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kuchibiru wa koi wo tsuduru
劇団俳優と作家のお話です。
不憫健気受けのBLだなんてとんでもない、心理描写のしっかりしたドラマで読み応えがありました。
やな奴!でも気になる!と思っていた男が、大好きな小説家さんだった!!なんて夢のような展開で、ランチするシーンはこちらまでウキウキしました。そんな浮ついた空気はすぐに消え、昔の影が現れ…うまくいっていた舞台もプライベートも諦めなければいけないのか…というのが大まかなストーリー。
千里(芸名はチサト)は病気がちな姉がいるため、幼い頃から構ってもらえず、姉が死んでからは両親とも会話がなく、寂しさから姉の元恋人だった男に心を許してしまう。
前の劇団にいたその男は女役をしていた千里を女のように扱い弄び、その噂が尾ひれを付けて千里は劇団内からいじめに合います。
一時の行動が後々トラウマになるほど波紋を呼び、自分の今を苦しめます。
この流れは誰でも当事者になればきっとそうなるかもな、現実でこういう人はどこかに居るよなという説得力がありました。
主人公の心をえぐるようなセリフも幾度か出てきます。でも優しさがベースにあるような杉原さんの透明感ある文章は暗くなり過ぎないし、伏線回収も派手ではないものの、物事や感情の変化が繊細で丁寧で惹き込まれました。
自分が悪かったから・自分が我慢すれば事態は治るからと、自分の中に否の要因をつくって、悪いと分かっていても付き合ってしまう。(この辺りの共感させる描き方が巧い)
自己完結して助けを呼ばないのは「不幸なままでいようとする」ことだと、千里は野上にきつく問い詰められます。
大好きだった作家に好きだと言われ、優しい言葉に勇気づけられていたのに、同じ人にきつい言葉を言われるのは耳が痛く、愛があるとはいえ苦しかった。
大好きな人に嫌われたくないし、自分の尊厳すら失う様な元凶を、とうとう野上に打ち明けるシーンではもう苦しくて泣けました…
小説家の野上は千里より精神的にも大人で、千里を好きになってから心に迷いがないところが救いでした。
今まで誰かの一番になれなかった千里が、「誰よりも大切にする」という言葉を与えられ泣き出したところは、シンプルな言葉ながらグッと来ました…
「おひさま色〜」もですが、杉原さんの描かれるスパダリ(?)は包容力が繊細で優しい!
姉の身代わりの様な扱いを過去に受けた千里が、野上にフェラされるシーン。彼自身をちゃんと見て愛があるのだと感じられて少し泣けました。
また、千里は初めてだから、野上は千里が初めてじゃないと勘違いしてたからと、二人共戸惑ってるシーンも可愛かったです。
ベッドシーン毎回ツボなんですがいつも少なく(お話の内容的にその方が良いのですが)、今回も2回目は途中退場…
時に甘エロなのも描いて欲しいなとか思います。