか分かっているのかと
心配になる。
そういう三上自身今一つ具体的にはよくわからず、
女と違って何かが必要だと聞いたような、なんだったか、
自分が悩まなくても予科練出の塁が知っているかも?
いやそれはあの塁では無理かもしれない……とグルグル考え
相談する相手を思案し、城戸に言ったらあっという間に基地中の噂、
噂話に興じず、物知りで分別ができそうな人……と、秋山を思いつく。
秋山を見つけ、「その、男のイチモツをその、あれに……」と
しどろもどろで説明をすると、「契るのか。よかったな」と。
通じたと思いホッとするが、秋山が想定した相手はなんと航空機?!
その場を立ち去ったものの、問題は解決せずに悩む三上に
同僚が下世話なからかいを仕掛けてくる。
「愛人は大変だな」
「毎晩励んでいれば、革のクリームが減って大変だろう」
ーーーああ、あれか。
ろくでもない同僚達もたまには役に立ち
かくして問題解決!……というお話。
真面目にあれこれ悩む三上も、
本意はわからないがとぼけた秋山も、なんだか可愛らしく、
どこかコミカルで優しい味わいのSS。
これだけ読むとふふふ……という感じだが、
本編を読んで、この契りを塁がどう感じていたか?
その後彼らの運命がどうなるか?を知っていると、
じんわりと切なさや愛おしさが胸に広がる。