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seishun zankoku monogatari
BLとして読むには難しいお話だ…。
攻め視点です。
彫塑家の哲朗は、大学講師や美術系専門誌の寄稿などしながら細々と暮していた。ある日、年齢を詐称してアイドル俳優をしている元同級生・晴親が自宅を訪ねてくる。テレビのワイドショーによると、晴親は所属事務所の社長を刃物で刺して逃亡中。なぜ晴親は自分のもとへ姿を見せたのか…?哲朗は10年前に彼と自分が起こした心中未遂事件の記憶が嫌でも蘇ってくるのだった——
とまあ、シリアスかつミステリっぽい展開のようですが、キャラがみな洒落気のある人たちなので、重くはないです。でも、BLとして読むにはテーマが深すぎて、萌えとかキュンどころじゃないかも笑
晴親の変貌ぶりに驚愕する哲朗というのが物語の伏線でしょうか。10年ぶりの二人の再会シーンは作者様らしいドタバタ感が出ていて、いかにもな事件の始まりを予感させます。
哲朗のことを「古の恋人」と呼んだり、最後に哲朗が渡したラブレターをネタに自分を匿えと恐喝してきたり……晴親って、こんな男だっけ?記憶の中の彼はもっと儚くて生きるのが辛そうで、だからあの時、一緒に逝ってあげようと自分は寄り添ったのではなかったか?
哲朗は晴親が誰かを庇っているのではないかと察知しますが、警察の初動が悪かったせいで容疑者が別にいることが後に判明します。その容疑者と晴親との関係が明かされるところが物語のクライマックス。ここがシリアスで胸がヒリヒリする…。
同時収録されている「海辺の家」では事件解決後が描かれており、哲朗の家にはなぜだか人が集まってきて、賑やかなエンディングに救われます。本編からずーっと老犬のクリストファがいい味をだしてくれていて、ほっぺたが緩みました。
まだ28歳の哲朗が10歳ほど老けて見えたり、同い年の晴親が21歳だと偽って活動していたり、思春期以後の精神的な成長度がそれぞれ象徴的に描かれていて面白い演出です。ラブレターには何が書いてあったのかも気になりますが…。
哲朗側の「老けた」領域に渡ってしまった自分は、今だったら晴親らが抱える苦悩が厨二病のひと言で片づけられてしまうのかな、と寂しい思いがしました。10代の頃の、あの神経が剥き出しで研ぎ澄まされてピリピリと全身が痛い感じ。男子なら男子ならではの…。それらの一部でも受けとめてくれる人がいるかいないかで、青春とは残酷なものになる。そんなふうに読みました。