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martini ni kuchiduke wo
表題作と続編の中編2本と、7ページのSSの計3本が収録されています。サブキャラで登場するバーテンダーの中井さんが酸いも甘いも噛み分けたダンディで素敵でした!
「マティーニに口づけを」
芝浦に脅され愛人兼秘書を勤めていた氷崎(受け)は、芝浦になにかと目の敵にされ会社をのっとられた大堂(攻め)と組んで、芝浦から自由になろうと目論み…という話です。芝浦が氷崎を好きなのに思い通りにならなく酷い仕打ちをして更に嫌われ…という悪循環がちょっと気の毒でした。
「 テネシーワルツで乾杯を」
恋人同士になった二人。芝浦の金で買ったマンションから引っ越そうと計画する氷崎を、大堂は反対する。微妙な関係の中、大堂に好意を抱く桜田が、氷崎が働くバーに通い…。最後のラブな二人と、桜田にカクテルを次々と出す中井が面白かったです。
「スイートアゲイン」
子猫を拾ったことで、引越しをすることを決定。穏やかで新しい暮らしに思いを馳せます。
コミカルではありませんが、重くもなく切なさもありません。麻生海さまのイラストも色っぽくて素敵です。大人で包容力ある攻めがお好きな方にお勧めです。
芝浦の罠に嵌められて無理やり職場を辞めさせられ秘書と言う愛人に貶められた受け様は
同じように芝浦の策略で2度も会社を乗っ取られた攻め様を利用して芝浦から逃げる為の
餌として攻め様に近づくが、相手には芝浦に復讐をする気が見受けられなくて、
芝浦から逃げる為に相手を取り込もうとするが手ごたえがない返答にいらだつ。
しかし、口説き落そうと攻め様の後を追って入った店のバーテンに口添えされた途端、
攻め様は受け様の話に乗る事になります。
その店は攻め様のお気に入りの店で、その後も書下ろしでも舞台になる場所なのですが、
そこで出されたカクテルの名前がタイトルになっています。
まぁ、後半で攻め様の本当の気持ちが分かるのですが、二人にとっての運命の場所ですね。
受け様は、元証券アナリストで、父親の病気治療で高額な医療費を支払う為に
インサイダー取引をしてしまうのですが、その証拠を芝浦に握られ、脅されるながら
愛人のように扱われる事になるのです。
そんな芝浦が一人だけ執拗にこだわり嫌がらせのように執着しているのが攻め様。
二人は大学時代の同窓なのですが、理由も解らず一方的に絡まれるのです。
そして芝浦に会社を乗っ取られながらも飄々としている攻め様は、受け様の計画に
乗る事になるのですが、芝浦に虐げられ身も心も疲れている受け様の自宅に同居しながら
芝浦を陥れる準備をする事になります。
芝浦の事もあり、他人がいるところで休むことが出来なかった受け様ですが、
何故か攻め様だけは例外で傍にいても気にならず逆に落ち着くように感じ始める。
受け様は無自覚で攻め様の存在全てを受け入れて恋してたんですよね。
攻め様はなにやら直ぐに気が付いていたみたいな雰囲気です。
最終的には復讐をする事よりも、受け様を助ける為だけに攻め様が動く感じです。
受け様は利用できると言う思いから自分から近づいたのですが、実はその前に既に
攻め様も下心ありで動こうとしていたところだったのです。
攻め様にしたら飛んで火にいる夏の虫状態と言うか棚ぼただったんですよね。
もちろん綺麗な形でハッピー展開になるのですが、芝浦との直接対決がなかったからか
ドロドロした感じも無くてさらっと読める作品になっていました。
でも、この悪キャラ芝浦も意外に可哀想だったりするんですよ、やってる事は非道だけど
実はかなり受け様を本気で好きだったからの行動なんですよね。
出だしが悪かったから、最悪の結果になった訳で、恋愛に不器用だったのだろうと思うと
お気の毒ではありますね。
書下ろしは恋人同士になった二人がすれ違う事になります、攻め様を狙うお邪魔虫が
二人の間をかき乱し混乱させるようになり、誤解や嫉妬からトラブルに発展。
攻め様の必死さが伝わるお話でした。
過去に弱みを握られて以来、芝浦に無理やり抱かれ続けている玲司は彼の元から逃げ出したくて仕方がない日々を送っている。
一緒に復讐を企てようと同じように芝浦に陥れられた大堂に近づいたところ、彼の飄々としていてポジティブな人柄に惹かれていき、自然と意気投合して相思相愛に発展していく過程はテンポ良く読める。
ちなみに、陥れた側の芝浦と大堂の間には過去に何かしらの因縁があるらしい。
芝浦も常に大堂と比較されるプレッシャーを抱え続け、玲司を心底愛しているのにアプローチが悪いせいで拒絶されたままで、彼自身のあまりの不器用さには同情したくなってくる。
そんな芝浦の執着心を心底嫌がっている玲司とのやり取りの部分が妙に気になってしまって、なんか当て馬・芝浦の扱いが勿体ないと思った。
ただこの話、背景となる仕事描写が薄く、買収とか起業とかが良く解らない。
大人同士の恋愛でいいムードなのに、肝心の攻めの大堂について仕事面で有能な男ぶりを実感できないのが残念。
後半の『テネシーワルツで乾杯を』は、秘書の仕事を辞めた玲司がバーテンダー・中井の店を手伝うようになってからの話で、大堂に横恋慕しながらてんで相手にされなかった常連客の桜田に振り回されてしまう。
こちらのほうはさらりと読めて、二人のラブラブぶりが伝わって読んでいて頬が緩んだ。