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あまり『萌え』がない渋い話ですが、とてもよかったです。
あらすじから受けるありがちな印象と、中身はかなり異なっていて、
どちらかと言えば、痛い系の作品です。
あまり華美な描写は使われませんが、
状況説明だけに終始するような芸の無さもない。
構成も無茶な展開はなくしっかりしていて、人物造形も薄っぺらさがなく、
地に足のついた、読み応えのある作品でした。
ただ、文章と同じで、
キャラの心情にも華美な(キラキラしてる)ところがないため、
分かりやすく読者のハートを掴むような萌えはありません(苦笑)
また、最初、受けがゴミ屋敷で自堕落な生活を送る様子がひどいし、
攻めは最後までかなり優柔不断ではっきりしないし、
もう一人、嫌ーな人が主要人物で出てくるしで、
この辺りで引っ掛かりを覚えると、楽しめないだろうな…とも思いました。
登場人物たちの感情は曲がりくねってまっすぐ進まないし、
もどかしいのだけど、その不器用な人間臭さが愛おしくなるような
読後感でした。
江田は幼い頃に両親を事故で亡くし、児童養護施設で育った過去があります。
変にひねたりはしていませんが、
生育歴のせいで江田は行動も気持ちも妙に縮こまっていて、
色々自己完結しており、誰かと深い気持ちのやり取りをする素養がありません。
こんな江田が出会ったのが、信じられないくらい厚かましい男・林。
江田は、最初は林の生活や言動を、不愉快に思っていたのですが、
何度も会ううちに、林に対する見方が変わってきます。
作中で、江田自身がストックホルム症候群に喩えていたりしたけれど、
しょっちゅう顔を合わせてる相手のことを不快に思いたくなくて
無意識に長所探しをする、
あるいは単に情がうつるということはあると思うし、
林の長所は江田に欠けてるものだったので、
この辺りの心情変化には、私は違和感を感じませんでした。
主要登場人物の三人目、江田が密かに憧れていた上司の増岡は、
ノンケの同僚に10年も片思いをしているのですが、
これが、全然報われないで泥沼なところが、リアリティがあって良かったw
最初、二人は好き合ってるのかと思った自分は、
BLご都合主義のぬるま湯に浸ってるなと反省しました。
江田×林なのに、江田の優柔不断、優しさ?義理堅さ?のせいで
物語は後半、予想外の展開を見せます。
林と別れて、増岡の面倒をみることにした江田の決心には、
他人事ながら、読んでいて呆然としました。
でも、王様気質の割に一途で粘り強く、
綺麗な容姿に見合わない男前っぷりで
優柔不断な江田を辛抱強く愛し続けた林のおかげで、
二人は別れてから三年後に、無事によりを戻します。
付き合ったり別れたりのサイクルが早そうなゲイのカップルなのに
こんなに一途な二人ってあり得なそう・・・って思ったけど
そこは、BLファンタジーで目をつぶっていいところですよねw
お幸せに♪、と温かな気持ちになるエンディングでした。
非常に読み応えのある「小説」に出会えたと思います。映像で見てみたいと感じました。それにしても…タイトルとあらすじでかなり損しているような気がします…。なんだか軽い印象になってしまっていて残念です。
主人公の江田(攻)は、真面目な反面、生い立ちの影響もあり恋愛や人の情というものに鈍く、それゆえ頑固だったり優柔不断だったりする面倒な男。一方の林(受)は、ゴミ屋敷の原因でもある出来事から心に大きな疵を負っている厄介な”王様”ですが、江田との交流を経て徐々に本来の姿を取り戻していきます。ゴミ屋敷問題が片付き、季節とともに二人の関係も深くなっていくのですが、ある日、衝撃的な事件が起こってしまいます。
江田はずっと悩んでいます。そして、江田だけでなく、登場する大人たちは皆、大人ゆえにズルかったり、嘘を吐いたり、逆に正直になりすぎたりして、誰も簡単に幸せになれずに藻掻きます。それでも確実に月日は流れ、それぞれが消えない思いを抱えて年を重ねていく――。そんな物語です。
感情が揺れ動く様子がとても人間くさく、読んでいて胸が痛いほどの切なさを感じました。
ラブラブ、いちゃいちゃ、といった雰囲気の作品ではありません。ずしんと響くドラマが好きな方にぜひ読んでほしい一冊です。
作者の西江さん、リブレ外で初のお目見え。
この作家さんの作品は直近2冊しか読んでないのですが、リブレにしてはかなりシリアス含みで読み応えがあったと記憶しております。
なので、違う出版社からということでとても期待しておりました♪
・・・結構痛かったです!・・・
構成が二部になっているような感じで、前半がゴミ屋敷。
そして、あ、いい風に進むのかな?と思ったら思わぬ出来事が!
