綾子
一難去ってまた一難。海斗は本当に苦労が絶えませんね。やっとスペインから帰ってこられたと思ったら、当時は不治の病だと言われていた肺病(結核)にかかってしまって・・・。
海斗はジェフリーたちに心配させまいとただの風邪だと言ってごまかしますが、そんなものはいつまでも通用しません。案の定、ジェフリーの前で喀血してしまいバレてしまいます。
苦しむ海斗と、そんな海斗を見ているしか出来ないジェフリーやナイジェル。そんなキャラたちを実力派キャストの皆さんが熱演されています。
ラストはまさか和哉がここへ・・・!?相変わらず引きのうまいシリーズです。
前巻で、とうとう海斗(福山潤さん)はジェフリー(諏訪部順一さん)らと共にスペインから脱出出来ました。
が、海斗の病状は悪化の一途をたどります。
この巻はめちゃくちゃ切ないので、聴くのには勢いが必要でした。
ただこの巻でのモノローグはジェフリー多めなので嬉しい…というか、嬉しいのはそれだけなの(涙
海斗は、プリマスへ戻ったらジェフリーへ結核のことを話そうと決意していました。
ただプリマスまでの船旅でジェフリーにうつさないために、一定の距離を保とうとしています。
一緒にいたくてもいられない、結核のことを話したらどんなことになるのかが恐ろしい。
そんな海斗の心の揺らぎが悲しいです。
ジェフリーもジェフリーで海斗が何か隠していることを察していますが、心の中では複雑ながらも海斗から話してくれるまで待つと決めています。
ああ…男前……
エリザベス女王の秘書長官ウォルシンガムは、相も変わらず海斗やジェフリーをどうにか罪へ落とせないかと画策しております。
またしてもこの男が二人の前に立ち塞がります。
憎い、憎いぞ!おっさん!
ジェフリーファンには今後もっともっと憎らしくなるのですが、この段階でも充分ウザ憎い。
そのウォルシンガムから逃れるため、キット(三木眞一郎さん)と海斗はボートへ移り別行動しながらプリマスのジェフリー宅へ目指します。
ジェフリーは新居を、長い人生海斗と二人で過ごすために作り、海斗はそれを喜びながらも自分が死んだ後のジェフリーを危惧するのです。
トラウマによって一人では眠れないジェフリー。
俺がいなくなったらどうするんだろうと。
そんな時とうとう海斗は血を吐き、ジェフリーに病状が知られてしまいます。
ジェフリーは気づかなかった自分を責め、ナイジェルは腫れ物に触るように扱い、同じくタイムスリップしてきたリリー(浅川悠さん)は懸命に看病します。
そんな海斗へ、リリーは21世紀へ戻れば治癒出来るかもしれないと諭すのですが…
ここでちょこっと和哉が出てくるのですが、キモいのです。
もう、病的で怖いのですよー(涙
先の巻になるとガンガン出てくるようになるのですが、もう今から聴くのが嫌なんですよね。
今回二枚目でスペイン側のお話が突然挿入されて『ビクッ』と致すのですが、そこでフェリペ二世(中田譲治さん)に『海斗が好きだったのに残念だよね〜』的なことを言われ『知られていた?!』とビセンテ(大川透さん)驚愕!なのですが…
気づいていないと思ってるのはあなただけなのよー(苦笑
やー、ビセンテってば天然さんなんだわあ。
真面目過ぎます。
大川さんのモノローグが、もう堅物を如実に表していて素晴らしいとも。
実は今まで大川さんだと固すぎない?と思っていたのですが、間違いでした。ピッタリです。
ようやくイングランドへと帰ってくることができたカイト(福山さん)と、帰還を心から喜ぶジェフリー(諏訪部さん)とナイジェル(小西さん)、そして海の兄弟たち。
そうして喜びに沸いたのもつかの間、カイトの結核は進行し、ジェフリーたちには風邪とごまかしますが……。
嬉しいはずの展開なのに、ずっとストーリーは重苦しくしんどいです。
ビセンテをはじめとするスペインロス状態にもなっていて、もうちょっとスペイン編引っ張ってくれてもよかったのに、と。
で、今回は福山さんがマスクをして演技してらっしゃるのか、ずっとくぐもった感じのお声に、激しい咳や喘鳴など、本当に重病じゃないかと思うほどの迫真の演技で驚きます。
収録が終わった後は、過呼吸でも起こしてるんじゃないかというくらい、色々と激しかった。
発病した時からこの段階まで、徐々に弱っていって儚げになっていくんですが、聴いてるこちらが気づかないようにゆっくりゆっくり弱っていくのが凄いです。
カイトを取戻し、新居でようやく素敵な生活が送れると思っていたジェフリーが、必要以上にカイトに避けられ不安になり、嫉妬し、挙げ句、強引にせまった末に喀血された時には、それはもうショックだっただろうな、と。
諏訪部さんの衝撃とショックの度合いが、その声からよく伝わってきます。
秘密を共有するリリーを主治医にとカイトが頼み、思うところはあるものの、カイトの願いを聞くジェフリーですが、ふたりが自分に何かを隠していると敏感に察するジェフリーが何だかせつないです。
カイトが風邪などではなく結核だと知らされたジェフリーの、不安な気持ちや心の揺れなど、諏訪部さんのお声が本当にカイトが心配で仕方がないのというのがにじみ出ていて、痛々しい。いつもが自信たっぷりなキャラだけに、心細げなのは辛いですね。
そしてナイジェルの取り乱し方も、辛いなんてもんじゃないレベル。
本当に、辛い辛いの連続なのですが、そんな中で和哉(岸尾さん)がトンネルを通ってこちらの世界にやってきた夢を見るカイト。
病に侵されながらも必死で和哉を助けようと、力を振り絞ってホーの丘を探し回る姿に胸が詰まる……。
リリーも何とか機転を利かせて秘密を守ろうとするのですが、そのあたりの微妙な演技をリリー役の方が巧みに演じていらっしゃり、最初に感じていた声優さんへの違和感は完全にどこかへ吹っ飛んでしまいました。
和哉のヤンデレっぷりも益々冴えてきて、次が楽しみで仕方がない。
黄昏(朝焼け?)の中で、今にも消えてしまいそうなカイトを、必死に繋ぎ止めようとするかのように抱きしめるジェフリー、という感じの儚げな表紙ジャケットも美しくて溜息が出ます。
中身からジャケットに至るまで、全てにおいて完成度が高い作品。