准教授と依存症の彼

junkyouju to izonshou no kare

准教授と依存症の彼
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神11
  • 萌×221
  • 萌11
  • 中立1
  • しゅみじゃない8

--

レビュー数
12
得点
173
評価数
52
平均
3.5 / 5
神率
21.2%
著者
四ノ宮慶 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫black
発売日
価格
¥676(税抜)  
ISBN
9784592851127

あらすじ

天才詩人と謳われている大学生の舜には秘密がある。それは性行為をしないと食事ができず、詩も書けないというのだ。そんな舜の後見人である篠崎が、ある日お前とはもうしないと言い始め……!?

表題作准教授と依存症の彼

舜の後見人,大学准教授
天才詩人,大学生

その他の収録作品

  • あとがき&おまけ

レビュー投稿数12

愛について考える

愛を知らぬ子供が愛を感じるまでの過程をジックリ読める作品です。

『依存症の彼』である受けは、母親からの暴力・監禁、そして連れてきた男からの性的虐待という過去を背負っています。彼にとって性的虐待は暴力を振るわれてた時間より穏やかに過ごせた「幸せな時間」と位置づけられていて、保護され劣悪な環境から離れた今も、その影響が色濃く残っています。
「セックスしないとご飯が食べられない」
という受けのために抱いてきた攻めでしたが、ある日「愛してるから、もう抱かない」と宣言。
攻めの言葉が理解出来ずに縋っても「自分で考えろ」の一点張り。
摂食障害も重なって、もがき苦しみながら愛を知っていくーーーというお話でした。


受けは世間を知らず、どこか浮世離れした受けの言動は無垢な子供そのもので。
自分がされてきたことが「普通」だと思ってる無邪気さがあって。
虐待の酷さに対して、それを受けた本人の考えのギャップが遣る瀬無い気分になります。

攻めは受けを愛する1人の男として優しく見守り、
受けから本当の意味で愛されたいと願う姿にひしひしと愛情が放たれていて。
受け視点の「僕」で綴られていく文章の中にありながら、攻めの愛情を沢山感じました。

何も知らない子に対して「自分で考えろ」の一点張りの時は
もう少し他に言い方があるんじゃないの?
ヒントだけでも教えてあげたらいいのに…。
と、攻めの冷たさを感じたのですが、最後まで読むと印象が変わりました。

受けのことを愛するがゆえに、教えた後に雛の刷り込みのように愛されるのでなく、受け本人が自分で気づいて、愛して欲しいと願う。攻めにとっての精一杯のワガママだったんだなぁと。。。

と同時に「自分で考える」も自立の1歩で、受けがこれから社会に出てくための基盤。
途中、摂食障害がひどくなる一方で、見ている方も忍耐を要する時間だったはず。
それを最後まで見守り続け、結果、受けが成長する足がかりになって、最初は冷たく見えた「自分で考えろ」すらも攻めの愛情を感じることが出来ました。


愛を理解しようともがく姿は読んでいて苦しいものの、それだけに依存症の彼が成長した姿に涙。
「愛」という形なく朧げなものをジックリ考え、感じ、2人で作っていくーー素敵な作品でした。


余談ですが、タイトルに「准教授」とありますが、あまり関係ないかな?
特に准教授の立場だからどうこうといった絡みはなかったです。
あと、編集者さんがちょっと不憫w
最後2人からのプレゼントで多少は頑張りが報われて良かったです。



2

溢れる思い

奈良千春さんの表紙だとついふらふらと惹き寄せられてしまうのですが。
性行為しないとごはんを食べられない子という設定にも興味をひかれ購入。
こういう設定に興味をもつというと眉をひそめられそうですが、BL、小説の中のお話ということで許してもらえれば。

