marun
momoiro no kotori
しばらくイベントをお休みしていた本宮さんが、J庭でたっぷり厚みのある新作を
出して下さいました。
健気で庇護欲を掻き立てる妙に可愛さを感じさせるファンタジーと言えば
最近ではこの作家さんを思い浮かべてしまいます。
J庭での新刊は「掌中の珠となり」下巻が出るのかと思っていたのですが、
嬉しい誤算の新作で嬉しくなりました。
内容は擬人化と言うより翼を持った種族のお話で、様々な色の翼を持つ人々。
その中で穢れの無い純白の翼は初代国を作った王が白い翼だったことから
もっとも高貴で偉大なる色とされている。
その反対で血潮の宿りし緋の翼はもっとも忌まわしい色とされている。
攻めの白銀の騎士と呼ばれる純白の羽を持つ軍人アレイサスは硬派で誰もが憧れる
存在ですが、国の中で純白の翼をもつのはアレイサス一人で稀有な存在。
そして受けになるモイは両親が既に亡くなっていて、独りぼっちのうえに、
翼が忌み嫌われる桃色の羽で、更に翼に血が通っていると言うある意味奇形。
モイもまた、別の意味で稀有な存在なのです。
そしてこのモイちゃんが、貧しい村の中で更に貧しく、その桃色の羽があることで
村人に虐げられ、生傷が絶えないくらい可哀想な不憫受けなのです。
日々の糧を得るのも大変で、どうしても食べるものが無い時に隣町で違法であるのに
己の血液を売ってお金にしているくらい貧しい。
血液を売っている医療施設では、モイの翼から取る血液は実験材料で
違法な行為に戸惑うモイに研究者は半分無理やり採血させている感じなのです。
どうしても食べるものが無くて後ろめたさを抱きつつもお金と引き換えた帰りに
モイは出会いがしらにアレイサスとぶつかり、互いに相手の羽に驚愕します。
モイはアレイサスを神様みたいに神々しと思うと同時に違法行為をしていた事から
軍人のアレイサスに怯えて、折角のお金も落してしまう程ビックリしてしまう。
そしてアレイサスは自分を見て怯え、見るからに小さくか細く、
偶然見えた桃色の羽が気になって忘れられない存在になってしまう。
全体的な流れとしては作者の既刊同人誌作品と雰囲気的にも流れにも通じるものがあって
新鮮味には欠けるかも知れませんが、それが逆に良かったりもします。
でもこの作品はいつもより受けの健気ぶりや可哀想度が非常に高いです。
国に恐ろしい伝染病が発生した時はこれ以上何するのよと言いたいくらい
モイちゃんが可愛そうで命の危機に瀕するほど酷い目にあってしまう。
もちろん本宮さんの作品ですから最後にはきっちりモイちゃんが後ろ指刺されることなく
白銀の騎士であるアレイサスと幸せになりますのでご安心を。
硬派で真面目なアレイサスと天然健気なモイちゃんのピュアラブを堪能出来る作品。