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yuuou no kisaki
剛しいらさんのファンタジーが好きです。中でも、この作品はもう何度も読み返すほど、大好きな作品です。
シンは、子供の頃に狼に育てられ、動物と話せる孤独で純朴な青年。リュウは、竜王国の王。竜王は世襲制ではなく、努力した者が選ばれます。そして竜王国では、非常事態になると竜王が竜妃を迎えるという決まりがあって、その竜妃がシンだったのです。
シンもリュウも、大好きなキャラクターでした。シンは、健気で今自分にできることを一生懸命に頑張ります。リュウは誠実で努力家です。最初は、竜妃が女性だと思っていたリュウはシンに対して冷たい態度を取りますが、だんだん愛情が深まっていくのには心が温かくなる感じがしました。
シンの精霊の力で治療するところや狼たちとの交流、敵との戦いなど、恋愛面以外でも楽しめました。剛さん恒例のあとがきSSも面白くて、もっと読みたいと思いました。
とても誠実な主人公達の中華風のファンタジーでした。
二人が出会うのは宿命であり、必然であり、それを阻み亡きものにしようとする闇に囚われた者と対峙して、未来を切り開くという展開。
とても正統派な流れだとは思いますが、そこにある設定で変化を持たせてあるように感じます。
西の領主村の山には狼に育てられたという現在は羊番をしているシンという青年がいる。
二歳頃に発見され村で保護されたが、動物の言葉がわかるということで異端視され教育は受けたが村から離されて暮らしているのです。
ある日、村がどこかの国の軍に襲われて全滅してしまったのを発見し、あわてて山に戻るところ河原で倒れている男を発見し小屋へ連れて帰る。
眠れないで過ごす晩、シンは青い髪の美しいものがその男に息を吹きかけている夢ともうつつともとれないものを見ていると、その男が目を覚まします。
記憶も何もかも失くしたようで、まるで幼児のような様子の男に陰部に龍の刺青があることからリュウと名付け生活に楽しみをみつけるのでしたが、ある晩突然人が変わったように正気を取り戻し、兆していると言い襲われてしまいます。
リュウは竜王国の竜王で、精霊が王に与えた后の竜妃を探しに来た先で、命を狙う禦空国の魔導士の術によって飛ばされシンに拾われたのでした。
そして、シンはその竜妃だったのです。
二人は迎えに来た竜王国の兵隊と共に、竜王国へ戻ることになります。
そして、王と后の暗殺をたくらみ禦空国皇帝を操る魔導士・緑氏を倒す為に、禦空国に乗り込むのです。
シンの印象は、村人から異端視されていて山に追いやられていたと言うのにとても健気で素直です。
動物の言葉がわかり動物に慕われるのですが、彼は生きていくための自然の摂理を知りわきまえているので、生き物を摂って食べることもします。結構現実的です。
一人でくらしていたからかもしれないですが、よくしゃべるな、という印象。
思った事を言う言葉は誠実で、人の心を掴みます。
動物と話すことができ、農作物も育ち、それは彼が精霊の力をもっているからというのもあるのですが、一番は気持ちが高ぶったり能力を発揮する時髪と目が青色に変わるというものです。
また彼は怪我や病気の治癒の力も持っています。
リュウと出会うべくして出会ったのですが、出会わなければ一生独りで羊番として終えたかもしれないのです。
その宿命の出会いが無かったが為に起きたのが今回の禦空国の緑氏の陰謀につながったということなのです。
300年、ずっと禦空国も竜王国も平穏にやってきましたが、非常時に竜王を守る為に存在する竜妃が必要とされるということで、先代も先々代の竜王も竜妃を探すことをしてこなかったのです。
本当は先々代の時に竜妃としての力を持ちながらなれなかったのが緑氏で、その特殊な力の為に疎まれ奴隷のように扱われてきた恨みが募り、竜王と竜妃への憎しみになってしまっていたのですから、ある意味憐れでもあるのです。
こうした定められた番でありますが、感情はきちんと育って行きました。
二人の睦合いは最初はリュウの傲慢さで一方的でしたが、気持ちを通い合わせるとそれは二人に快感と互いのエネルギーを感じさせ、エロさより、何故だか心地よさを感じさせます。
まるで海に浮いているような、、、ってシンは身体が浮いてしまうです(笑)
ずっと小さな小屋で質素な暮らしをしてきたシンが大きな宮廷で居心地悪く感じるのを察してシンの住みやすいように気遣うリュウがあったりして、彼も結構健気です。
特筆は、シンに付いてきた狼と犬たち。シンが狼に育てられたということでずっとシンについて竜王国まで来て狼部隊なんてできて活躍してましたv
何かに萌え萌えしたか突出したモノは感じなかったのですが、誠実さと思いやりが心地よいお話でした。
同じ竜妃と言う定めを持って生まれた者が善と悪になってしまう、ラブ要素も
それなりにあるのですが、中盤以降知れる精霊が竜王のためにこの世に送り出した
戦乱の世になれば竜王を外的から守るための存在の竜妃。
竜の血を引く民が暮らす竜王国と今では地上に存在しなくなった精霊との
遥か昔からの盟約、それが地上の番人、中立者として君臨する竜王と精霊がそれを
守ることが決められ、戦乱がナクテモ25年に1度竜妃が人知れず生まれている設定。
狼に育てられ、人間からは遠巻きにされ村はずれで羊飼いをしているシンは
怪我をして記憶を無くしている男を拾い、面倒を見るようになります。
男を助ける前に村人ごと惨殺され、そこに残っていた動物を助け出すことしか
出来なかったシンは、男を初めての家族のように思っていきます。
その男にリュウと名づけ、不謹慎にもリュウの記憶が戻らなければずっと一緒に
いられるのにと思うほど愛情が育っていきますが、ある夜記憶が戻り傲慢なリュウが
何かに怒りながらシンをお前なのかと言いながら強姦に近い感じで抱いてしまう。
記憶を無くしているリュウは愛しいと思っていたが、記憶を取り戻したリュウは
まるで違う横暴な感じです。
そして、リュウはシンを竜妃だといい、迎えに来たと、竜王国と精霊、竜王と竜妃の
関係をシンに話し、記憶をなくしていたリュウを愛しいと思っていた事もあり、
記憶がもどったリュウと共に行くことになります。
シンは竜妃として次第に能力に目覚め、それは竜王と大きく関係があって
二人が信頼し愛し合えば合うほど能力も上がる感じです。
そして二人が戦う相手は敵国の皇帝を裏で操る魔術師なのです。
でも、シンが能力に目覚め始めると、敵国の魔術師の存在が実は過去の竜妃に
なれなかったものではないかと思い始める。
戦乱の世でなければ竜王は竜妃を求めない、これがこの戦いの全ての始まり。
敵なのに、竜妃になれなかった者の存在が後半でかなり哀れになりました。
生まれながらの竜妃候補、女ならこれほど可愛そうだとは思わない背景があり、
男で生まれたことが悲劇に拍車をかけるような感じでした。
竜妃の本来の役目は人間のこの世にある命を守る、命の尊厳を守る使命を
精霊に託された存在なのだと言うお話です。