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kaihatsu ouji to kaihatsu kishi
中編が2つ入っています。
『開発王子と営業騎士』
電子ピアノ開発チーム開発・研究部門の『エレピの王子様』と呼ばれる滝口は、業績を上げたご褒美にバンコクの視察旅行へ行くことになります。でも滝口はとても気が重いのです。ただでさえ人づきあいは苦手なのに加えて、同行するのがほぼ全て部長クラスのおじさん達ばかりだからなのです。その中で唯一の若手は本社営業部の東堂。入社1年目にして営業トップという彼は、視察そっちのけで羽を伸ばすことばかりに夢中な部長達の扱いもそつがなく、タイ料理の辛さで不調に陥った滝口も彼に助けてもらいます。その翌日、辛さによって消化器の出口も炎症を起こしてしまった滝口に、東堂は薬を塗ると言って……
『恋するダイエッター』
スポーツジムのインストラクター、岩田剛は身長185cm、体重75kg、体脂肪率はなんと9%という、見事なマッチョ体型の持ち主。子どもの頃から体を動かしていなければ気が済まない質で、中学時代は短距離、高校からはハンマー投げの選手として活躍してきた結果、この様な体になってしまったのですが、実は『色白ぽっちゃりさん』に憧れを抱いているゲイなのです。もう既に体は出来上がっているし、甘いものが苦手で太れないしで、ジムに「痩せたい」と来る男性に「もったいない」と思ってしまう毎日を過ごしています。そんな彼のジムに現れた熊谷春彦は、色白のもち肌、脂肪で隠れてしまった首、いつも笑っている様な細い目と、正に岩田の理想とするぬいぐるみのクマさんの様な体型。菓子作りの専門学校生で試食によって太ってしまうと言う春彦に「そのままの体型が良いのに」と思いつつ、副担当としてトレーニングを行います。素直で気立ての優しい春彦は指導に沿ってどんどん痩せていくのですが、あれ?不思議。「痩せても春彦くんは僕の天使」と思ってしまって……
私は表題作よりも同時収録の方がメチャメチャ好みでした。
見た目の好みは人それぞれ。でも、マッチョの岩田はその姿だけで「筋肉、好きなんでしょう?」と誤解されてしまうのです。「いいプロテインがあるんですよ」とか言いつつ彼ににじり寄ってくるのは、筋肉を付けた自分が大好きな『自意識過剰さん』ばかり。岩田が友達になりたい『ぽっちゃりさん』は、端っから「自分とは違う人間」という線を引いてしまうので、岩田の想いは空回りするばかりなんです。
男性の評価は『ぽっちゃり』より『マッチョ』の方が上、と多くの人が思っていることこそが、岩田の不幸を作り出しているという皮肉がとてもとても面白かったのです。
表題作は若干薄めですけれど『外に見えているものがその人の全てではない』と主張するこの2つのお話は「萌え~っ」というのとはちょっと違うのですけれど思いのほかに楽しめました。
毎日の生活でふとした時に『マイノリティ感』を感じてしまう姐さま方に、是非読んでいただきたい。爽快に感じると思いますよ。