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first love
うえださんのデビュー後間もない時期の作品です。
ひとことで言えば『地味』なんですが、しっとりした雰囲気のあるストーリーでした。一種の王道には違いないんですが、心情描写が細やかで、ありがちなだけで終わってないんですよね。
春季(受)は高校時代の初恋をとても大切にしていて、でも相手(浩之)はノーマルだから、とせめて友達としてそばにいたいと願ってるんです。
浩之がいるから本気にはならないけど、体の相手が欲しい、と原口(攻)を誘う春季。
なぜ好きな相手に操立てしないのか、と訊かれた春季の『時には(体だけでも)したくなるし。男だから』というのが、すごく印象に残りました。こういうのって、BLでは意外とスルーされてるんですよね。当然の前提だから?でも、あえて言われると『そうだよなあ・・・』と妙に説得力を感じました。『男女とはセフレの捉え方そのものが違うのかもな~』といまさらのように感心してしまったんです。
もうひとつ、カミングアウトについても。『親には絶対言えない。(ゲイだから)一生自分の家族は持てなくて、家族は今の親兄弟だけだから、いつまでも仲良くしてほしい』。
どちらもドラマチックさはまったくなくて、すごく『フツー』なんですが、その普通さがかえって新鮮だったんですよ。
とにかく、すべてにおいて『地に足がついた』が感じがするんです。その分、派手さは皆無なんですが、そこがいいと思いました。
そして、原口が最初の印象とはちょっと違って、意外と誠実で思いやりがありましたね。別に、もともと『傲慢な男』というわけじゃなくて、単に『何よりも(今は)仕事が最優先』なだけなんですね。
『セフレ』として付き合いながら、夜だけではなく、昼間に外でも合うようになり、ちょっとしたことでもめて喧嘩したりするようになって行くんですが・・・体だけのドライな関係のはずが、最初の思惑とはだんだんと外れて、そうではなくなって行くんですよね。
原口は、本当の意味で『包容力』攻だったと思います。浩之が会社を辞めて郷里に帰る(そして彼女と結婚する)という東京での最後の夜に、春季を本気で愛している自分に気付きながらも、『浩之に会いに行って告白しろ』と春季を送り出すくらいですからね。
結局、春季は浩之には何も言えないまま最後の夜を友人として過ごし、原口の元に戻って来てしまうわけなんですが・・・
また、浩之が『悪気なく無邪気で無神経な男』じゃなかったのもよかったですね。ラスト、原口が『浩之は春季が好きだ』というのは、私もそうだろうなと思いましたが、ストーリー上には浩之の本当の気持ちは出て来ないんですよね。あくまでも他のキャラクターの想像だけで。この余韻もよかったです。私はわりと『はっきりさせたい』タイプなんですが、それでもこれは納得できました。
これという『萌えどころ』はない、ホントに淡々とした日常を追った作品なんですが、なぜだかとても好きです。
ただ、イラストは今一つでしたね。もうちょっと何とか・・・と思ってしまいました。