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suit no yoru
読み終わってみれば、私の意識は紡(受)のお父様に奪われていた…
お父様素敵、ダンディズムに痺れる。
これ、2001年ノベルスの文庫化なんですね。
あとがきに剛先生も書かれているように、スーツや燕尾服に激しい流行の移り変わりがないので、今でもそのままするっと読める。
愛人関係はもう嫌だと≪対等な関係に戻りたい≫紡と、別れるのは駄目だと縛りつけようとする伊織(攻)のお話。
このふたりの出会いは紡が11歳、伊織が16歳のときだそうで。
あの…衝撃だったんですけど、このときのHシーンがあるので、ショタが苦手な人は注意が必要です。
正直なところ、序盤の伊織が嫌なやつすぎて、読む私のテンションも低かった。
でもぐるぐるしながらも頑張る紡と、ダンディな紡のお父様、素人モデルの覚のバ可愛らしさに救われました。
伊織が自分の気持ちを言葉にするところで、私のテンションは急上昇!
傲慢でやな男が折れる瞬間って、ちょっとゾクゾクするわ…
最後まで読むと、結局このふたりって破れ鍋になんとかだったんじゃ?と思うんですけど、これも思いが通じ合ったから言えること。
萌え一個かな~二個かな~と悩んだんですが、お父様が好きすぎるので二個に(笑)
なんかお父様に向ける覚の視線がおかしいですけど、まあ大丈夫でしょう…たぶん。
綿貫テーラーの四代目・綿貫紡。
紡は、父子家庭として育ちました(母親は紡が幼い時に他界)。
店のビルのオーナー(大家)である砧伊織。
伊織は四つ年下の妹がいる長男で、裕福。
使用人も常にいてて、プライドが無駄に高い母親。
在学している高校も名門高校。
伊織は馬術部でもあり、自身も馬を所有しています。
紡の父親は常に、伊織のために乗馬服を誂えていたほど。
それは、紡は11歳、伊織は16歳の高校生のとき。
二人は出会ったのです。
伊織は王子様そのものの雰囲気で気高く凛としていたのです。
長身で端正な顔立ちでもあったのです。
そんな伊織に心を奪われていた紡。
「君、乗馬したことはあるの?」
「家族旅行した際、一度だけ、馬に乗ったことがあるくらいですが・・・」
「楽しかった?」
「勿論」
「じゃあ、今度、僕の茶色い馬に乗せてあげよっか?」
「本当ですか?」
「ああ、本当さ」
しかし、そんな紡に彼の父親はこう諭していたのです。
「社交辞令だ。相手を気持ちよくさせるために、本当はそう思っていなくても、相手の喜ぶことを言うんだ」
さらに、続けます。
「砧さんは、オーナーであり、わが社の顧客だ。失礼のないようにしなければいけない。伊織君とは遊んではいけない」
失礼になる、というのは、わたし的には、伊織君はとても、危険な御曹司だから、だと思いますね・・・。
約束通り、伊織は、紡は自宅まで迎えに行き、馬場まで連れていきます。
そこまでは良いのですが・・・。
伊織の自宅まで連れていかれた紡。
紡は、自分の馬に乗せてもらっただけでなく、伊織の部屋に連れていってもらったお礼、に手作りの馬の置物をプレゼントしました。
だけど、それを機に、紡は倒錯した世界に身を汚すきっかけになったのです。
関係を持ってしまったのです。
もう、それは強引でもあったのです。
伊織は我儘息子であり、立場の弱い紡の弱みに付け込む、悪魔的存在ですね。
それから、二人は、長年にわたり、肉体関係が続きます。
性処理の道具としてしか扱ってもらえない紡は、我慢限界に。
関係を清算しようと、決意。
伊織はこう持ち掛けました。
建設現場で働く二十歳の覚(サトル)に、スーツの似合うエレガンスな男にできるか否か・・・。
もし、紡が勝てば、伊織から自由になれます。負ければ、愛人契約を結ぶのが条件に。
紡は、綿貫の誇りをかけてその賭けに臨みます・・・。
伊織の身勝手な態度には不快に感じましたが、母子家庭(父親は覚が3歳の時に事故死)として育った覚、紡の父親がいることには救われた感じがします。
天真爛漫な覚との心の交流も描かれています。
伊織と紡の秘密の肉体関係は、やがて、紡の父親によってバレてしまいます・・・。
そして、紡は、ついに、白状することに…
BLと親和性があるんでしょうか?の仕立て屋さんBL。
受けが真面目で華奢な仕立て屋さん。老舗テーラーの4代目。
攻めは傲慢で上質で、スーツを完璧に着こなすビルオーナーの御曹司…
よくあるパターンではあるけれど、さすが剛しいら先生。グイグイと読ませます。
冒頭、お針子の娘と王子様の実らない恋を描く絵本から始まるこの物語。
初めは傲慢な男・伊織が愛もなく店子の紡(つむぐ)に執着して決して手放さず、体だけの都合のいい愛人にしようとしている話、のように始まります。
が、ビルの老朽化による建替を理由に、4代続く「綿貫テーラー」を移転させ、新ビルにはカジュアル衣料チェーン店を入れるという伊織に猛烈な反感と怒りをたぎらせ、伊織に戦いを挑む展開になる後半は、他とは違う面白さを感じる。
「戦い」というのは、近所の工事現場で働くガテンのお兄ちゃんを、エレガンスとダンディズム香る、スーツの似合うホンモノの男にすること。
このガテンくん・覚(さとる)の立ち位置が面白いんですよね。
BLには珍しく、当て馬じゃないのです。
覚は知識とか教養は足りないけど、人をよく見ているし勘もいい。なにより素直。
勝負の前に覚のアドバイスで伊織と仲直りしちゃって急にラブラブになるのはアレっと思ったけど…
紡の亡き母親は絵本作家。
忘れられたお針子が王子の婚礼衣装に仕込む毒針、
信じられないほどのスピードで美しい衣装を仕立てる仕立て屋は実は蜘蛛、
美しさと哀しさ、見てはいけない知ってはいけない隠された秘密…
そんなイメージが織り込まれた面白い作品でした。
(で、覚は何と紡のお父さん(3代目)にちょっとラブな空気…)