ブロンズ像の恋人

ブロンズ像の恋人
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神4
  • 萌×21
  • 萌3
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
5
得点
34
評価数
11
平均
3.4 / 5
神率
36.4%
著者
剛しいら 

作家さんの新作発表
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イラスト
兼守美行 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
価格
¥533(税抜)  
ISBN
9784199006371

あらすじ

生身の恋人なんていらない。美しいブロンズ像があればいい――。他人を避け孤独に生きる真砂(まさご)は、ある日、一回り年下の青年・良平(りょうへい)と出会う。逞しい上半身、日本人離れした長い手足…。理想的な肉体に心を奪われた真砂は、良平をモデルに彫像を作り始める。体温のない美しい恋人との蜜月――。けれど、快活でエネルギッシュな本物の良平が真砂に近づき、次第に二人きりの生活を侵し始めて!?

(出版社より)

表題作ブロンズ像の恋人

大学休学中のバイト
芸大出のマネキン会社製作主任・32歳

その他の収録作品

  • ピグマリオンの恋人
  • あとがき

レビュー投稿数5

妄想が暴走!

総合的に神評価です。
ピュグマリオンの神話を題材に取った小説、映画などはありがちなので、
最初はフームフム…と読んでいたんですが、意外な変化球が!
本作の読みどころはマネキン製作者の真砂の心の闇と、
生の良平の暴走っぷりです。

ありがちなピュグマリオンをモチーフにした作品てのは
「理想の人形」を作ろうとして結果的に成功以上の効果をもたらしてしまうものが多い。
ですが、本作はそもそも「作り手」である真砂が異様にネガティブ思考であり、
作った塑像に話しかけてかえってくる言葉がことごとく最悪な点、
そして、作られる側のモデル、良平がいったんは真砂と結ばれる…まではいいんですが
そこから真砂を変えていき、さらに真砂がもてあまし気味にすら見える点ですねw

いったいどちらがピュグマリオンなのかわからないカオス。
ミイラ取りがミイラになるような状態に読んでいてハラハラします。
最初の3ページ読んで展開がわかってしまうような作品も多い中、
本作、なかなかやってくれますw

ついでにイラストレーションも真砂の病的な気怠さ、
対照的な良平の一見すると爽やかな雰囲気で
読者だましに一役買っている良作でした!

3

ピュグマリオンを題材にして人生を描いていると思うのです

電子書籍で読了。挿絵あり。あとがきあり。

「あ、これ読んでない」と購入したら読む前に剛しいらさんの訃報が届き……
そういう事情がなくとも、私にとってはかなり読み応えのある一冊でした。

主人公の真砂は美大卒業後、彫刻家としてだけでは生活できず、マネキン制作会社でマネキンのモデル(型番って言うのかな)を作る仕事をしています。真砂を支配し、まるで自分の美術作品の様に作り上げた母が亡くなってからは、家でも会社でも人と話す機会も少なく、また、人と交わることを避けて、ただ美しい人体を作る事だけに人生を費やしています。ある日真砂は、会社で運送担当のバイトである良平を目にします。良平は真砂の理想の男性美を持つ身体を持っていました。明るく、会社のフットサルクラブで活躍する良平は同僚にも可愛がられており、自分との接点はないと思いながらも、その美しさに魅せられ、真砂は自宅アトリエでひっそりと良平の彫像を作ろうとします。そこに良平の姿をした幻想が現れ「一人が寂しくないのか」と話しかけてきます。真砂はその幻想の良平と対話しながら制作を続けるのですが、現実の世界でもフットサルの試合の応援をきっかけに良平が話しかけてくる様になり、惹かれていきます。しかし人との交わりを避けてきた真砂は実生活で良平と関わるのではなく『関心があるのは美しい肉体だけ』と自分に言い聞かせ、良平の像を作ることに熱中していきます。アトリエに入る度に現れる幻想の良平に煽られて、像はどんどんエロティックなものになっていく中、良平から「自分はゲイで真砂に憧れている」と告白されてしまうのですが……

