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romantic replica
「きっと優しい夜」のスピンオフですが、私は未読状態で読みました。特にそう問題はなかったです。
表題作と「その後」が収録されています。
「その後」は16ページ。表題作で恋人になった二人の後日談です。弦の部屋で、江崎と「お家デート」をしますが…本編では大人だった江崎の意外な一面に笑いました。
どちらも弦の目線で話が進むのですが、弦が可愛らしいです。優等生ではなく口調もやや乱暴なのですが、一生懸命背伸びをしている年下の受けって感じで愛らしかったです。
最初から江崎が大好きで一途というわけじゃないのですが、私は弦の思考に好感が持てたので物語が受け入れやすかったと思います。全体的に優しくて柔らかい雰囲気の作品です。
表紙めくってすぐのカラー挿し絵のキスシーンが好きです。弦の顔がちょっと赤いのがほんと可愛いなぁってにやけてしまいました。
『きっと優しい夜 』のスピンオフになります。
『きっと~』にも登場していた、前作メインCPの同僚で同業のデコレーター・江崎(攻)と、本社の工房マネキン職人・弦(受)。弦視点です。
こちらにも前作CP(堂上×羽根)は出ていますが、CPとしての描写はありません。あくまでも同僚である脇キャラクターとしてです。
ですので、あとがきでも言われていますが前作未読でも別に支障はないと思います。
う~ん、正直なところ、個人的には前作の方が好きですね。だからと言って、こちらがダメなわけではないんですが。
あえて言うなら、キャラクターが好みから外れてるかな~。何とも掴みどころのない江崎と、やんちゃで強気で可愛い弦。
決して悪くはないし、苦手でもキライでもないんですけどね。
ただ、それ以上にお互いの仕事に弦の元義兄(過去にお互いの親が子連れ再婚し、3年で離婚)への想いなど、設定を詰め込み過ぎな気がしました。
そのわりにページ少な目(本が薄いとは感じませんが、とにかく盛り沢山なので)で、すべてにおいて展開早過ぎというかあっさり過ぎだと感じてしまったんです。
これだけアレコレ盛り込むんなら、もっとページ増やしてすべてをしっかり追うのもいいですが、私は(このページ数でも十分だから)もう少しテーマを絞ってそれぞれを深く描写してもらったほうがよかったですね。
『もうダメ』じゃない分、逆に何とも惜しいというか物足りない気がしたんですよ。
(個人的な好みで)『仕事ばっかり』じゃない点はいいんですが、仕事面もこんな中途半端に広く浅くじゃ思い入れようもないんだけど・・・
ラブ面では、弦の元義兄への片想い(最初は自分でもハッキリと自覚してはいなかったんですが)と、江崎との体からの関係です。
イヤ、それ自体はいいんですよ。ただ、そのどちらもが中途半端で上辺だけ(の描写)に感じました。どこをどうしてラブになったかが曖昧で残念です。
何よりも、完全に弦視点ということもあって、江崎がよくわからん。
もともと掴みどころのなさそうな(属性訊かれても答えようがないよ・・・これはなんていうの?)キャラクターではあるんですが、それにしたってあまりにも江崎の中身が見えないんです。
ストーリーとしてはこれといったものはありませんが、全体のトーンは好みなんですよ。うえださんらしい優しく誠実な雰囲気です。
ひとつひとつの描写も相変わらず丁寧で繊細ですし、それはホントに好きなんです。『浅い・物足りない』と言いつつも『荒い・書き飛ばしている』とはまったく感じません。まるきり放置の部分もないし。
だからこそ、追うべきポイントが多すぎて、結果的に散漫になってしまったようで惜しいんです。
あとはイラスト。
表紙・口絵のカラーイラストがすごくいい。キャラクターのイメージピッタリで、とても綺麗で素敵です。
私は金さんは大好きなんですが、正直なところ金さんの攻イラスト(キャラクターがどうこうではなくイラスト限定で)はあまり好みじゃないことも多いんですよね。
