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どんな人にも好かれてしまう特殊能力の持ち主・神明人……とはいえ、明人の人気は女の子にキャーキャー騒がれるという種類のものではなく、どちらかというと、小柄で童顔な明人をポケットモンキーのように愛でるものである……というたぐいのものであった。
もっとも、明人自身にどんな人にも好かれているという自覚はまったくなく、ごく普通の高校生として、学校生活を送っていた。
ただ他と少し違う所と言えば、高校二年生ながら生徒会長を務めている、という点。
しかも、その立場と「特殊能力」を生かして、大規模な改革をやってのけてしまう。
そんな明人の側にいるのが、幼馴染みの三年生・影山忍。
明人の参謀として抜群の能力を発揮する彼だが、彼は政治研究会なる同好会を立ち上げていて、一癖も二癖もあるが、優秀な仲間とともに、現代の腐敗した日本の政治を憂いていた。
ところがある日。
ひょんなことから、明人の特殊能力を使って、明人に日本を支配させようとする案が持ち上がる。
冗談のようにしか聞こえない話だったが、彼らは本気だった!
果たして、日本初の高校生元首は誕生するのか?
という話。
本当は、明人の能力はどちらかというと「特殊能力」という一言で片付けていいものではなく、もっとすごいもののような気がするもので……
正論を正論として主張してしまう。
皆が不満のないように、ベストの正義に持って行ってしまう。
これって、本当にすごい能力だと思う。
制服を自由化した時だってそう。
「あってもいい」
ただ。
「自由に着ればいい」
という結論に持って行く手並みが鮮やか。
制服、反対派にも賛成派にも平等に意見を語らせて。
十分に議論が煮詰まったところで、自分の思う結論をぶち上げる。
その際、最後にもう一度、自分と反対意見の人間に話させることも忘れない。
おまけに、その反対意見をきちんとくみ上げて、制服の自由化を希望するんだったら、制服自由にしても「成績を維持しろ」という交換条件も忘れない。
それならだってみんな、自分で掴んだ権利だ……っていう意識も高まるし。その権利を守る為に、それを維持し続けると思う。
これって言葉で言う程簡単じゃないし。
明人がやるみたいに、スマートに出来る人はなかなかいない。
どんなに上手にやっても、必ずそれに反発する人間は出てくる筈だから。
それをやってしまうのにはやっぱり、明人の「誰にも好かれる」という特殊能力が欠かせない訳だけど。
これが本当に、日本を乗っ取れるような状態になるのか……というのはまだまだこれからですが、とっても楽しみです。
正論がどれだけまかり通るのか、最後までしっかり見てやろう、という気持ちになりました。
政治に絡む話をがっつりストーリーに組み込んできてるもんで、ビミョーに不安だったんです。
青臭い稚拙な論理だったらどうしよう…と思って。そういうのも作者さん計算ずくでのネタならいいんですが。もし裏側に底の浅さ稚拙さが透けて見えたら耐えがたいな…と思ってたんですが、さすが秋月こおさん、心配無用でした。詳しい。さすがだなァと思いました。
もちろんこんなふうに上手くはいかないのが現実ですが、「誰にでも好かれる」という特殊能力を持つ男を主役にすえることによって、上手くいくことにリアリティが出るんですよねー。すごいな。
BLのラブ的要素はめちゃくちゃ薄いんですが、ととも楽しかったです。
なんといっても、夢がある。
この話の面白さは、倍々ゲームのように話がどんどん大きくなっていく痛快さです。
一介の高校生が独裁者になって日本を素晴らしい国にしようっていう荒唐無稽なお話なのに、なぜか説得力があってワクワクするんですよ。
しかし秋月さんの知識量は半端ないな。