BLには、失うのが怖いから最初から手を伸ばさない人達が結構沢山出てきますが、真砂もその一人。お話だけを追っていくと真砂の幻視・幻聴がとんでもなく激しいのでちょっと心配になってしまうのですが、その辺にこだわるとこのお話の面白さを味わえないかもしれないと思ったりしました。あの幻想は、真砂の内面なんだと思うのですよ。だから良平と想いが通じた後は猫の形を借りて現れ、真砂が見ようとしない問題を突きつけてくる。

自立出来ないまま母の言う通りに生きてきた真砂がその支配から解き放たれるお話としても、外見に惹かれて好きになった人の中身が全て自分の理想と違った時にどうするかというお話としても、全く異なった二人が一緒に成長し合うお話としても読める、色々な顔を持った物語だと思いました。

『幻想=自分』とだけの会話で結論を出すのではなく、自分の思ったことをパートナーと伝え合おうとした結果、もう幻想が現れなくなるというラストに大変納得したのと同時に、まだまだ不穏な雰囲気を残したままで終わることに「そうだよね。リアル人生に大団円はなくていつも心配で不安なものだもんね。本当に剛さんは人生を描くことの妙手だったのだなぁ」といたく感心した次第です。
もう新作は読めないのか……

2

妄想を侵食する現実の肉体

かなり奇妙な読後感。
で、そこが面白い。

主人公は、彫刻家を目指したがそれは叶わず、マネキン製造会社でマネキンの原型を作る仕事に就いている真砂(まさご)。
彼は芸術家肌というのか、精神が繊細に過ぎるのか、幻覚や幻聴を見るのです。
それらに悩まされるのではなく、幻聴と対話しながら、幻影と戯れながら、創作に没頭する真砂。
母ひとり子一人で母のペットのように育てられ人付き合いが苦手な真砂。今は完全に独りで幻影と話している様子は、もしかしたら軽く精神疾患が発症してるのかも…?という空気。
そんな中、理想の肉体美プラス素直な性格の青年・良平が現れる…
真砂は良平の肉体を想像しながら彫像をつくる。そこに現れる良平の幻影は、現実の良平とは異なり真砂の不安や欲望を煽ってきます。
現実の良平と話をするようになってもそれは続き、読者も良平は本当に明るくて素直な青年なのか、それとも真砂の家に入り込もうとして策略を練っているのか、混乱を感じます。
その混乱、良平が怪しい人物のように見えてくる不穏さなどが漂う作風は、剛しいらさんならでは。
エロも描写は少なくて、どちらかというと心理サスペンス的な作品だと思いました。
心を閉ざして幻影を見るような、創作に取り憑かれて食事も摂らなくなる生活力も弱い真砂が、「良平」という現実を得て本物の生活を送るようになる…
ラストは意外なほど前向きで、本当に良平は素直だったし誠実だったし、真砂を真っ当に愛していたし。
古い家をリフォームし、配管もきちんと直し、風を入れ冷蔵庫もいっぱいにして暮らしを変えていく2人。真砂も囚われていた過去の自分から変わっていく。目の端に映る最後の幻影、色のない猫が目の前で消えるように。

2

ある意味変人なんでしょうね

読み始めて思ったことは受け様の異常性かなぁ~
狂気の世界とまではいかないけれど
このまま行ったら確実に人格崩壊しちゃう手前って印象。
神話の世界になぞらえているけど本来なら
かなり怖いストーリーなんですよね。
統合失調症のお話なんじゃ?って思ってしまいました。
でも、芸術家だからね。
よく、創作の神様がなんて事聞くからその
流れで行くと、あるんだろうなって思う。

理想の肉体美に出会い、創造の世界にのめり込んで、
自分の創り出す粘土像と会話しながら創作する。
次第にのめり込み過ぎて現実と創作の世界が曖昧に。
そこへ、理想の肉体を持った現実の攻め様と
話をするようになり、次第に親しくなって行く。