恭平の「愛している」の意味がわからない舜とわかってもらえない苦しさに思い悩む恭平。
なかなか心苦しいお話だけれどもわりとすんなり読めました。
虐待されていたシーンが直接的に書かれてないからでしょうね。
何より恭平が舜を溺愛してるのがいいんですよね。
読み進めてるうちにどんだけ好きなのって思ってしまいました。
自分の側からいなくなることを恐れていたとか。
舜が好きとか愛しいっていう感情がわからないと、恭平の苦しみはわからないだろうから、序盤で舜を突き放すようなもうお前を抱かない発言になったんだよなぁ・・・。
うまくまとまって良かったです。
舜が詩を書き綴るシーンがすごく好きでした。特に後半の恭平への溢れる思いを書き綴るところ。
舜の書いた詩を読んでみたくなりました。
その後のお話が同人誌で出てるようで、ちょっとそちらも読んでみたいです。

2

恭平側のダークな葛藤が読みたくなる

◆あらすじ◆

主人公は、大学生の舜。彼は幼い頃母親の男に「食事の前にセックスをするのが常識」と調教されたせいで、セックスなしに食事を摂ることができません。
舜に食事をさせるため、そして舜に対する愛情から、毎日舜を抱く後見人の恭平(准教授)。
しかし、詩人としての才能を持つ舜を世に出すことに使命を感じ始めた恭平は、セックスと食事を切り離し、セックスは愛する人とするものだということを舜に教えるべく、彼を抱かない決意をします。
突然セックスをしてくれなくなった恭平に戸惑い、苦しむ舜。
が、やがて舜は恭平への愛を自覚し、食事の前の儀式ではなく愛情の証としてのセックスを求めるようになっていきます。そして愛を知ったことで、舜の詩人としての才能もさらに開花していく…
セックスなしには生きられない、でも愛の意味を知らない青年・舜の葛藤と成長を描いたストーリーです。

◆独断と偏見によるハイライト◆

個人的にこの作品で一番印象に残ったのは、なんといっても冒頭の恭平と舜の衝撃的な「食事の前のセックス」。
男性はそもそも空腹時のほうが性的欲求が高まるものらしいですが、食欲と一体の強い渇望感でセックスを欲しがるよう調教された舜、どんだけエロキャラなんや!って感じですよね。
本人が無自覚なだけに、歯止めも知らず…大胆できわどい設定です。
「はやく……シて」
と舜にセックスをねだられ、恭平は料理が並んだダイニングテーブルで彼を抱きます。
敢えて料理の横でというところがまた…しかも、恭平は和服。
なんとも淫靡な雰囲気は、さすが花丸ブラックですね。
行為の最中、何度も「愛してる」と繰り返す恭平。でも、愛の意味を知らない舜に恭平の想いは通じない…体は感じ合っているのに、心は一方通行。切ないシーンです。

◆レビュー◆

さて、冒頭でこれだけのエロシーンを展開しておきながら、この後「もうセックスはしない」と言い出す恭平。
えっ?そうなの?もっとしようよ…と思ったのは、舜と私だけじゃないはず(笑)
…それはともかく、ここから舜のセックス依存症との闘いが始まります。
が、舜の病状自体がかなりご都合主義な上、「食事とセックスを切り離すこと」と「恭平への愛に目覚め、愛を発露としてセックスを求めるようになること」の区別も曖昧なため、ともすれば恭平による「舜の中で自分への愛とセックスを結びつけるための再調教」のようにも見えてしまう。(勿論作者の意図はそうではないんでしょうが)
そもそも、冒頭で、よりによって料理の並ぶ食卓の上でセックスしてる時点で、恭平ってほんとに舜の病状を気遣ってたの?って感じですし(苦笑)
そんなこんなで、いまひとつ感動の波に乗り切れませんでした。

ただ、恭平の側の葛藤も、相当大きいのは確か。
そういう意味では、舜の一人称進行ではなく、舜・恭平双方の心理を深く描ける三人称進行のほうが、共感できる部分も多かったのかなと思います。
一人では生きられない舜を籠の中で愛玩していたいという思いと、才能ある彼を世に出さなければならないという思い、愛しているから抱きたいという思いと、愛されてないのに求められるのは辛いという思い…アンビバレントな感情の狭間で葛藤する恭平の苦悩も、もっと奥深いところまで覗いてみたかったなと。

