条件付き送料無料あり!アニメイト特典付き商品も多数取扱中♪
大企業の御曹司×美貌のテーラーの身分違いの恋!!
shitateya no koi
仕立て屋さんBLはコミックスでも小説でもいくつか読んでいて、そのどれもが結構好み。
そして本作も…
とっても心揺さぶられてしまいました。
母子家庭で育ち、一人で自分の進む道を紳士服の創り手として思い定め、フランスでの辛酸を舐めた苦労を経て今では東京で独立を果たしている河原清見が主人公。
ある日、病に倒れた社長の跡継ぎとして急遽ビジネスの世界に放り込まれた「御曹司」・三木恭介がスーツをオーダーしにやってくる。
27才まで定職に就かず、急な展開に心がついていかない、余裕も自信もない若者として現れた恭介。
恭介と清見が、身分の違いを意識しつつ惹かれあっていくお話、なのですが。
前半、言ってみればBL的には順当にストーリーは進んでいきます。
年下でまだ若い恭介。
まず鎧としてのスーツをあつらえて大人の風格を外から整える、その部分を担う清見と、清見の凛とした佇まいに惹かれる恭介…
しかし、物語はそんな甘々では終わらない!
水原とほる先生ですもの…
痛いんです。
強烈にイタい展開が待っている。
これは読むのがキツかった。
清見は自身の価値よりも高望みをしすぎたのか?
世界の経済を回すトップと渡り合えるわけもない。でも…
会わないと決めながら、白い雪のように心に積もっていく恭介への愛しさ。
仕立て屋風情が大きな経済を動かそうとして羽をもがれた罰に震える清見の痛々しさ。
甘さとメランコリー、不条理な痛み、分不相応な恋、抑えられない恋情…
引き込まれて読ませていただきました。
とても静かで健気な恋の話でした。
受け視点で進行していくので、攻めの境遇や性格設定もあり若干そちらが弱い感じを受けるのですが、きっとこれが攻め視点だと…と考えた時に、決して彼は存在感も性格も弱くないということが見えてきました。
二人の愛情は、主人公である受けは後に「母性」のように見えるそれを否定して「互いに寂しかった同士が惹き寄せた」と言っておりますが、それはまるで子供を見守り影で支える親と、その親の期待に応えるべく成長しようとする子供のような関係にも見えました。
この話し・クライマックスの顛末に、読者がどう感じるか?意外にそこがポイントじゃないかな?と思われるのでした。
主人公の清見は世界中に顧客を持つ有能なテーラー。
しかし彼は自らをカッターと名乗ります。
一人で切盛りするそのテーラーで、きれいな見た目と物静かな雰囲気に反して彼は仕事に絶対の自信とプライドを持っている人であることがここから解ります。
カッターは型紙を起こして更に布地に鋏を入れる人、もう鋏を入れる時点でその服についての全責任を負い失敗は許されない一番重要な過程を担うポジションなわけです。
そんな彼の元に顧客である海運会社の社長子息・恭介が秘書に連れられてやってくる。
テーラーに来るにふさわしくないカジュアルな服装、髪型、自信のなさそうな猫背。
彼は病気で入院してしまった父親の跡を継ぐべく、その会社に入る為に清見のところへやって来たのでした。
多分、彼等は一目ぼれに近いものがあったと思われます。
清見に仕事以外で誘いを賭けてくる顧客はいましたが、それらを受け入れることはなかったのに、恭介誘われて写真展へ、その後バードウォッチングへと行き、身体を繋げます。
しかし、顧客と一介のテーラーである身分差をわきまえて、ただ一度きりと恭介に引導を渡す清見。
メールも連絡も断ったけど自然ときになる恭介の動向。
そんな中彼の会社である三木汽船の危機が伝えられ、何とかしたいと香港の顧客である富豪の李との取引に応じるのです。
恭介とは顧客の関係であり、物語中にそんなに二人で会う場面はありません。
彼はフリーカメラマンとして自由にしており、父親の跡を継ぐ覚悟はまだ出来ていませんでした。
しかし、清見の猫背の指摘、特別なスーツを着る意味、そんなモノを通して自分がもっとしっかりしなくてはという、周囲のボンクラ息子という評判から努力していこうという姿が見てとれますし、そのような事を清見に語りますので、彼の心の支えに清見がなっていることは確かでした。
そして後の告白でわかるのですが、恭介はゲイでした。
清見については母子家庭で育ち母親を愛していたその愛情が深かった過去や、それから一人でフランスに渡りとても苦労して一人前になり、テーラーを開くまでになった強さもあります。
周囲がすでに地位や富を手にした人々なので、その中で苦労してこれからそうなろうとする恭介を手助けしてあげたいと思う気持ちがわき上がるものもわかるような気がします。
三木汽船の危機にとった清見の行動。
それを知っていても、彼を蔑まず堂々と李と渡りあい、決意を口にする恭介の姿に、もっと自分は頑張るんだと言う清見から与えられた勇気と成長が見てとれて、
冒頭では情けなかった彼が、大人になったようにみえたのでもあります。
清見の行動が許せるかどうか、そこは読者の裁量でしょう。
とても静かで健気な話でしたので、ドキドキしたりハラハラしたりする面はなく、ましてやラストに至っては破局かと思えば驚きの許容がありましたので、複雑になるところなのですが、自分的にはこれもありなんだな~と思えるのです。
切なくて苦しくて精神的には痛い系に属するタイプの大人の恋でしょうか。
オートクチュール専門で固定客オンリーでアトリエを開いている清見はかなりの苦労人
唯一の母親を亡くし、パリで差別的な状況の中でも頑張り貫き、一食の糧の為に
身体を差し出してしまったこともある程ですが、誰かの後ろ盾もないものの
職人としての腕はピカイチで世界に顧客を持つのですが、その気持ちは謙虚そのもの。
そして攻めになるのが海運会社の御曹司ですが、これは出会った時はヘタレ系に近く
父親が倒れ、その為に今までは野鳥の観察や写真を世界を歩きながらしていたような
傍から見れば好き勝手に生きているボンクラ息子に見える恭介。
この作品はそんな恭介の社会人として、経営者としての成長でもありました。
二人の関係は初めはどこか母親を恋い慕う息子と息子を心配する母親みたいな
母性的な雰囲気があってそれから恋におちるのですが、やはり清見は母性的。
だからなのか恋愛内容も何処か恋する熱量が労りが強い気がしてしまうのです。
後半は愛する人を守りたい助けたいが犠牲的精神で発揮される。
そしてそれを不甲斐ない自分自身のせいだと許容する恭介。
これもハッピーエンド展開なのですが、どうにも心が揺さぶられなかったです。