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いっぱい苛めてあげるよ――利也が泣きだすくらいに。
shakunetsu no inryoku
明神さんの大人な2人の絵の本は、
どうしても買いたくなるという衝動を抑えられませんね(笑)
しかも、藍生さんだし!と思い、迷わず購入しました。
サラリーマンの利也は、昔の恋人公延と再会する。
付き合っていた当時は、公延の束縛が耐えきれなくて、
自分から振った利也ですが、
振ってから自分がどんなに公延のことを好きかを知ります。
そんな利也に対して、社会人になり公延も、
利也が自分を振った理由を痛感し、
子供ぽく束縛し続けた自分を恥じ、大人になって
利也の前に立ちたいと考えていました・・・。
大学生のころの公延、そりゃ重い!!!
利也も自分に向き合えずに、弱かった。
そんな2人がお互いに向き合うために成長し、再会した物語といえると思います。
時計がキ―となっており、2人の生き様を表せているように感じました。
自ら相手を傷つけ手放してしまった年下の元恋人と再会し、今でも好きだと思いながらも
昔は熱さを感じさせる瞳が今では冷めた目で自分を見ている相手に叶わぬ思いだと、
言い聞かせても忘れる事が出来ない思いに揺れ動く受け様視点で描かれているお話。
前半部分では、仕事が出来る大人の男になってしまった攻め様に、昔の面影を探し
もう1度やり直せたらなんて切ない思いを抱いている受け様なのですが、
過去に別れた原因が、社会人になりたてで、全てに余裕が無い時期に、
年下の攻め様から束縛され、挙句一緒にいたいから今の仕事を辞めて近くに就職してなんて
我儘言われて、受け様は疲れてしまったのですよ、そして感情のままに受け様から
別れを突き付けて・・・
でも、別れたから初めて受け様は攻め様が自分にとってどれだけ大切で愛してる
相手だったのかを思い知る事になるんです。
前半で再会した時も、受け様が自分から離れたのに、受け様が一方的に過去の恋に
捕らわれているのかと思うような展開なんですが、次第に攻め様の本音が見えてくる。
もう、攻め様の本音が見え始めてきたらとても1歳下には思えない程受け様にベタ惚れで
嫉妬深くて、やけに可愛い男に見えてくるんです。
大学卒業して直ぐの頃だと自分の事で手一杯で、相手の事を思いやる事が出来ないって
ありがちなだけに、理解出来ちゃいます。
でも、攻め様の気持ちも分かる気がする、一足先に社会に出て行った愛する人を
束縛したくて、働いている時間は一緒にいれないからそれ以外はベッタリしたいって
気持ちは恋すればこその愚か者なんですよね。
当時の受け様にとっては、重荷になってしまう結果になっての別れですが、
別れた後に、攻め様も後悔をするのですが、その後悔は受け様とは違っていて、
自分の子供みたいな態度を反省して、いつか受け様を今度は守れる大人な男になって
受け様ともう1度やり直したいって健気君でもありました。
過去のその痛みがあるから、余計に相手を思いやる気持ちが生まれるような感じで
止まった時間が再び動き出して新しい二人の未来の時を刻み始める。
攻め様の受け様への思いが詰まったような時計が印象に残る作品でした。
Kindle Unlimitedで読みました。
過去に年下の攻めが社会人になった受けへの束縛を強くして受けに愛想をつかされてしまうんですけど、受けも攻めも未練を残している中で再会するという王道展開。
他の作品だとここから一気に受けが距離を詰めてあの手この手(主にセックスでなしくずし)なのですが、この作品はどちらかといえば仕事で一人前になった俺を見てくれ!という攻めがけなげで強引に迫らないところに好感が持てました。ヨリを戻した途端に攻めがワンコに戻るのも可愛い。ただ、大きな起伏があるわけではないのでドキドキ要素は少なめに感じました。
表紙イラストの青色の時計が印象的でした。
公延(攻め・表紙右側)の腕にもあるのですが、内容とも合っていて素敵だと思います。
表題作と続編ショートの2作品が収録されています。
「灼熱の引力」は利也(受け)の視点、「澄明な引力」は公延の視点でストーリーは進みます。
大学時代に、利也は公延に押されるかたちで付き合い始めます。利也が社会人になって札幌に異動してしまい、遠距離と仕事の多忙さが原因で、1つ年下でまだ大学生の公延とすれ違って別れます。それから5年、二人は偶然再会し、仕事を一緒にすることになるという話です。
「すれ違い」が見事な作品だと思いました。
それぞれがどうしてそういう言動をしてしまったのかがスムーズに納得できますし、二人ともの心情が分かる気がするので、両片思いが好きな私はそのじれったさが楽しかったです。
ただ、ちょっと気になる部分がありました。
利也は札幌に異動になったのですが、序盤に現在店長をしているレストランの場所がなかったので、公延が札幌で職に就いたのか利也が戻ってきたのかが分からず戸惑いました。(終盤で札幌には2年しかいなかったと分かりますが。)
公延が利也に「会いたくなかった」理由として、まだ大人じゃない、早すぎる。と言っていた割りに、翌月の誕生日にはプレゼントしようと思っていたのも、「新製品発表会が終わってからにしたかった」とでももうひと押し欲しかったです。利也に再会した時点で、提案は通っていたし時計もできていたのでしょうから。
また、時計をプレゼントするのを前日にした場面も、公延が「家まで来てほしい」のを利也は了承したのに、車が家に向かうと「約束と違う」と思う場面があって、あれ?と思いました。
公延の部屋のダブルベッドもちょっと気になりました。別れてから相手はいたのかなと。
細かい部分が気になってしまう質の私はそんな風にあれこれ考えてしまいましたが、受け大好きな年下攻め、素直になれない年上受け、社会人カップル、仕事モノ、すれ違いの展開がお好きな方にお勧めの作品だと思います。利也のレストランのシェフ・西野がつくる料理も美味しそうでした!