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himitsu no mura ni totsuidemimashita
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
この話、仕事ができると自負しているサラリーマンの日野鬼がライバルの同僚・陽人の口車にまんまと乗せられて、その男の弟の元へ嫁いでやろうって冒頭からして、ど田舎で繰り広げられるおバカなサラリーマンのコミカルな嫁入り奮闘記かと思った。
そもそも面識も無い男の元へ同性の男がいきなり押し掛け花嫁ってどうよ…ってトンデモ設定をどう持っていくのか心配だったけれど、旦那となる素朴な性格の月人とは初対面にも関わらず相性バッチリなのだった。
それどころか、月人が双子の弟として産まれたというだけで村内で忌み嫌われている理不尽さを何とかしてやりたいと日野鬼が奮闘する健気さ、というか勇ましさが頼もしく見える。
都会育ちの日野鬼が田舎生活で早々に根をあげるかと思えば、意外と嫁としての心構えが出来ていたようで何の問題も無いじゃん(笑)と予想に反した展開でグイグイ進んでいくのだった。
日野鬼の後腐れないサバサバした性格のおかげで当主のばあ様との姑vs嫁のような口の悪い言い合いもスカッとするし、村人との付き合いも上手くこなせそうな雰囲気だったので因習の残るど田舎の閉塞感はほとんど感じなかった位だ。
とはいえ、実はその村の因習のせいで、日頃から日野鬼の身も心も心配していた月人の機転で身体を好き勝手にされそうって危機一髪を上手く切り抜けた事から事態は急展開する。
この出来事さえ無ければ、本当なら月人を円満な形で外の世界へ連れ出せたかも知れないのに…。
…それでも大丈夫、「村の因習根に持つべからず」って心意気の前向きなカップルなので、多分そう遠くないうちに村人とのわだかまりも解けそうな希望も持てるのだった。
田舎、それも秘境と言えなくもない村が舞台のシリアスなんだかシュールなんだか
コミカルなのか、判断が付きにくいくらい緩急のある作品で楽しめました。
受けになる日野鬼の俺様で負けず嫌いな性格は女王様気質で、怖いけれど怖くないと
涙目になっている姿は意地っ張りだけどそれが可愛く思えます。
エリート街道まっしぐら、若手で逸早く出世街道を直走っていたのに、
婚約者が居る上司と知らずに付き合い、それを大嫌いな同僚に会社の上層部へリークされ
更に付き合っていた上司は不正を働いていたことが解り日野鬼のも窮地に追い込まれ
傍から白い目で見られることにプライドの高さが災いして辞表を出してしまう。
この世の終わりのように状態の日野鬼の前に、リークした犯人である光屋が現れ
売り言葉に買い言葉で、光屋の田舎に住む弟の嫁になるために光屋の実家に向かう。
そこは、よそ者を徹底的に排除しているような特殊な村で、光屋の双子の弟は
一族だけに留まらず村中から蔑まれているのです。
昔の古い因習って、かなりエグイことが多かったのを思い出してしまいます。
どこの国でも双子が忌み嫌われた時代があったりしますが、この村もその一つ。
かなり緩やかな流れで命までは奪われないけれど、それ以上に村で生きるのは過酷。
そんな相手へただ、ライバルの弱みを握りたくて意地だけで出向き、押しかけ嫁に
なって、ライバルの家を困らせて鬱憤を晴らす目的だった日野鬼はライバルと
同じ顔なのに、些細なことで喜ぶ月斗を次第に守りたいと、その思いが嵩じて
ラブに発展するが、古い因習に囚われる村の怖さにホラーを感じました。
村人や親族とのかかわりが、仲良くなったと思ったら恐怖の対象になったり、
恐怖が薄れたと、信頼できる相手と思ったらまたしても恐怖の対象にと緩急が多々あり、
とてもこの村で手に手を取ってみんな仲良くとは行かないストーリーです。
もちろんハッピーで終わるし、やはりどこかコミカルだけどそれだけでない
様々な感情があふれ出てる意外に奥深い作品かもしれません。