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開港前、開港後の横浜を舞台に、隠された前世の因縁が花開く!
toki meikyuu
明治30年代の横浜を舞台にしたミステリ小説「ヨコハマ居留地五十八番地」シリーズ第1巻。
年齢不詳、経歴不明の妖艶な美青年・深川芭介は西洋骨董店「時韻堂」の若き店主。商才に優れ、政財界の大物からの信頼も厚い青年です。骨董品の鑑定も得意で、知人のカンカン虫・貫太郎が持ち込む品々の鑑定も請け負っていました。カンカン虫とは船舶やボイラーにへばりついて、ハンマーでたたいて、さび落としをする作業員のこと。豊かな暮らしぶりではないカンカン虫が骨董品を容易に手に入れられるはずがない。芭介は出所不明の骨董品に疑惑を抱いていました。貫太郎に忠告しますが、聞き入れようとしない。そして恐れていた事態が。貫太郎が何者かに殺害されてしまいます。
その折、芭介は遥々欧羅巴から日本を訪れた青年貴族と知り合います。彼は亡き父が数十年前日本で失くした物を探していました。青年貴族を助けるため芭介は飲み友達の横浜港税関職員・高澤輝之丞と共に数十年前の落し物を探すことに。その落し物は貫太郎殺人事件の真相を解く鍵であると、その時の芭介は未だ知りませんでした…。
全3巻のシリーズ中、最もミステリ色が強い1巻。
物語の前半はゆったりとした進行で余計な描写が長くなかなか事件や謎解きに展開しません。そのため終盤では駆け足となり、無理やり収束させた印象。しかしばたばたと急ぎ足ではありますが、ミステリ的には消化不良ではありませんでした。ホワイトハートならこのくらいの難易度・分量で充分でしょう。
欠点としてはやや明治の時代背景の書き込みが足りなかった点。登場人物の言動にもあまり明治らしさが感じられませんでした。特に登場する女学生たちが明治時代の女の子っぽくありませんでした。お嬢様言葉を使い、華族や成金の地位を鼻にかけて傲慢であるというステレオタイプな描き方をされているのですが、とにかく性格が悪い。女性向けの作品で女性キャラが悪く描かれるってどうなんでしょう?
ちなみに男性陣はほのかに匂っています(2巻以降さらに匂い度は上がります)。
著者は横浜市出身・在住。その地の住人だからこそ描ける横浜独特の情緒や魅力が作中から感じられました。ちなみにちるちるには表紙がイラスト版の本が掲載されていますが、当初発売された本は明治時代の錦絵が表紙を飾っていました。文庫リニューアルに伴ってイラストが付随したようですが、錦絵版も味があります。