面白くなくはないんですが、面白いと言うには活かしきれていない設定や伝えきれてないメッセージがまだまだ残っていそうな中途半端感が…
タイトルが素敵で期待していただけに、個人的には微妙な後味の作品でした。

5

愛の言霊

恭介の欲がなかったら舜は目覚めなかった。

セックスをしないと食事はしてはいけない。
恭介がいれてくれたココアが一番好き。
愛してるってなに?
女は嫌い、みんなうるさいし怖いから。
冒頭から恭介の悲痛な叫びが読み取れます。
朝から何も食べておらずお腹を空かせ恭介の帰りを待つ舜。ようやく、食事、、、の前にセックス。
セックス中に他意はないが、ご飯を口にする舜に恭介は悲しくなる。舜が求めるセックスの意味と恭介が求めるセックスの意味がまったく異なり舜に同じ気持ちを求める。

セックスをしない宣言を突然する恭介に自分を拒まれたようで悲しくなりパニックになる。
ご飯を食べるなと言われてのと同じだもんねー。
シネって言われてるのとかわりないよね。でも恭介はちゃんと言う。愛してるよ、舜。
舜は愛してるを理解できないからシネと言われたも同然。

舜の異常な体質は幼少期の性的虐待がかかわっておりますが謎のお兄ちゃん。
こやつ、、、、ど変態ですね。さらっと流されていてあくまで舜が愛の意味、セックスとはなにか?がメインです。
恭介のお兄ちゃんと同じになりたくない、愛してるんだ!と強い気持ちは他人には十分伝わるのにまぁったく舜には理解されず舜も拒食気味で読んでて編集者の人が可哀想でした(笑)

舜に囚われた恭介の足掻きが生んだ舜の再生のお話し


ラストはかっこいい終わり方だなぁと思いました。

3

社会派か純文学か

バックボーンが暗いので、ドロドロとエグくなったらキツイ内容だけど
見事に昇華させてくれた感じでとてもよかった。
程よい中間地点って感じかな。
徹底的に幼児期の事件を掘っていけば社会派。BLにくくられず
読まれる幅も広がるかも。
けど、このくらいがちょうどいいとも思う。子供の不幸は現実だけで十分だし。

後半、准教授の己が執着心との葛藤もなかなか( *´艸`)萌え萌え

基本依存症の彼視点だけど、准教授視点からの1冊を読んでみたい。

そして何より宮脇蒼の詩を是非とも読んでみたいとも思う。

・・・にしても奈良千春先生のイラスト、、神です

3

愛情をかけた分だけ伝わるものがある

准教授という言葉と奈良先生の絵に反応して買ってしまいました。
う~ん、用語の扱いや設定にOuh la la ~。いつもそんなことを考えながら読んでいるわけではないのですが、脳みそが自動的に判別するので仕方ないです。
この作品に限らず専門部分を正しく描いた作品自体あまりないですし、一般的な読者にとってはそれは必要なものでもないだろうからこんなもんかなと思って読んでいます。

准教授という立場の人でもハタケが違えばまぁ…普通の人です。
普通の人が専門家と同じように病気が治せたら専門家はイランという話になります。
素人考えで間違えたやり方で接することなんて日常茶飯事、普通のことだろうと思います。
そんなつもりがなくても自分のエゴで相手をひどい目に合わせたりすることも…。
もちろんそれが良いことだとは思わないけれど、誰だって後から「しまった!あんなことするんじゃなかった」なんてことはいくらでもありますよね~。
そんな恭平の間違ったstimulusの仕方が気になる物語ではありましたが、blackだからむしろ間違えてくれたほうがドス黒い展開になるのでそれはそれで良いかと。

見所としては恭平(攻)が愛情をかけた分だけ、それが舜(受)に伝わっていた所だと思います。
ツッコミどころはさて置いて、後半のストーリー展開は良かったです。
ねんねな子を育てる楽しみというか?なんなんでしょうね、萌えまする~!

