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実はシリーズだとも知らずに読んでしまった初読みなのですが、
以外にもこの1冊で結構面白いと思える内容になっていました。
時代背景は明治時代中期の横浜が舞台、同じ時代でも横浜だと異国情緒がありますね。
そして、当時の情勢や登場人物も実在していた人物が登場しているようなのですが、
残念ながら、横浜に詳しくないので、実感がわかないのですが、
流石に、秘密結社と言われたフリーメイソン、今は友愛団体と言った方がいいですが、
三菱財閥の岩崎弥之助なんて名前ぐらいはやっぱり解る訳で、しっかり下調べしての
作った作品なんだと感じますね。
内容的には西洋骨董店「時韻堂」を営むハーフの深川芭介を中心にした推理もので
海外から持ち込まれたロウ付けされた人間の片手や、盗難、そして殺人事件が複雑に
絡み合い、横浜税関職員の高澤と部下の田汲たちと共に事件を探る内容。
そして、前作を読んでいないので解らないのですが、「プランシェット」なる
幽霊を呼び出す事が出来る代物があって、それを使って確信に迫る事になるようです。
イギリス版コックリさんと思えば間違いないと言うか、そもそもの発端かも。
ファンタジー風味と推理ものが融合しているような作品ですね。
そこに、匂い系と言うような微かなBLらしき雰囲気があるにはあるのですが、
無いと思って読んだ方が間違いないし、期待もしないで済みます。
読み物としては意外に面白い作品でした。
「ヨコハマ居留地五十八番地」シリーズ最終巻。
西洋骨董店「時韻堂」の店主・深川芭介、横浜港の税関職員・高澤輝之丞と田汲直之助は飲み友達。仲のいい彼らに別れの時が迫ります。芭介は外国人である父親から店を手放すように言われていました。田汲は部下の失態のため左遷される可能性が濃厚で…。
ある日、芭介は高澤から蝋漬けの干からびた手首を預かってほしいと頼まれます。その手首は税関を通った荷物の中にあった物です。ほんの悪戯心からの行動でしたが、翌日税関に盗みが入ります。どうやら何者かが手首を探しているらしいのです。
さらに上流階級の人々の間で噂になっている「栄光の手」なるものにも関係があるようで…。殺人事件も発生し、謎が深まっていきます。
フリーメイソンが事件に大きく関わり、オカルト色が強まった内容でした。しかしミステリとファンタジー、どっちつかずといった感じでしょうか。推理というほどのことではないし、ファンタジーとしても微妙。史実に沿った推理小説、旧来の慣習と近代化の波の間で混沌とした明治時代を舞台にしたファンタジー小説、いずれかにすればもっと良くなると思います。このシリーズ全体に言えることですが、物語としては中途半端な印象しか残りませんでした。キャラ萌えでミーハーな楽しみ方ができるかというとそうでもない。せっかく登場人物も時代背景も魅力的なのに、素材をストーリーに上手く組み込めていない点が残念でなりません。
最終巻なので、着地点に向かって登場人物も物語も収斂されていく。イギリス行に田汲を同行させようと岩崎弥之助と丁々発止のやり取りを繰り広げる芭介はさすがだなあと思いましたが、全体的には小さくまとまったという印象。
ちなみに本作のタイトル「紅蓮楼」は物語にリンクしているのですが、酷い題名だと思いました。