そして後半の試練と、、、
登場人物たちもとてもクセのある人物が配置されています。
主人公でさえ、一見普通のように見えて、実はクセのある性格なんです。
だからこその、この物語展開。
前半のゴミ屋敷の展開から、一体どうなるの?次は?次は?ええーっ!?と夢中にさせます。
ともすれば、主人公や取り巻く人たちの気持ちが迫ってきてやりきれなくなったり、胸が詰まってきたり、かなり苦しい思いもしました(読者もw)
特殊な設定かもしれませんが、物語とはそういうもの、また事実は小説より奇なりともいいますし、決して突飛ではないかもしれない。
登場人物たちと一緒になって考えて、悩んで、
かなりユニーク(面白いではなくて)なお話は、読み応えという点では十分にあります。
幼い頃に両親を亡くし天涯孤独の身となった江田は私設育ち。
高卒後、市役所の臨時採用清掃の仕事に関わり、11年目にしてやっと正規採用で環境衛生課に配属になった市の職員です。
仕事ぶりはいたって真面目で、出来もよく、働けて満足という欲のない生き方をしている人。
そんな彼はゲイで、上司である42歳のイケメン独身課長の増岡にほのかに気持ちを寄せている。
彼がある日割り振られた仕事は、近隣住民から苦情の出ているゴミ屋敷をなんとかすること。
そこで出会ったのが、当のゴミ屋敷の住人・林でした。
金を得るために売りもしているゲイの林。
江田の苦肉策の提案ものらりくらりとかわし、全く聞き入れないまま数ヶ月。
仕事とはいえ、だんだんほうっておけなくなる江田。
そして、彼が清掃費用に自腹を切ってもなんとかすると言った日から、林の態度が変わっていくのです。
それからすっかり林になつかれて、林は江田のアパートにも出入りするようになる。
そして知った林の過去と思い。
江田は、林を「好き」というが、決して「愛している」とは言えない。
江田は「愛する」ということがわからないのです。
そうしているうちに、立ち直った林が事業を起こすために東京へ出ることになり、2人は遠距離恋愛に。
ここで、江田の職場において上司の増岡の秘密を知ってしまうのでした。
その晩、起きた事故により増岡は大怪我をし、増岡より軽傷で済んだ江田に憎しみと八つ当たりをぶつける増岡。
増岡の下僕のようになりながら、もう死ねばいいとさえ、そこまで憎むにのに、増岡に冷たくできない江田。
そうしているうちに、林と別れることになってしまうのです。
1転、2転する物語は、2冊読んでいるくらいの重厚な内容です(それだけ年月も経つのですがw)
最初のゴミ屋敷の描写は、さほど描かれてはいないとはいえ、読んでいて身体が痒くなる有様(汗)
理不尽なわがままを言い通す林に、この人の一体どこが!?と彼の変化に目が離せません。
また後半の波乱の原因となる増岡も、ある意味、このゴミ屋敷当初の林に似ています。
そう、2人は王様なんです。
江田は、下僕なのです。
その彼らと江田の違いは何かというと、言いたい事を言うのが王様。
しかもそれは欲求である。
江田は言わない。思っても口に出さず、むしろそれを感じているのかも危うい。
それが生まれと育ちに関係していることだろうとはうっすらわかるのですが・・・
一人はさみしい、それがわかるから王様は江田にとっては裸の王様でなんではないのだろうかと?
そしておなじ王様でも林と増岡は違う。
それもとても興味深いものでした。しかし共通するものは執着。
そして執着こそが愛なのだと気がつくとき、江田は変わることができるのです。
うまく伝えることができないのですが、読めばわかると、感じることができると思います。
増岡のそれからを知りたいなー。
江田と林のその後も知りたいなー。
きっと作者さんには、彼らの未来がもう一冊の本になっているんじゃないだろうか?
あらすじや題名からの想像ってほんとあてにならないと思った作品です。
あらすじを読んだところでは、コミカルっぽい印象だったのですが、内容はがっつりシリアスでした。そして、題名からもゴミ屋敷に住む林(受け)が、恋の主導権を握っていたのかと思いきや、実は江田(攻め)の方だったというのも予想外でした。
江田の目線で話は進むので、揺れる心情は分かるのですが、林を思うと切なかったです。みんな悪い人じゃないのに、思い通りにならないというのが。別れから動けなかった江田に対して、手紙というアクションを起こし、誠実に三年も待っていた林は、江田よりもずっと格好良かったです。
私はまるで何かのドラマのようだなぁと感じた作品でした。麻生ミツ晃さまのイラストがぴったりの内容でした。
内容が悪い訳でもないけれど、後半になるとだんだんイライラしてしまう。
市の環境衛生課職員の攻め様と、エリートリーマンから一気に挫折してゴミ屋敷の
主にまで落ちぶれてしまった受け様との一筋縄でいかない恋模様。
後に問題になるのがゴミ屋敷の受け様よりも真面目だけど恋愛不感症みたいな攻め様が
後半になるとイライラしちゃうのです。
両親を事故で亡くし天涯孤独で施設育ち、そして育ててくれた寮母さんの教えもあり
多くを望まない身の丈にあった暮らしをするような攻め様なのですが無いものねだりを
しないと言うか、自己評価が低いと言うか、一見するといい人なんですが、
人を愛するとか、愛情を与える、与えられる事にかなり淡泊で、でもそれは育った
背景がそうさせるのかと思わせる内容なのですが、それでもすんなり納得出来ない。
最終的には受け様の王様気質に見合わない一途な思いと行為に救われてハッピーになる
そんな展開のラブストーリーなのですが、やはり個人的には趣味じゃないと思う作品。