自分自身を母親の創り出した紛い物のように思っている
受け様は、対人関係も苦手、でも攻め様と親しくなるうちに
自分自身も変わってきますが、それ自体に怯えるように
現実で無い創作物の声も消えることが無く続いてる。

感覚が人間離れしている受け様が年下の攻め様との
暮らしで初めて人間らしくなっていく。
そんな様子が丁寧に描かれている作品でした。
年下の攻め様は、かなりワガママでこのキャラに
ちょっとだけイラつきます(笑)
肉体関係が出来る前と後でガラリ変わるんですもん!
でも、受け様敵にはこのくらいの方が良いのかも。
淡々と心理描写が続くお話です。

2

まさにピグマリオンでした

まさにピグマリオンといった主人公。
理想の生きている肉体を見つけ、彼を写し取るうちに、彫刻だけに存在していた恋人が本物の生きた人間になる。
ちょっと珍しい変わった性格の主人公であった為、なかなかに面白い作品でした。
何て評したらいいのかよくわからなくて、上手く伝えられないので盛大なネタバレしてますのでごめんなさい!

美大を出て有名ではないけど、小さい賞をいくつか取るもそれでは生活していけずに、マネキン会社の製作部に所属する主人公・真砂。
彼が彫刻に理想の肉体を持つ、バイトの良平に出会った事で彼の彫像を作り始める。
会社のフットサルチームのマスコットを作る相談で良平が真砂の家を訪れたのがきっかけで、モデルとして真砂の家に通ううちに真砂に変化がうまれるのだった。

真砂は、母の残した洋館で変化も求めずまるで内にこもるように生活している描写が、何故か病的な雰囲気を漂わせます。
彼が彫像と会話して、自らの世界にひきこもっている姿は、外界を閉ざした自分だけの世界でした。
そこの中で彫像に欲望を抱く真砂・・・でも変態ではないです。
生粋の芸術家肌なイメージかな?
良平は、実は自分がゲイであることに気が付いているんだけど、隠した生活をしていてそれが鬱積している。
表面は明るい性格なのに、かれもまた悩みがあるんですね。
それが、真砂のモデルをしていく中で拒否をされなかったことで、一種の刷り込みのように真砂に傾くのは、ちょっと恋とは違うような。。。
最初のエチも早急だし、真砂に対して「教えて」という言葉を盛んに発言している。
真砂は決してゲイではないけど(バイ)自分を唯一、初めて認めてくれた人ということでの執着のように見えました。

『ピグマリオンの恋人』で、一人で住むには広すぎる家、良平が家事ができること、そんなで同居を始める二人のその家は、今までの荒れるにまかせた家から、リフォームして人が住んでる家になっていくようです。
これは真砂の大きな変化だと思います。
良平によって、外界へ目が向く。それは製作部にもう一人入ってくるのだが、彼に相談したり、人づきあいが出来てうっとうしく思わない部分に、
そして、人型のマネキン以外のペットのマネキンを作るという、新しい分野に挑戦することが如実に表わしていました。
そこで生まれる、良平の嫉妬。
良平に気があるらしい、英語を教えているという外人への真砂の危惧感。
良平と音信普通になった時の焦燥と大変な心配。
物語の表題の部分と比べ、真砂の人間らしさがよく見られました。
とはいっても、まだ人間でないものとの会話(多分内省だとは思いますが)は続いていましたが。

良平についても、初めての人。
真砂についても、初めての人。
よくある普通の恋人のような、相手が好きで好きで話したくなくて、という熱い恋愛はなくて、まだまだ彼等が外の世界に足を踏み出した一歩という展開なので、完全に恋人ではないと思われるこの話は、実に一風変わっていて面白かったです。
真砂の性格のカラーが話のカラーを決めてますよねv

剛さんの人形モノ大好きなんですが、これも自分の人形モノに入れようかな?と思いますww

1

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