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バーのオーナー・睦月は、恋愛などする気もなく日々を過ごしていた。だが、探偵である杉崎の存在が気になり――!?
30歳と35歳という年齢設定、攻めは同僚にして親友でもあった人を、受け(と言っていいのか)は叔父でありながら最愛の恋人でもあった人を亡くしたという共通の悲しみを知る者同士とあってか、終始落ち着いた雰囲気の物語でした。2人の視点が切り替わりつつお話が進みますが、境目が判りやすいので混乱することはありません。
亡き恋人の跡を継いでバーを経営する天海、そこをたびたび訪れる探偵・杉崎。天海に惹かれる杉崎はある日「抱きたい」とアプローチするものの、愛した人をまだ忘れられずにいる上に、「抱かれたくない」天海はやんわりと拒み、以後、微妙な均衡が保たれたままお話が続いていきます。ほぼ最後までこれは崩れません。何となく天海がもっと早くに陥落するかと思っていたので、驚くとともに新鮮な気持ちで読みました。
幾つかの出来事を経て、天海は杉崎に惹かれているという気持ちを自覚するようにはなったものの、では彼を抱きたいのかというとそういう衝動は湧いてこない、かと言って抱かれたくはない、でも彼と過ごす時間や何気ない触れ合いはとても心地よいと思える、自分はどうしたいのだろう―そんな風に悩むのです。迷える日々の中、恋人の墓参に出かけた天海が海の見える眺めの良い場所に眠る彼に向かって杉崎とのことやうまく掴めない自分の気持ちを聴いてもらうシーンがあるのですが、優しく語りかけるその様子からは生前の恋人との仲睦まじさが伝わってきて、とても素敵なふたりだったんだろうなと、物語とはいえ死によって引き裂かれてしまったことが悲しく、残念に思われるほどでした。余談ですがこのお墓参りのシーン、自分はとても好きです。
杉崎は5つも年下ということもあってか天海より無邪気と言うか、marunさんの言われるようにやんちゃな感じの人ですが、「抱かせて」と迫るわりにはうるさいとか強引とかというのともちょっと違っています。自分も悲しい経験をしているからか、亡き人に想いを残す天海を理解し、また、堪えきれず彼を押し倒してしまっても、天海が「抱かれたくない」と拒めばその気持ちを尊重し、最後の一線は超えずに踏みとどまる。なかなか包容力のある人のように映ります。「尊重」はもちろん率先してではなく幾分不承不承ではあるかもしれないですが、相手の気持ちを踏みにじらず、心と身体を開いてくれるのを待つ姿は好感が持てます。
探偵である杉崎の仕事を絡めつつ、彼と過ごし、彼を知っていく日々の中で少しずつ(抱かれてもいいか…?)と心が開いていく天海の心情を一緒になって追っていく、そんな物語です。特に何か大きな出来事が起こるわけではなく、エロスを感じさせるシーンも多くはないですが、そういったBLとしての華やかさを敷き詰めなくても、十分良い物語になっていると思います。ただ、ラスト、覚悟を決めた天海は杉崎と最後まで結ばれるのですが、杉崎を愛おしく想い、そんなに自分を抱きたいのなら応えてあげたいと思ってはいても、行為そのものは辛そうな様子がちょっと可哀想だったかな。納得して抱かれはしても、まだ吹っ切れた感じはしない天海なので、これからどうなるのかなというのが気になるなぁと思っていたら、その気持ちを読んだかのようにあとがきに作者さんがこのふたりいつか逆になりそうみたいなことを書かれており、何やらますます気になってしまいました。逆になってもならなくても、もう少し先を読んでみたいです。
「探偵は止まり木で眠る」、このタイトルもとてもいい。バーカウンターの背の高い椅子のことを止まり木というなんて恥ずかしながら初めて知りました。誰が言い出したのか知りませんが、とても粋な名づけですね。物語中、ふたりの物理的・心情的立ち位置がしばしばこの止まり木を絡めて描写されており、巧いアイテム遣いが印象に残ります。また、杉崎を優しく包む天海という感じがして、穏やかな気質の天海とそれにちょっと甘える杉崎、そんなふたりのイメージともとても良く似合っている良いタイトルだなぁと思いました。
最愛の人を亡くして、恋愛に消極的なバーのオーナーと元刑事で探偵の攻め様との