このお話は舜が虐待を受けていたことや摂食障害ということから舜が愛情を求めているお話のように思いがちですが、恭平も強く愛情を欲しているように感じました。
だから恭平は舜に「愛している=セックス」ということに、どうしても気がついて欲しかったんだろうと思いました。
もちろん舜の病気を治したいという気持ちもあったかもしれませんが、
手荒な恭平のやり方には「舜に愛して欲しい」というエゴが勝っているように思えてならなかったです。
しかしそれは恋愛ごとにおいては自然な欲求だと思います。

准教授と依存症の彼というタイトルでしたが、恭平も立派な「舜依存症」でしたね♪
攻めが溺愛系も好物なのでこれはこれで楽しめました。
先生がプロフ欄にてゼミの仲間と研究室でワイワイやったことを懐かしく書かれておられましたが、個人的にはそんな日常生活のお話も好きなのでいつか研究室でワイワイやっているようなお話も読んでみたいな♪と思うのでした。

6

セックスって?

「可哀想にという同情」と
「頑張れという応援」と
「ゆっくりとという見守り」
の気持ちが私の中に湧いてくる1冊でした。

過去に虐待や相手に都合よくつけられた間違った常識。
食事をするためにはセックスをしなければならない
言葉通り後見人となった恭平にも同じことを求める瞬。
だけど本気で瞬を愛してる恭平にとってその行為は意味のないもの。
そのためにセックスを拒み瞬にどうして自分なのかを考えてもらおうとするのですが
勿論すんなりといくわけもなく…

離れてみたものの焦りすぎたのかまたも入院という羽目になってしまうのです。
でも少しずつ瞬の中に恭平である意味がだんだんと湧き上がってきます。
勿論すべてが「はい、解決!」という簡単なことではありませんが
やり直していくにはものすごく膨大な時間と根気、そして愛情が必要不可欠。
それらはこれからも恭平が与え続けてくれると思うので見守るばかりです。

6

こんな言葉じゃ伝えきれない。

偶然サイトで新刊が出ていることを知り、あらすじを読んでみたらなんだか気になる感じだったので早速購入。
………面白かったー。
設定が設定なので読む人を選ぶ作品ではあると思うのですよ。
摂食障害とか性的虐待とか。
間違った常識を植えられて育った舜が少しずつ変わっていく様子を描いた作品。
閉ざされた環境の中で育ったせいもあって常識を知らず。
これまで、植えられた常識の中で生きてきた部分があって。
それは、「お兄ちゃん」がいなくなって「恭平」になっても変わらず。
なのに、恭平が突如、その世界観を壊そうとしたことで2人の間に変化が生まれてくる。
それは、恭平のどうしようもなく耐え切れない想いだったり、亡き養父から託されていた思いもあってのものだけれど、そういった常識を持ち合わせていない舜には到底受け入れられる内容ではなくて。
それは舜の生存の関わることでもあって。
それが間違っているとわからない舜には苦しいことであって。
とにかく恭平がせつないですよね。
相手は「何も知らない子供」とも言えるような存在で。
想えば想うほど、その苦しさは増すようで。
舜が変わらなければ、恭平の想いはどこへも行けないのです。
舜がちゃんと「考えること」
それでしか2人の関係は前に進めなくて。
ゆっくりとでも舜が成長していくことで、また変わっていく2人。
恭平を想う気持ちがなんなのかと考え始めたことで見えてくるこれまでの恭平にしていた仕打ち。
そのせいもあってかなかなか求めることができなかったりもしたけれど、最後にはちゃんと「求める理由」も見つけられて幸せになれてよかったです。

「その唇を~」では、恭平の抱える不安に的が当てられています。
これまで、舜の世界の大半を占めていたのは恭平で。
けれど、通常の生活ができるようになってくると舜の世界は広がっていく。
その中で、自分の存在は果たして必要なのか?と不安になってる恭平がなんだかかわいくも思えてきます。
舜は恭平への愛情を詩にのせて紡いでくれるのに。
それだけでは不安になってしまう恭平。
1人よがりなんじゃないかと思ってしまう恭平。
そんな恭平の心を癒してくれるのはやはり舜でしかなくて。
舜の言葉がちゃんと恭平に届いているようでよかったです。