でも、今回の表紙カラーの江崎はホントにカッコよかった!あ、もちろん弦も可愛くてよかったんですが。この表紙だけでも買った意味はあるというくらいに好みです。
ただ、本文モノクロイラストがちょっと(カラーと)印象が違う気がしました。カラーがよかったからこそ、そこがちょっと残念かな。
「きっと優しい夜」のスピンオフで個人的には前作の二人よりもこちらの方が
良かった気がします。
だからと言って凄く~って程ではないのですが、恋ってこんな風に始まることって
以外にありかも知れないと思う展開でした。
内容は受けになるマネキン製造職人の弦視点で描かれていて、親の再婚で兄弟になり
その後二人が離婚して他人になってしまった義兄に仄かに思いを寄せているが
それが恋愛的な意味なのか兄に対する好意なのか自分でも解らないままに過ごし、
系列会社のデコレーターであり、コンパ大好きな遊び人と言われていて
遊びに性別は関係ないと言っている江崎に自分の友人の悩みとして相談したことから
本社に来る度に気安く話せて飲みに誘うような関係になっていく。
そんな時に江崎が上司にダメだしされている現場を目撃し、落ち込む江崎をなんとか
励ましたいと、無理やり飲みに誘い、何故かその後に離れる事に戸惑い、
どうせ誰かと遊ぶつもりなら自分でもいいのではみたいなノリで一夜の関係を結ぶ。
その時に、義兄の事を思い浮かべ胸の苦しみにやはり義兄が好きだったと知るが
それと同時に江崎の事もきになっていく。
しかし、義兄が結婚する事を聞かされ、失恋のショックで落ち込み江崎とも
自分から距離をさり気なく取りながら、一人思い悩む展開。
この時点でもはっきりと自分の気持ちの整理が付いていない感じですね。
それが電車内でのトラブルに巻き込まれて江崎を頼った時に義兄への初恋に似た
兄を誰かに取られる嫉妬めいた感情と江崎へのいつの間にか育っていた思いとは
明らかに違うと、江崎に恋していることに最後に気がつき相愛になる話。
本気の恋をしたことが無かった弦が恋をして心の成長も遂げるような内容です。
江崎視点がないので、相手の気持ちの度合いが解りづらいけれど、
最初に抱き合った時には既に特別な相手になっていたような気がします。
ずーっと受け視点なこともあり、手慣れた遊び人の攻め(飄々としてて掴みどころがないけど、モテるし遊んでるのがチラチラ見え隠れする手強いタイプ)が、なんで受けと付き合う気になったのかがイマイチわかりませんでした。
多分寝てみたら予想外に可愛いことに気付いたのがきっかけだろうけど、なんかその程度という感じしか伝わって来ないので、そのうちつまらない理由で別れそう。
受けも義兄への想いが恋なのかなんなのか分からない、でも同時に攻めの事もなんだか気になる…みたいな二つの恋の同時進行はまぁ理解できる。
だけど義兄への想いにようやく決着がつくのが、終盤。
そこまで引っ張るんですよ。
しかも義兄が結婚すると知ってようやく本気で好きだったと自覚と同時に失恋決定で、かなり落ち込むんですね。
痩せるし、仕事でもミスを連発する。
その傷心ダメージ描写が印象的だっただけに、その後いきなり攻めに告白するシーンに目が点。
気の変わりの早さが唐突だし、気になる人から好きな人になぜ昇格したのか良くわからない。
おまけに、この攻めだったから好きになったというよりも、手近なとこに攻めがいたから好きになったような気もしちゃうんですよね。
中立か迷ったけど、マネキン業界のお仕事描写が楽しく読めたのでおまけして萌で。
うえださんは好き作家だし、年の差ものは好きだし、キャラクターは受け攻めどちらも好きなタイプだったんですが、なんとも言いがたいような物足りないおはなし。
悪くはないんですが、かといって、いいわけでもない。
好きなタイプのおはなしなんですけど、好きな一冊にはなりませんでした。
キャラや設定、そういったものが、うまく噛み合っていないような読後感でした。
うまくまとまっていないけど好きなはなしがある反面、どこが悪いわけでもないけどイマイチなはなしだったのかも。
関連作になる前作は好きだったんですが、こちらはどうにも残念でした。
なんだか、楽しみそこねた気分です。