大人のラブストーリー・・・って、年齢は大人だけど攻め様はちょっとやんちゃで
結構熱い人だったりしますね。
そして、1番は二人ともタチなんですよね。
バーのマスターは最愛の恋人の年上の叔父が亡くなってからもう、恋愛はしないと
思っていた人で、初恋で最初で最後の相手と思う程叔父が好きだったんです。
そして、出版社を辞めて、叔父が経営していたバーを引き継ぐ形でマスターに
なっているのですが、そこへ叔父が亡くなった後から常連になっていた攻め様に
ある日抱きたいと迫られるんです。
でも、受け様は、抱いた事はあっても抱かれたことがないので、断るのですが
攻め様は全然諦める気配がないんですよね。
でも、毎回迫られているうちに、攻め様が気になる存在で、嫌いではないと気が付く
でも、抱きたいとも抱かれたいとも思わないことで、その自分の気持ちが何なのか
解らない受け様なんです。
そして攻め様がたまに見せる陰りのある様子も気にかかる受け様なのです。
1度も抱かれる側になったことが無くて、抱かれると言う事を考えられない
受け様の戸惑いと、でも攻め様に次第に惹かれる自分の思いで揺れる事になります。
受け様の過去ごと抱きしめて受け止めてくれるような攻め様に惹かれていく
タチがネコになってもいいと思えるほどの恋になるのかが読みどころの作品です。
全体感としては、不思議な話だし、含みもたっぷりあって面白い。
小山田あみ先生のイラストレーションも上品なセピア色基調でいい。
ゆえに、ディテールが気になるんですよー!!!!
亡くなった天海の恋人で叔父(しかも年上受けだし)、
8席しかない店で天海がどう生計立てているのか、
天海が「見た目も攻め」って、一体どういうところが?
雰囲気で惹かれて「抱きたい」と思うのは十分ありだけれども、
そう思わせる「何か」がどうも説得力に欠けるんで、モヤモヤするわけですよ。
悪くはないが、コレ単体ではどうか…?っていうところですね。
これ、続編アリですか?
某ハードボイルド小説を思わせるタイトルと、小山田あみ先生のイラストに惹かれて読んでみました。
恋人を亡くし、想いを断ち切れずにいるバーテンダーの天海と、そんな彼を熱心に口説いてくる杉崎。
読んでる側としては、つき合ってみてもいいんじゃないの?と思うのですが、実は元恋人との関係で、天海は攻め。でも杉崎も、自分を「抱きたい」と言ってくる……。つまり攻め✕攻めのお話。
結論から言うと、こういうの駄目でした。
情熱はわからなくもないのだけど、好きな人が嫌がってるのに、それを強要しようとするっていうのが、まず無理。
そんなに嫌なら、俺が受けてみてもいいよ!って言える男なら、私も天海もクラっと来たかもしれない。
でも、そんな態度もいちどもなく、ずーっと抱かれろって押してくる杉崎。
いやー、正直、こういう人は苦手。
読者としては、いやもう、リバでいいんじゃないの、って思ってくる。
男と男なんだし、セックスしなくていいじゃん、兜合わせとかフェラでいいじゃん、って思う。
ていうかそんなに好きなら、好きな人のために、自分が変わろうって思えないのかな、と。つきあえるかどうかより、どっちのポジションを取るかって方が大事なの? それって愛なの?って思っちゃう。
天海も天海で、恋人とのことがあるとは言え、抱かれるのは嫌、杉崎を抱きたいとも思えない…ってずっと言ってる。
だから、どのタイミングで杉崎を「受け入れてもいい」と思ったのかが謎。いや、彼としてはきっかけがあったのかもしれないけど、なんか、こっちには伝わらなかった。
こういうカップルってどっちかが我慢してる訳だから、長続きしないんだろうなって思っちゃうんだよなあ。
せめて平等に、「昨日は抱かせてもらったから、今日は俺が抱かれるよ」みたいな関係性だったらまだよかったのに。
あと、文章がサラッとしてるからなのかな?
天海の元恋人が叔父(年上受け)、というところが唯一の萌えどころになりそうではあったのに、思い出のシーンもなく、地の文でサラーッと流れされてて、深い悲しみとか喪失感とかがあまり伝わってこなかったのも残念。
途中に探偵のお仕事もちゃんとしてますよ、という感じで家出少年をめぐるエピソードもあるのだけど、それも特にふたりの関係に変化を及ぼすわけでもなく、なんかお話としても中途半端でした。