6

受けちゃんを抱かない攻めが、来ましたよ

四ノ宮先生は、これが2冊めです。
1冊めは『玩具の恋』で、健気に攻めへと頑張る受けの話だったけれど、本作の方が格段に印象深いですね。
BLを楽しむ為の文章は読み易く、舜の変化や篠崎の葛藤を読み取ることができました。

ただですね、セックス=食事、の舜に、
「私のこと愛してないなら、もうしないー」って篠崎の決断は、舜にとっては青天の霹靂ですよ。
点滴の24H栄養なんてたかが知れてる。
今までずっと、可愛い舜の為に・放したくない為にしてきたセックスを、舜の身体を壊す事も良しとした篠崎はどうなんでしょう?
切羽詰まっての決断だろうけど、何か対策を立ててからなら未だしも、「自分で考えろ」とは殺生な!
ここらを考えると、おとなのくせに学者のくせに攻めのくせにと、身守りと舜頼りの待ちに徹底した篠崎に橘はイライラしてました。

冒頭、舜の症状を、ウルフ・チルドレンみたいだなーと思ったんですが、ふつふつと疑問が湧いて来てました。
ウルフ・チルドレンが人間社会に戻っても人としての行動ができないのと、舜の、初・人との交わりでの「食事の前にセックスするのが常識」の刷り込みは同じなのかな?
刷り込みは、成長や環境の中で変わっていくものだし。
詩作は天才でも、大学入学の知識は蓄えられても、常識や人との対応能力が足らないんだよね。
じゃ、アスペルガー型自閉症って感じじゃないの?
だったら、自閉症のヘレンケラーが立ち直った様にサリバン先生の様に、篠崎はもっと早くどうにか出来たんじゃないのな?
子供の駄々「セックスして(腹減った)ー!!」が継続されたのは、小説だからだろうけど。

そう、小説だから、なんだかんだ上手く転がってくれて、結果オーライで良かったです。
でも、篠崎准教授には「もっと頑張りましょう」のハンコを押した橘でした!

6

心の問題の描かれ方が秀逸

母親から受けたネグレクトや暴力、その交際相手から受けた性的虐待と刷り込みのため、「セックスしないとご飯が食べられない」と思い込んでいる舜。
後見人の大学准教授・恭平とセックスすることで、食事を摂り、天才的な詩の才能を開花させてきたが、大学生となったある日、恭平に「もうお前を抱かない」と告げられる。
セックス=生きるために必要な行為を失った舜が、摂食障害や詩が書けないスランプに苦しみながら、人を愛するということを少しずつ理解していく話です。


この作品で興味深く思ったのは、「虐待のシーン」が殆ど出てこないことです。
母親とその交際相手から虐待を受けた事実だけが、ニュース等から情報を得た部外者によって語られています。
舜視点の回想がほぼ出てこないため、安易に同情したり理解したりが難しい。
舜を救いたいが見守ることしかできない恭平や柊木と同じ目線で、舜が再生できるようハラハラしながら読み進めることになります。
部外者の介入が難しい、当事者ですら形が見えないトラウマというものの複雑さがうまく物語に組み込まれており、かなり惹きつけられました。


詩の才能を含め舜を深く愛する恭平だが、
愛が何なのか分かっていない舜とこれ以上行為を続けることに耐えられない。
しかし、セックスできなくなり衰弱していく舜を見ていても辛い。
そんな恭平の気持ちをおぼろげながら理解していく舜が、
熱を出した恭平に、今度は自分が恭平の辛さを和らげたいと思い自分から会いにいき、愛という感情に気づき始める場面が印象的でした。
セックスを介した関係でなくなったことで、日常の何気ない恭平の優しさに気づき、それが積み重なってふと変化が訪れるような展開がとても自然で無理がない。


序盤は苦しむ舜が痛々しいですが、
読み進めるにつれ着実に希望が見えてきて、最後は最高に甘く幸せな結末に♪
愛と再生がゆるやかに描かれた素敵な作品でした。

9

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